有名ピアニストになることをすべての前提、すべての言訳に使っていたウルコは、
一流音楽大学に入学するところまでは予定が実現した。
だが、しかし、合格したのはピアノ専攻科ではなく、教育専攻科だった。
教育専攻科から、有名ピアニストになった卒業生はいない。
多くが、中学高校の音楽教師になるか、フリーで、小さなコンサートに出たりしていた。
いつも、ウルコの陰にいたヨイコは、ピアノ専攻科に合格、
もう一人、ウルコがライバル視していた同学年の子も合格した。
ウルコは、気持ちの上では、ヨイコと立場が逆転してしまった。
その音楽大学のピアノ専攻科からは、有名なピアニストが何人も輩出されていたが、
教育専攻科からは、一人も出ていなかった。
この時点で、ウルコは自分の限界と、敗けを感じはしたが、
持ち前の自尊心と負けず嫌い精神で逆転勝利を自分に課したのだった。
これからの前提と言訳は、これまでと変わるところはない。
ただし、勝つために一流教授の個人指導を徹底的に受けることを加えた。
もともと音楽教師になる気など、もとよりないウルコの教育課程の成績は最低レベルだった。
しかし、楽器過程では、さすがにトップクラスを維持し続けた。