窪美澄の『よるのふくらみ』を2日で読み終えた。
前に『アカガミ』を読んだときは、言いたいことは分かるのだけど、
あくまでも僕の受け取りだけど、
状況設定が甘過ぎることが鼻について好きな小説の部類には入れられなかった。
ブロ友さんがコメントをくれ、
この作家は一作ごとに雰囲気ががらりと変わるという特徴があること、
そして、この『よるのふくらみ』は、この作家の出世作であることを教えていただいた。
文体も内容のイメージも、前に読んだ『アカガミ』とはまったく異なっていた。
『よるのふくらみ』・・・とても面白く僕の好みとしてはベスト群に入るものだった。
男女関係・家族関係に係わる小説に興味ある人なら、たぶん誰もが高評価を下すのではないかと思った。
小説新潮で、およそ3年半の間に書かれた六つの短編(中編かな)小説なのだが、
その六つの小説が時代順に連なって一つの長編小説になっている。
同じ商店街で小学校からの同期生の男女、その兄弟、その家庭、
大人になってからの関係、
そこへ係わってくる仕事先での人とのつながり、
友情、恋愛、兄弟間の葛藤、恋愛相手との心の葛藤、寂しさ、虚しさ・・・
そして男と女はどうつながっていくか、男と女はどういう形で別れていくのか、
新たな出会いはどんな形でやってくるのか、古い出会いはどんな形で結着をつけるのか、
それらの文章に惹き込まれて読みふけった。
僕は、最後の章に出てくる「京子」が一番好きかな・・・
昔、大好きな曲に出会い、もっとこの人の曲を聴きたいと思いLP(10曲くらい入っているレコード)を買ってみる。
残念なことに、大好きなのはその曲だけで、他のはあまーりって感じのことがよくあった。
これと同じで、窪美澄も他の小説はどうかは分からないけれど、
この『よるのふくらみ』は、とてもいい小説だった。