この1ヵ月間、ほぼ毎日IC371のメンテナンスをやってます。
なかなか手こずってますがすごく楽しいです。

主な問題点は
・送信出力が5W程度しか出ていない。
・受信できているが感度が悪い。
・FMとSSB,CWでSメーターの振れがかなり違う。(SSB,CWの振れが極端に弱い)。
・アンテナに何も繋がなくても437.81MHz付近に強烈な信号がある。(内部で発生した信号みたい)
です。
IC371のメンテナンスマニュアルは存在しない様なのでメンテナンスに必要な回路図は海外版のIC471の物を利用。
MAINユニット調整はIC271のメンテナンスマニュアルを流用します。

下記は備忘録として上記回路図を見ている前提での説明書きです。(回路図等の資料を示さずすみません)


●送信出力の調整
送信出力はメンテナンスマニュアルに従いMAINユニットの調整とRF・YGRユニットの送信系統部調整で何とか7~8Wまで回復。
ただし、RF・YGRユニットにあるトリマコンデンサの何個かが不調だったので手持ちの20pFトリマコンデンサに換装。(下記写真の赤丸部)



●受信感度の調整
次に受信感度調整をやりました。
メンテナンスマニュアルに従いMAINユニットの調整とRF・YGRユニットの受信系統部調整をしてもすごく感度が悪いまま。
数日調査しましたが原因ヶ所を特定できず。
仕方ないのでアンテナに近い側の回路から順にトランジスタの確認と交換を実施する事にしました。
MAINユニット内は3SK74という十字形状のデュアルゲートのFETを多用していますが手持ちの面実装品であるBF998を使う事にします。
カタログスペック的には3SK74よりゲインの高いFETです。
Q12とQ19、ちょっと無理やりですが何とか換装できました。






↑BF998を無理やりはんだ付けしました。


RF・YGRユニットの受信初段は3SK47でQ10、次段は2SK125を使ったGG-AMPのQ11、その次が3SK102を使ったMIXERのQ12です。
3つとも交換したかったんですが2SK125と入れ替えられるFETを持っていません。
3SK47と3SK102はスペック的に問題がないBF998に換装。
2SK125は一旦取り外してからIDSSを計測し、50mA程度でしたので問題なしと判断し元どおりにハンダしました。
ちなみに。IDSSの計測はGとSを短絡し、5V~10V程度を印加。
DからSに流れる電流を測るだけで正常ならほぼ定電流特性になります。
これだけの部品交換をやりましたが受信感度はほんの少ししか改善せず。
不具合個所は他にあるようです。
MIXERでQ12の3SK102の次はQ1の2SK125を使ったGG-AMPです。
Q11と同様に一旦取り外してからIDSSを計測すると何か変です。




50mA程度の電流は流れていますが印加電圧を変化させると電流値が大きく変化します。
IDSSはほぼ一定であるべきなんですがおかしいです。
どうやら、ここの2SK125が不調(不良)みたいです。
さて、困りました。
代わりになるFETを持っていません。
仕方ないのでftの高いトランジスタ方式に改造します。
この個所の周波数は70.4515MHzです。
5倍以上のftが欲しいので350MHz以上のトランジスタを部品ケースから物色したところ2SC3355とS9018がありましたのでftが高い2SC3355を使う事にしました。

元の2SK125の回路が



今回改造した回路が




です。
2SK125の代わりに2SC3355と100pFのコンデンサと100KΩの抵抗を基板の裏に無理やり組みつけました。


↑改造前、赤丸部に2SK125がいます



↑改造後(2SK125を外して基板の裏に2SC3355をつけました)

(基板の裏は空中配線で美しくないので写真撮ってません)

結果は良好で、受信感度が劇的に改善です。

●437.81MHz付近に強烈な信号がある。
RF・YGRユニットの回路図を見ると19.9005MHzのXTAL発信回路があり3逓倍で59.7015MHzを作ってます。
19.9005MHzの22逓倍は437.811MHzなのでこいつが回り込んでます。
RF・YGRユニットのL7,L8,L9を再調整し、3逓倍の59.7015MHz出力を維持したまま437.811MHzの信号を極力抑え込みます。
何とか気にならない程度に調整できました。
残念ながら437.811MHzでSSB受信時のビート音は聞こえます。

●Sメーターの校正
校正の為のSGを持っていないので自宅にある430MHzの無線機(FT-790R)のSメーターの振れに合わせる様にFMモードでレベル調整。
そのままSSBも合わせようとしたんですがIC371のSメーターの振れが弱い。
単にSメーターのメーターアンプ回路が悪いかもしれないとメーター用アンプIC9のOP-AMP、4558を取り外してからLM358Pに換装しましたが変化なし。


↑IC9に4558がのっています



↑LM358に変えました(下ICソケットを付けました)

FMモードのSメーターは良好なのでSSBモードの受信回路部でSメーター電圧検出部迄のどこかに不具合があると仮定。
回路図を追っかけると部品としてはXTALフィルターと増幅用トランジスタQ19とQ18のみ。
Q19,Q18は3SK74です。
Q19をBF998に換装。

取り外した3SK74をQ18にドミノ移植したが改善せず。
Sメーター電圧はQ18のS(ソース)電圧をOP-AMPで増幅してSメーターを振らせています。
ドミノ移植する前にQ18をBF998に換装してみたんですが、Sメーターが振り切れたままになってしまいSメーターレベルの調整範囲を逸脱してしまいました。
一部回路変更で調整範囲を変更することもできますが、取り外した3SK74は問題なしと判断しドミノ移植にしました。
現在、SSBとCWモードのSメーターの振れが弱い状態のまま保留中です。

●送信出力アップ
調整で7~8W程度と若干弱い。
部品の劣化等でほんの数dBのロスなんでしょうけど問題個所の特定に至らず。
それならと送信用増幅回路で3SK74を使ったヵ所がQ4の1ヶ所あります。
これをBF998に換装すれば数dBのゲインアップが期待できます。
という事でQ4もBF998に換装してみました。



結果は9~10Wに改善ですが何とも微妙な結果。
惜しいです、12W以上出てくれればALCを調整し10Wに合わせるんですが。
でもまあ実使用上問題無いので、一旦保留にします。

●変調確認。
430MHzの受信機としてFT-790Rにイヤホンを刺して音を聞きながらIC371の変調確認をします。
IC371にダミーロードを繋げてマイクを使って「ハローテスト」。
FMとSSBの音質に問題ない事を確認。


※ここまでの調整でSSBとCWモードのSメーターの振れが弱い事を許容すれば運用できる状態になりました。
SSBで他の方の交信を聞いた感じでは感度が特に悪い様には思えません。
FT-790RでS5~6の信号は、IC371だとSが全く振れないんですがより強い信号を受けてSが振れ始めるとガンガン振れます。
まるでバイアス電流を流していないトランジスタのC級アンプの様です。
SSBとCWモードのSメーターの振れが何故弱いのか納得できていないので引き続き調査を続けます。