〈サービスエースを狙え?〉
ー韓国某所にあるテニスコートー
シュッ
シュッ
シュッ (素振りの音)
スンジョ:“そうだ。上手いぞスンハ。”
スンハ:“ホント?♪”
スンジョ:“あぁ。”
“スンハは筋がいいな。ママに似なくて良かったな。”
スンハの頭を撫でてやる
ハニ:“ん?何か言った?”
俺の放った小さな一言は、近くで柔軟をしていたハニの耳にも届いたようだ
ひさしぶりのまとまった休日を手に入れた俺は、スンハにテニスを教えるという約束を果たすべく家族で別荘に来ていた。
テニスウェアを着ているハニに驚くスンハ
スンハ:“あれ?ママもテニスするの?”
ハニ:“もちろんよ。大学ではパパと同じテニス部に入ってたんだから”
スンジョ:“万年ボール拾いだったけどな”
ホントのことだ。睨みつけるなよ。
ハニ:“コホンッ(咳払い)”
“スンジョくんに特訓もしてもらったし、サーブだけには自信があるの!”
“まぁ見てて”
テニスはラリーを楽しむ競技なんだが…、
そう指摘してやろうかと思ったが、あの頃と同じテニスウェアを着て、自信満々に臨むハニに、少し昔を思い出し、俺は黙って見守ることにした。
ハニ:“行くわよ~。それっ!”
スカッ
“あれ?おかしいな~?もう一度。それっ!”
スカッ
“それっ!” スカッ
“それっ!” スカッ
ラケットはボールを捉えるどころか虚しく空を切るばかり。
スンジョ:“おい、真面目にやれ。”
ハニ:“わかってるわよ。見てなさい。”
“それっ!” スカッ
“それっ!” スカッ
“おかしいな~?出来ると思ったんだけど…”
出来ると思った…だと?!
スンジョ:“おまえ、まさか…”
ハニ:“え、えへへ。久しぶりだからかな?忘れちゃった…みたい”
その瞬間、俺の努力と懐かしい思い出は砕け散った
そうだな。相手はハニだ。
何度勉強を教えても、その場は出来てもその次にはなかなか活かされないじゃないか。
そう自分を納得させ、冷静さを保とうとする俺
そうだ、いつものこと…いつものことだ
だがな、ハニ!
勉強と違ってスポーツは頭じゃなく体で覚えられるんだよ!!
噴火直前のマグマのように俺の中に怒りがこみ上げる。
この俺(様)が、あれだけ教えてやったのに!すっかり忘れやがって!!
スンジョ:“スンハ!”
スンハ:“はいぃ!!”(怖)
スンジョ:“悪いけど、後はばぁばに教えてもらえ。パパもばぁばに教わったから。お前ならすぐに上達するさ。”
スンハ:“え~、パパは~?”
スンジョ:“パパはダメなママを1から鍛え直さなきゃならないからな。”
“あんな出来損ない。パパが許せるはずないだろ?”
精一杯優しく接したつもりだが、スンハの顔が引きつっている
スンハ:“わかった。スンハ、グミオンマに教えてもらうね”
逃げるように去っていくスンハ
そして俺はハニの元へと歩みを進める
ハニ:“ス、スンジョくん”(ビビり)
スンジョ:“俺に教わっておいてあんな様とはいい度胸だな。”
ハニ:“ヒッ!!”
スンジョ:“来い!二度と忘れないようにその体に叩き込んでやる!”
ハニ:“や~だ~ (泣) 今日はスンハに教えるために来たんでしょ~。”
スンジョ:“スンハの方がお前より100倍うまい!!サーブが10本連続して入るようになるまで、帰れるなんて思うなよ!”
ハニ:“えぇ~~!!(泣)”
そうして数時間にわたる鬼のようなしごきが行われた。
数時間後ー
辺りは暗くなり、ライトに照らされるテニスコート
スンハと他の家族達はとっくに別荘に帰っていたが、いまだハニの特訓は続けられていた。
“一本……二本……三本………四本………五本………六本…………七本…………八本……”
ハニ:“も、もうムリ~~!!”
スンジョ:“ここまできて諦めんのか?”
ハニ:“だって、ハァ もう、 ハァ 手も、足も ハァ 動かないんだもん ハァ、ハァ”
残り二本というところで泣き言を言うハニ
あと、たった二本だろ?
粘り強さがおまえの取り柄なのに、逃げ出すなんて…
そんなの俺(様)が許すはずないだろ?!
スンジョ:“そうか。その程度の女だったんだな。おまえ。
ハニ:“え? ハァ”
スンジョ:“残念だよ。もっと根性のある女だと思ってたんだがな。”
“俺が選んだ《奥さん》なんだから。”
とたんに目の色が変わるハニ
ハニ:“何を言うのよスンジョくん、最後までやるに決まってるじゃない!やる!やってやるわよ!”
ほらかかった
スンジョ“フッ(笑)”
“じゃあその証拠、見せてもらおうか?後二本だ。ミスるなよ”
ハニ:“見てなさいよ~ ハァ、ハァ”
あぁ。いつだって見てるさ、
困難に立ち向かうおまえの姿。
その瞳に宿る情熱を、俺が見逃すはずがないだろう?
何度挫けそうになっても、必ず立ち上がり、立ち向かっていく。
そんなおまえの姿に、俺は惚れたんだから
ハニ“それっ!” パコッ
スンジョ:“九本”
ハニ:“ハァ、ハァ、ハァ、 それっ!”
パコーーン
スンジョ:“…十本”
ハニ:“やった!やったよスンジョくん!今のみた?今までで一番きれいに打てたよ♪♪”
満面の笑みを浮かべ飛び跳ねるハニ。
太陽の光を受けて輝く水面のように、キラキラと輝くその笑顔に、俺の心は今も強く惹かれてる。
全身で喜びを表現してるおまえを見ると、いつの間にか、おまえの喜びが俺に伝染し、俺の心の中にも小さな喜びの花が咲く
頑張ったな。ハニ。
それでこそおまえだよ。
他人にバカにされようと、それがどんなに無謀なことだろうと、おまえは必ずやり遂げる。
自分次第で、未来は変えられる。
可能性は無限であると俺に教えてくれた唯一の存在。
愛しい俺の妻
スンジョ:“良くやったな”
頭に手を置き褒めてやる。
ハニ:“うん。嬉しい。ありがとう、スン…”
今までの疲労が出たのか、急に脱力するハニ
しっかり抱き留めそのままお姫様だっこをする
ハニ:“キャッ!”
“ス、スンジョくん?!”
スンジョ:“こんなになるまで頑張ったんだ。ご褒美が必要だよな?”
ハニ:“うん…。”
涙ぐむハニ。
ハニ:“スンジョくんにお姫様だっこしてもらえるなんて…あたし、幸せ♡”
もう終わったと幸せそうに笑ってるハニを腕に抱えながら、俺の頭の中はすでに別のことを考えていた。
こいつ、ご褒美の意味ちゃんと分かってんのか?
まさかお姫様だっこが褒美なんて思ってんじゃないだろうな?
サーブが打てるようになって、褒美ももらえるなんて、そんなうまい話があるわけないだろ?
ド下手なおまえをここまで上達させてやった俺(様)への褒美、忘れてないだろうな!?
ハニを見ると口もとに手を当て、ニヤニヤと笑ってる
…完っ全に忘れてるな。
まぁいい。幸せだって言うならそう思わせておいてやるさ。
そのかわり、
後で何倍にもして返してもらうからな。
極上の褒美、俺にもくれよな?
end