天皇賞・秋(G1)血統的考察
先週の菊花賞(G1)は、
果敢にハナを奪った
△タイトルホルダー(4番人気)が後続を突き放し、
鮮やかに逃げ切った。
父ドゥラメンテは
皐月賞と日本ダービーを制した二冠馬。
今年の夏、
わずか9歳で死んでしまったが、
初年度産駒から見事にクラシックホースを出してみせた。
母の父モティヴェイター、
2代母の父シャーリーハイツは英ダービー馬。
欧州血脈で固められた母から受け継いだ
重厚なスタミナが3000mの長距離戦で覚醒した。
有馬記念に出てくるようならおもしろい。
さて、今週は天皇賞・秋(G1・芝2000m)。
過去10年間のうち良馬場で行われたのは9回。
前後半の平均は「59秒2-58秒4」で、
勝ちタイムの平均は1分57秒6。
直近の6回はすべて後傾ラップとなっており、
前半ゆるめのペースで入って徐々に速くなる、
というパターンが定着している。
今年は逃げ馬不在のメンバー構成。
戦略的に飛ばす馬が出てこないかぎりは
前半スロー→後半速くなる、
という近年のパターンをなぞる可能性が高い。
日本を代表する強豪が集まるので、
勝ち切るにはハイレベルな中距離能力が必要だ。
長い直線に坂が配された芝2000m戦は、
軽いスピードだけでは乗り切れない。
スピードと底力のある実績馬、
とくに持続力のある馬が信頼できる。
過去3年間の、
「レースのラスト5ハロン」と「勝ち馬の上がり3ハロン」は
それぞれ以下のとおり。
18年57秒4-33秒6(勝ち馬レイデオロ)
19年57秒2-33秒8(勝ち馬アーモンドアイ)
20年57秒3-33秒1(勝ち馬アーモンドアイ)
過酷なロングスパート戦でありながら
上がり3ハロンが33秒台、
というハイレベルな戦いとなる。
今年もこれに近い流れになる可能性が高く、
そうしたラップへの対応力が
取捨選択のひとつの基準となりそうだ。
コントレイルは
「ディープインパクト×アンブライドルズソング」
という組み合わせ。
この配合は父の代表的なニックスのひとつで、
他にダノンプラチナ(朝日杯フューチュリティS)、
レッドベルジュール(デイリー杯2歳S)と
レッドベルオーブ(デイリー杯2歳S)の
兄弟などが出ている。
出走23頭中20頭が勝ち上がるという
驚異的な成績だ(勝ち上がり率87%)。
この組み合わせは直線の長いコースに強く、
東京芝では連対率36.2%を記録している。
中山芝の21.2%を大きく上回っている。
ちなみに、阪神競馬場では
内回りで12回走って連対なし、
外回りは連対率35.5%と、
これも大きな差がある。
大阪杯(G2)が行われる阪神内回りコースは
血統的には実績の乏しいコースだった。
レコードで圧勝した東京スポーツ杯2歳S(G3)、
3馬身差で楽勝した日本ダービー(G1)、
アーモンドアイに食い下がったジャパンC(G1)と、
東京コースでは
常にハイレベルなパフォーマンスを披露している。
2着に敗れたジャパンCは
三冠を全力で走り切った直後で
本調子になかったと思われる。
無敗で三冠を達成したシンボリルドルフ(1984年)、
ディープインパクト(2005年)は、
三冠直後のレースで苦杯を喫している。
日本だけの現象ではなく、
1970年にイギリスで無敗の三冠を達成したニジンスキー、
1977年にアメリカで同じく無敗の三冠を達成した
シアトルスルーも、直後のレースで敗れている。
長距離戦(日本=菊花賞、
イギリス=セントレジャー、
アメリカ=ベルモントS)を
力一杯走ると消耗が激しく、
目に見えない疲れが残る。
なおかつ、
無敗の三冠を達成するために
極限の仕上げをした反動も出てくるのだろう。
今回は休み明けなので
フレッシュな状態で臨むことができる。
前述のとおり条件的にはベストで、
どうやら台風の影響も避けられそうなので
期待できるだろう。
グランアレグリアは
「ディープインパクト×タピット」
という組み合わせ。
母タピッツフライは
アメリカでジャストアゲームS(米G1・芝8f)、
ファーストレディS(米G1・芝8f)などを制した芝の一流馬。
前者を勝った際は1分32秒34という高速決着だった。
時計勝負に強い血統であるといえる。
母の父タピットが伝える
気難しさの影響か折り合い面に難しさがあり、
ペースが締まったマイル戦や、
1200~1400mの短距離戦で
とくに優れた能力を発揮する。
2000mの大阪杯(G1)は、
雨の影響で前に進みづらい馬場だったので、
行きたがるそぶりを見せなかったが、
