僕の住む町にも銀座通りがあった。
今も通りだけは、そのまま残っている。
僕が生まれ育った町、25才で結婚してその町を出た。
30年前にこの町に戻ってきた。
銀座通り商店街のその通りはそのままのままあるけれど、
それに、通りの入り口には銀座通り商店街の名称の看板もそのままにあるのだけれど、
昔の面影はまったくなく、買物客の賑わいなどゼロである。
突然にして、こうなったわけではないのだが、
40年ほど前から現在に至るまで風景は、日々少しづつ変わっていった。
幼かった僕は、夕方近くに銀座通りに買物に行く母によくついて行った。
小学校上級生になった頃には、文房具屋に紙飛行機の工作セットを買いに行ったりしてた。
駅前通りから脇に入る「銀座通り」の入り口から、国道14号(今は旧道となっている)につながる出口まで、普通に歩けば5分くらいの距離かな・・
入口から出口までの記憶を辿ってみよう。
子どもの頃は、道の幅が狭いことなど何も思わなかったけれど。
実際は、5メートルくらいしかない通り、
夕方はいつも、人で大いに賑わい、店はどこも繁盛していた。
入口すぐの左にはたぶん江戸時代から代々続く接骨院があった。
右側には八百屋で、僕の中学の同級生の親戚だった。
その隣は豆腐屋で豆腐やがんもどきは皆ここで買っていた。
少し進むと左は味噌醤油その他乾物を売っている店、
茶色いハエ取り紙が天井から何本も下がっていた。
右側は上で書いた文房具店、ここには文房具の他にプラモデルセットを売っていて、僕は100円の城シリーズ、軍艦シリーズを何回も買って作ったよ。
進む・・・左は米屋で玄米を白米にする精米機があった。
実家では、ここから日常の米、正月には餅を運んでもらってた。
右側は、間口の広い八百屋で僕の妹の同級生の家だった。
実家の野菜はここで買っていた。
進む・・・左側は店先の幅が半間(90㎝)くらいの天ぷら惣菜屋、おばさんが黙々と天ぷらを揚げていた。
おばさんの両手は油の飛び跳ねによるヤケドなのか、それとも油の飛び跳ね防御のためか分からないけど、いつもあまり白くはない包帯をしていた。
右側は何だったんだろう・・・思い出せない。
進む・・・左側には大きな金物屋、ここで実家の郵便ポストを買ったのを覚えている。
金属と名のつく物はすべてここで揃った。
隣は昔からある歯科医院だった。
その隣は家具屋、そして布団屋、そして下駄屋と呼んでた靴と下駄と傘を売っている店だ。
右側は、今で言えば小型スーパーかな・・隣は靴屋、その隣は腹すかしの高校生で賑わうニンニクたっぷりのタンメン専門の店、おばさんが一人でやっていた。
おばさんが年とってやめたあとは、酒の販売がメインの米屋ができた。
その隣はクリーニング店。
進む・・・左には手芸店、隣はトコヤ、そして和菓子店があった。
右側にあったのは、代々続いていた飲食店で、ご飯ものから麺類、また甘味もの、夏にはかき氷をやっていた。
ごくたまに、母とここで食べた。
何を食べたんだったかなあ、きつねうどんだったかなあ。
夏は氷イチゴを食べた。
隣には染物屋があった。
その隣は本屋で、先日書いたスパイダースなどのソノシートを売っていた。
その後は、ジーパン屋に変り大石貿易製造のビッグストーン・ジーンズを専門に売っていた。
高校生になっていた僕はここで数本のジーパンを買った。
「大石」貿易のビッグストーンだよ、楽しいね
隣は小さなラーメン屋だった。
進む・・・左側は何があったんだろう、思い出せないけれど、レンガ塀が国道まで続いていたと思う。右側には燃料屋があって、炭、練炭、灯油、プロパンガスを売っていた。
本当は、もっとたくさん店はあったけれど、もう思い出せない。
現在の銀座通りは昼間でも人通りがほとんどない。
入口近くにあった接骨院は、関係のない大きなクリニックとなり、八百屋、豆腐屋、文房具店は2階建ての広いアパートへ、
食料品店は残っているけど、もう商売はしていなさそう。
歯科医院は、奥にある建物もそのまま、昔からの木の看板もそのままだけど朽ちてきている。人が済んでいるのかどうか分からない。
手芸店は今もある。途中から開業したラーメン店は繁盛して生き残っている。
その他は・・・建物は残っていてもシャッターが下りている。
これら以外は、ほぼすべての敷地は単身者用の賃貸マンションとなっている。
単身者用のマンションだらけ・・・
結婚しない人が増えているから、入居者は埋まるのかなあ?
ここまでくるのに、途中いくつかの店が新たに開業したけれど、上のラーメン店を除き、どこも半年から数年で撤退、或いは後継がいないなどで廃業している。
40年くらい前までは銀座通りとして賑わっていた通りは、今や人通りのない単身者用賃貸マンションだらけの通りへと変身した。
昔の賑わいや、母との思いでは、僕の脳内の抽斗にあるだけだ。
「レトロ工作準備室ココログ」さんからお借りしました。