前の投稿で、2000年代以前のCDから、
2010年代以降のデジタルダウンロードへと、
売上におけるヒットの基準が移っていった、と言う話をしました。
では、2010年代以降、今でも、そのデジタルダウンロードが
ヒットの基準に出来るか、といえば、全くそうは行きません。
オリコンが発表している、デジタルダウンロードチャートと
実際のヒットの感覚が、全くの別物なのです。
理由としては、売上の数値があまりに低すぎるため、
僅かな数値で、上位に入ってきます。
そして、低い数値で上位に入れる割には、
ランクインしている期間が短く、入れ替わりが激しいのです。
ロングランして、長く目につく楽曲が少なすぎるため、
結局、ヒットしていると言えるかどうかが、判然としないのです。
現に、デジタルダウンロードの売上の低さは
去年の年間チャートにも現れていて、
首位である優里の[ドライフラワー]でも、43万回です。
これは、2000年代末期、嵐が2年連続で、CD売上首位を獲得したときの
CD売上よりも低い値です。
嵐が2年連続でCD売上首位を獲得した時の数値は、60万枚レベルでした。
CD売上にまだ信用がおける、そして、売上の底を打った2009年でも
60万枚なのですから、43万回がどれだけ少ないか、わかると思います。
優里のドライフラワーは、大ヒット中の大ヒットです。
それですら、この程度の数値にしかならないのです。
これでは、ヒットのレベルと、デジタルダウンロードの売上に
食い違いがあっても、判断がつけられないのです。
デジタルダウンロードですら、ヒットの基準としては
怪しくなってきた今、新たな基準が確立されてきています。
それは[ストリーミング回数]です。
音源を買うのではなく、データを一時的に借りてくる。
買うのではなく、ただ聴くだけという、
新たな音楽に触れるスタイルが、登場しています。
その[ストリーミング回数]の重要性は
ビルボードジャパンチャートを見ると明らかです。
ビルボードジャパンチャートの点数の割合を見ると、
上位にいる曲は、ストリーミング回数の点数が半分以上を占める楽曲が大抵です。
売上は売り切ってしまえば、これ以上点数は入りませんが、
ストリーミングは聴き続けられれば、点数が伸び、チャートインし続けられます。
ビルボードジャパンでは、少なくとも、売上よりも
遥かにストリーミングを、ヒットの基準として重要視しています。
今は、ストリーミング1億回が、大ヒットの一つの目安なのだそうです。
売上で、ミリオンセラーがもう無理な時代になってしまっているため、
ミリオンセラーという言葉が、ヒットの代名詞になる事は、
音楽について言えば、もう訪れることはないと思います。
ストリーミングが1億回が、ヒットの基準となっているそうですが、
1億には、ミリオンのような、一言で当てはまる単語がありません。
ミリオンのひとつ上の単語は、ビリオンです。ビリオンは10億です。
ストリーミングでのヒットで切りが良い言い方としては
[ビリオン回転]のような言い方になるのだと思います。
ただ、現在10億回ストリーミング再生されているのは、
どれくらいあるのでしょうか。
1億回がヒットの基準となるくらいなので、10億は相当の困難になると思われます。
歌手累計で10億回も、何人もいないようなので、
1曲で10億回となると、不可能な域にあるようです。
というわけで、いまはストリーミング、
つまり聞かれた数がヒットの基準として、最重要になっており、
これまでの基準となっていたセールスという概念が
完全にひっくり返ってしまいました。
二転三転するヒットの基準。
もう、全年代のミュージシャンを、一つの基準で測ることは不可能であり、
歴代ミュージシャンの楽曲や、本人の格を比較は出来ない、と言うことです。
そうなると、やはり[関ジャム]のような、固定の人へのアンケート結果、
つまり、客観のデータではなく、主観、個人の感想を集めて、
ランキングを作ることしかできなくなるんだろうな、と思います。