前述のとおり天皇賞・秋は
前半のペースがゆるめなので、
折り合えるかどうかがカギとなる。
そこをクリアできれば、
ディープインパクトの牝馬のなかでは
歴代最高レベルの資質を備えているので
好勝負に持ち込めるだろう。
ただ、気になる点は、
8月に喉頭蓋エントラップメントの手術を行ったこと。
追い切りでは影響が感じられなかったとしても、
実戦でどうなるかは走ってみないとわからない。
エフフォーリアは
「エピファネイア×ハーツクライ」という組み合わせで、
アドマイヤムーン、スリープレスナイト、
ケイティーズプライドの近親にあたる。
父エピファネイアは
牝馬三冠馬デアリングタクト、
アメリカJCC(G2)を勝ったアリストテレス、
菊花賞(G1)とホープフルS(G1)で2着となった
オーソクレースの父。
2年間で菊花賞の馬券圏内に
3頭の産駒を送り込んだように
長丁場での実績が素晴らしい。
本馬は母の父がスタミナ型のハーツクライなので、
本質的には2000mよりも
2400mが向いているのではないかと思われる。
ただ、同産駒の東京芝2000m連対率は23.5で、
1位ディープインパクトの27.3%には及ばないものの、
2011年以降、当コースで産駒が20走以上した
57頭の種牡馬のなかで第6位と悪くない。
無敗で皐月賞(G1)を制し、
日本ダービー(G1)はハナ差2着と、
パーフェクトに近い競走成績。
能力的には3歳世代で
1、2を争うレベルにあるので、
古馬重賞における今年の3歳勢の好成績を考えると、
古馬に引けを取らない走りが期待できる。
あとは仕上がり具合だけ。
臨戦過程を見ると、
過去10年間の連対馬20頭のうち5頭が毎日王冠組だが、
ここ5年間は連対していない。
ここ5年間は安田記念組が4頭、
宝塚記念組と札幌記念組が2頭ずつ、
天皇賞・春組とオールカマー組が1頭ずつ連対している。
今年、安田記念から直行してきたのは
グランアレグリアしかいない。
コース形状から外枠不利は明白なので、
できるだけ内枠を引きたいところ。
ヒモ選びに迷ったら半分よりも内側の枠を狙いたい。
外枠に入ってしまった場合は
大幅に割り引き。
8枠(桃帽)は黙って消し。
以上の傾向を踏まえ、
調教の動きなどを加味しつつ、
週末に最終結論を出したい。
果敢にハナを奪った
△タイトルホルダー(4番人気)が後続を突き放し、
鮮やかに逃げ切った。
父ドゥラメンテは
皐月賞と日本ダービーを制した二冠馬。
今年の夏、
わずか9歳で死んでしまったが、
初年度産駒から見事にクラシックホースを出してみせた。
母の父モティヴェイター、
2代母の父シャーリーハイツは英ダービー馬。
欧州血脈で固められた母から受け継いだ
重厚なスタミナが3000mの長距離戦で覚醒した。
有馬記念に出てくるようならおもしろい。
さて、今週は天皇賞・秋(G1・芝2000m)。
過去10年間のうち良馬場で行われたのは9回。
前後半の平均は「59秒2-58秒4」で、
勝ちタイムの平均は1分57秒6。
直近の6回はすべて後傾ラップとなっており、
前半ゆるめのペースで入って徐々に速くなる、
というパターンが定着している。
今年は逃げ馬不在のメンバー構成。
戦略的に飛ばす馬が出てこないかぎりは
前半スロー→後半速くなる、
という近年のパターンをなぞる可能性が高い。
日本を代表する強豪が集まるので、
勝ち切るにはハイレベルな中距離能力が必要だ。
長い直線に坂が配された芝2000m戦は、
軽いスピードだけでは乗り切れない。
スピードと底力のある実績馬、
とくに持続力のある馬が信頼できる。
過去3年間の、
「レースのラスト5ハロン」と「勝ち馬の上がり3ハロン」は
それぞれ以下のとおり。
18年57秒4-33秒6(勝ち馬レイデオロ)
19年57秒2-33秒8(勝ち馬アーモンドアイ)
20年57秒3-33秒1(勝ち馬アーモンドアイ)
過酷なロングスパート戦でありながら
上がり3ハロンが33秒台、
というハイレベルな戦いとなる。
今年もこれに近い流れになる可能性が高く、
そうしたラップへの対応力が
取捨選択のひとつの基準となりそうだ。
コントレイルは
「ディープインパクト×アンブライドルズソング」
という組み合わせ。
この配合は父の代表的なニックスのひとつで、
他にダノンプラチナ(朝日杯フューチュリティS)、
レッドベルジュール(デイリー杯2歳S)と
レッドベルオーブ(デイリー杯2歳S)の
兄弟などが出ている。
出走23頭中20頭が勝ち上がるという
