短縮アンテナは「50%迄の短縮ならフルサイズと比べてもそれほど性能は落ちない」って聞いたことがあります。

アンテナを張るスペースが狭いので我が家の7MHzの逆Vダイポールアンテナは給電点にコイル1個のボトムローディングの50%短縮にしました。
このコイル1個タイプの短縮アンテナは製作が楽でトップローディングタイプと比べて低SWR幅が比較的広く良いのですがアンテナのゲインは少し低めです。
アンテナを短縮すると給電電力の何パーセント有効利用できているのか効率計算してみます。
言い換えればフルサイズダイポールアンテナと比べてどの程度電波を送信できるのかです。

短縮アンテナの場合、給電した電力の一部が短縮コイルで熱になり、効率を悪化させます。
電波(高周波)は金属表面のみに流れる為、どんなに太い電線を使って作ったコイルでも表皮抵抗で発熱します。
直流で測った抵抗値では無く高周波による表皮抵抗です。
コイル容量が大きい高短縮アンテナになるほどコイルが長くなり多く発熱して効率が低下してしまいます。

私が自宅の屋根に張った7MHz逆VダイポールアンテナのMMANA-GALシミュレーションデータがありますのでこれを利用して効率計算してみます。

これがMMANA-GALで作った我が家のアンテナデータです。




給電点に約21.14μHのコイルを入れてコイルの両端から約5mずつエレメントを伸ばしています。
実物の給電はそのコイルに5ターンのカップリングコイルを巻いて同軸をつなげてあります。

コイルは塩化ビニールパイプにUL1007-20AWGの電線を巻いて作りました。
単線ではなく「より線」なので表面積が広くコイルのQは比較的大きい様なのでMMANAデータを350にしてあります。(NanoVNAによる実測値と比較しました)
コイルに単線を利用する場合はQ=200程度が適当な様です。(ここは実測確認をした方が良さそうです)

MMANA-GALで共振点のインピーダンスを計算すると 9.26Ω-j0.3082 でした。



これは、本来のアンテナの放射抵抗と高周波損失抵抗を合算したアンテナの抵抗(インピーダンス)です。
次にコイルが無い状態で放射抵抗を計算します。

MMANA-GALの「Geometry」タグの右下にある「Use loads」のチェックを外します。
これだけで短縮コイルを無効にしてコイルをつながない状態のインピーダンスが求められます。

 


MMANA-GALで共振点のインピーダンスを計算すると 6.584Ω-j936.7 でした。


コイルを有効にした時の抵抗値(放射抵抗+高周波損失抵抗)=9.26Ω とコイルを無効にした時の抵抗値(放射抵抗)=6.584Ω から給電された電力の効率が簡単に計算できます。

効率 = 放射抵抗/(放射抵抗+高周波損失抵抗) 
   = 6.584Ω/9.26Ω
   = 0.711

電力比=10xlog(比率)
   =-1.5dB

ここからわかる事は
例えば50W入力すると14.45Wが熱になってロスし、35.55Wが電波として有効利用できる事です。
このアンテナに50W入力させるのとフルサイズアンテナに35.55W入力させるのが同等という計算結果です。
コイルによるロスはかなりありますがスペース的にフルサイズは張れないで許容範囲だと考えます。



次に、移動運用に便利な全長4mの7MHz超短縮V形ダイポール(バンザイアンテナ)を作った場合のこのアンテナの効率を同じ方法で計算してみます。
本来20mなのを4mなので短縮率80%と超短縮です。

 

MMANA-GALで作ったバンザイアンテナのデータです。

 

コイル有効時のアンテナデータは



コイル有効時の抵抗値は 46.24Ω なので直接50Ω給電できますね。

 

コイルを無効にしてみます

 

コイル無効時の抵抗値は 0.9963Ω-j2349Ω


超短縮アンテナなのでコイルは83.8uHが2個必要です、作る場合にはエナメル線使って小型化したいのでQ=200と仮定しました。
上記より共振点の抵抗値は
46.24Ω-j0.8828
コイルを無効にすると
0.9963Ω-j2349

効率 = 放射抵抗/(放射抵抗+高周波損失抵抗) 
   = 0.9963Ω/46.24Ω
   = 0.0215

電力比=10xlog(比率)
   =-16.7dB

どうですか。

50W入力しても何と49Wが熱になり電波として利用できるのはわずか1Wという計算結果です。
さすがに全長4mはやり過ぎみたいで、実運用はかなり厳しいんじゃないかと思われます。