「民俗学概論」PowerPoint完成間近(3) | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

今朝も「民俗学概論」PowerPointの
点検をしました。

そんな中、忘れかけていそうで
覚えている日本語があることに気づきました。


写真図  耕地と生産




この頁は、
ムラにおける農耕に伴う
共同の作業を述べている個所です。


古来、日本社会は
「農耕民族」が多数を占め
普段から「団体行動」をとることを
揶揄されたりしています。

実際、農耕には、
共同労働や、共同祈願といった
共同体が結束して営む行為が多いわけです。

共同労働に挙げられております一つに
モヤイがあります。
この語は舟偏の漢字があてられます。


モヤイという語について
*『広辞苑』に次の記述があります。
  *『広辞苑』:新村出編1998年『広辞苑第5版』岩波書店
①(「舫い」と書く)船と船をつなぎ合わせること。
関連語として「舫い繋り」「舫い杭」
「舫い綱」「舫い詰」「舫い船」が挙げられています。

「モヤイ」の語は一義的には
「船がバラバラになるのを繋ぎ止める」の意味なのです。

『広辞苑』は続けて二義的な意味を記しています。
②(「催合」と書く)
(ア)二人以上の者が一緒に仕事をすること。共同。
(イ)部落内の共同作業。
 また、利益の共同分配。

もちろん、テキストにある「モヤイ」は
《(イ)部落内の共同作業》の意味であります。

しかし、都市に暮らす者にとりましては
忘れかけていることばです。

むしろ「利益の共同分配」という意味の
「モヤイ」という言葉を
聞いたことはあります。
何か、意識としては
あるか無きか分からぬ「共同体」に
経済的に繋ぎ止められている気がしました。


次回は、「ユイ」や「スケ」について
考えてみることにします。


究会代表 田野 登