*青空文庫版
柳田國男「祭のさまざま」に
次の記述があります。
*青空文庫版「祭のさまざま」:
http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/54830_49770.html
柳田の故郷播州の鎮守の
秋の大祭の近い時季の記事です。
●秋は農家の最も心楽しい季節である。
凶作でも無い限りは、
早くから用意をして、
家々では鯖の鮓をしこみ、
甘酒の香が到る処にたゞよひ、
子供は飽きるほど物を食べて、
静かに大織の秋風にはためく音を聴いた。
「鯖の鮓をしこみ」は
食欲をそそります。
「甘酒の香」、
「大織の秋風にはためく音」など
柳田の回想は
嗅覚、聴覚で以て
祭りの近きを記述しているのです。
柳田の民俗学には
忘れかけた感性を
気づかせるところがあります。
引用文の続きを載せます。
●当日になると各部落から屋台が出る。
又だんじりといふ車を
曳いて出る小村もあつた。
「だんじり」の記事です。
今日の泉州
「岸和田だんじり祭り」と
どのように繋がり
どのように切れているのでしょう。
そもそも動く楽車「だんじり」という
代物はいったい何なのでしょう?
「神輿」と、どう異なるのでしょう。
引用文の続きを載せます。
●神の御幸とも
御出とも謂つて、
神輿が里中を巡つて行かれる時刻には、
老人でも家の中にゐる者は無かつた。
小さい者などは一日中、
太鼓の音に附いてまはつてゐた。
「老人でも
家の中にゐる者は無かつた」とあります。
都会だけではありません。
柳田の故郷の村でも
祭りの見物人はいるのですから、
村でも祭礼が
繰り広げられていたことになります。
明らかなことは
柳田は
神事と祭礼を分かち
祭りの時代による変化を
見てとったことです。
次回に
柳田の記述から
「神事から祭礼へ」の道筋を
ボクなりに辿ることにします。
阪俗研2016秋セミナー第2講
10月15日(土)pm7:00~
濱田時実氏(佛教大学研究員)による
「「まつり」再考」が
待ち遠しいことです。
大阪民俗学研究会代表 田野 登