驚異的な成績だ(勝ち上がり率87%)。
この組み合わせは直線の長いコースに強く、
東京芝では連対率36.2%を記録している。
中山芝の21.2%を大きく上回っている。
ちなみに、阪神競馬場では
内回りで12回走って連対なし、
外回りは連対率35.5%と、
これも大きな差がある。
大阪杯(G2)が行われる阪神内回りコースは
血統的には実績の乏しいコースだった。
レコードで圧勝した東京スポーツ杯2歳S(G3)、
3馬身差で楽勝した日本ダービー(G1)、
アーモンドアイに食い下がったジャパンC(G1)と、
東京コースでは
常にハイレベルなパフォーマンスを披露している。
2着に敗れたジャパンCは
三冠を全力で走り切った直後で
本調子になかったと思われる。
無敗で三冠を達成したシンボリルドルフ(1984年)、
ディープインパクト(2005年)は、
三冠直後のレースで苦杯を喫している。
日本だけの現象ではなく、
1970年にイギリスで無敗の三冠を達成したニジンスキー、
1977年にアメリカで同じく無敗の三冠を達成した
シアトルスルーも、直後のレースで敗れている。
長距離戦(日本=菊花賞、
イギリス=セントレジャー、
アメリカ=ベルモントS)を
力一杯走ると消耗が激しく、
目に見えない疲れが残る。
なおかつ、
無敗の三冠を達成するために
極限の仕上げをした反動も出てくるのだろう。
今回は休み明けなので
フレッシュな状態で臨むことができる。
前述のとおり条件的にはベストで、
どうやら台風の影響も避けられそうなので
期待できるだろう。
グランアレグリアは
「ディープインパクト×タピット」
という組み合わせ。
母タピッツフライは
アメリカでジャストアゲームS(米G1・芝8f)、
ファーストレディS(米G1・芝8f)などを制した芝の一流馬。
前者を勝った際は1分32秒34という高速決着だった。
時計勝負に強い血統であるといえる。
母の父タピットが伝える
気難しさの影響か折り合い面に難しさがあり、
ペースが締まったマイル戦や、
1200~1400mの短距離戦で
とくに優れた能力を発揮する。
2000mの大阪杯(G1)は、
雨の影響で前に進みづらい馬場だったので、
行きたがるそぶりを見せなかったが、
前述のとおり天皇賞・秋は
前半のペースがゆるめなので、
折り合えるかどうかがカギとなる。
そこをクリアできれば、
ディープインパクトの牝馬のなかでは
歴代最高レベルの資質を備えているので
好勝負に持ち込めるだろう。
ただ、気になる点は、
8月に喉頭蓋エントラップメントの手術を行ったこと。
追い切りでは影響が感じられなかったとしても、
実戦でどうなるかは走ってみないとわからない。
エフフォーリアは
「エピファネイア×ハーツクライ」という組み合わせで、
アドマイヤムーン、スリープレスナイト、
ケイティーズプライドの近親にあたる。
父エピファネイアは
牝馬三冠馬デアリングタクト、
アメリカJCC(G2)を勝ったアリストテレス、
菊花賞(G1)とホープフルS(G1)で2着となった
オーソクレースの父。
2年間で菊花賞の馬券圏内に
3頭の産駒を送り込んだように
長丁場での実績が素晴らしい。
本馬は母の父がスタミナ型のハーツクライなので、
本質的には2000mよりも
2400mが向いているのではないかと思われる。
ただ、同産駒の東京芝2000m連対率は23.5で、
1位ディープインパクトの27.3%には及ばないものの、
2011年以降、当コースで産駒が20走以上した
57頭の種牡馬のなかで第6位と悪くない。
無敗で皐月賞(G1)を制し、
日本ダービー(G1)はハナ差2着と、
パーフェクトに近い競走成績。
能力的には3歳世代で
1、2を争うレベルにあるので、
古馬重賞における今年の3歳勢の好成績を考えると、
古馬に引けを取らない走りが期待できる。
あとは仕上がり具合だけ。
臨戦過程を見ると、
過去10年間の連対馬20頭のうち5頭が毎日王冠組だが、
ここ5年間は連対していない。
ここ5年間は安田記念組が4頭、
宝塚記念組と札幌記念組が2頭ずつ、
天皇賞・春組とオールカマー組が1頭ずつ連対している。
今年、安田記念から直行してきたのは
グランアレグリアしかいない。
コース形状から外枠不利は明白なので、
できるだけ内枠を引きたいところ。
ヒモ選びに迷ったら半分よりも内側の枠を狙いたい。
外枠に入ってしまった場合は
大幅に割り引き。
8枠(桃帽)は黙って消し。
以上の傾向を踏まえ、
調教の動きなどを加味しつつ、
週末に最終結論を出したい。