安田記念(G1)血統的考察

先週の日本ダービー(G1)は、
好位追走から早め先頭に立った
◎エフフォーリア(1番人気)を、
中団から馬群を割って猛追した
△シャフリヤール(4番人気)
ゴール直前でハナ差とらえて優勝した。

通算成績4戦3勝。

毎日杯(G3)をレコード勝ちしたあと、
皐月賞(G1)をパスしてここに臨み、
3歳馬の頂点に立った。


父ディープインパクトは
これで4連覇。


通算11世代で
7頭目の日本ダービー馬を出し、
トウルヌソル、
サンデーサイレンスを抜いて
レース史上単独トップに立った。

年間約7000頭の
生産頭数を誇る現代において、
これほどの寡占状態を
作り上げているのは
圧巻という以外にない。

全兄アルアインは
皐月賞(G1)と大阪杯(G1)の勝ち馬。


兄弟でクラシック馬となった。


さて、今週は安田記念(G1・芝1600m)。

過去10年間で1番人気馬が
5回連対している一方で
6番人気以下の人気薄が
7回連対している。

力関係がほぼ決まっている
古馬のG1にしては
波乱の決着となりやすく、
馬券的にはおもしろい。

過去5年間の優勝馬は、
16年ロゴタイプ(8番人気)、
17年サトノアラジン(7番人気)、
18年モズアスコット(9番人気)、
19年インディチャンプ(4番人気)、
20年グランアレグリア(3番人気)と、
1、2番人気が勝っていない。


【グランアレグリア】

「ディープインパクト
×タピット」
という組み合わせ。


母タピッツフライは
アメリカでジャストアゲームS
(米G1・芝8f)、
ファーストレディS
(米G1・芝8f)などを
制した芝の一流馬。

前者を勝った際は
1分32秒34という高速決着だった。

時計勝負に強い血統であるといえる。

母の父タピットが伝える
気難しさの影響か
折り合い面に難しさがあり、
ペースが締まったマイル戦や、
1200~1400mの短距離戦
とくに優れた能力を発揮する。


ディフェンディングチャンピオンであり、
昨年は女傑アーモンドアイを
真っ向勝負で負かしているのだから素晴らしい。

それ以降、敗れたのは
距離が長く道悪に苦しんだ
大阪杯(G1)のみ。

前走のヴィクトリアマイル(G1)は
4馬身差の圧勝だった。


過去に牡馬相手にG1を勝った
経験のある牝馬が
ヴィクトリアマイルを勝った場合、
続く安田記念(G1)では
[1-1-0-0]と連対率100%。


09年にウオッカが勝ち、
20年にアーモンドアイが2着となった。

この2頭はヴィクトリアマイルで
それぞれ7馬身差、
4馬身差の圧勝だった。

今年のグランアレグリアはこのパターン。

前述のとおりヴィクトリアマイルを
4馬身差で圧勝してここに臨む。

昨年のアーモンドアイは
グランアレグリアに土を付けられたが、
今年のメンバーを見渡して
その役割を果たす馬は見当たらない。

ディープインパクト産駒は
過去10年間で安田記念を3勝しており、
種牡馬別の成績ではナンバーワン。


気性的な弱点はほぼ解消され、
能力は断然なので死角が見当たらない。


【シュネルマイスター】

3歳馬シュネルマイスターは、
スローペースの逃げを
とらえられなかった
弥生賞ディープインパクト記念(G2)
以外はすべて勝っており、
通算4戦3勝。

弥生賞(G2)を逃げ切った
タイトルホルダーは、
続く皐月賞(G1)でも2着と健闘、
能力の高い馬だった。

加えて2000mも長かった。

ベストの1600m戦に戻った
前走のNHKマイルC(G1)は
ゴール直前で差し切り、
重賞初勝利がG1制覇となった。



「キングマン
×ソルジャーホロウ」
という組み合わせ。

父キングマンは
現役時代に愛2000ギニー(G1)、
セントジェームズパレスS(英G1)、
サセックスS(英G1)、
ジャックルマロワ賞(G1)と
欧州マイルG1を4連勝。

2014年にカルティエ賞年度代表馬に輝いた。

名種牡馬インヴィンシブル
スピリットの最高傑作で、
母ゼンダは仏1000ギニー馬。

これも名種牡馬である
オアシスドリームの甥にあたり、
なおかつ父系も同じなので、
同馬とキングマンは血統構成の50%が同一。

キングマン産駒は能力の上限が高い、
という特長がある。


カルティエ賞最優秀3歳牡馬に選出された
パレスピアー
(セントジェームズパレスS、
ジャックルマロワ賞、
ロッキンジS)は、
通算8戦7勝でマイルG1を3勝。

この路線では現在敵なしの状態となっている。

パーシャンキング
(ムーランドロンシャン賞、
仏2000ギニー、
イスパーン賞)も
マイルG1を3勝しており、
距離不適だった凱旋門賞
(G1・芝2400m)でも3着と健闘している。


3歳馬なので今回は54kgで出走できる。

前走よりも3kg減なので
時計はまだまだ詰められる。


【サリオス】

「ハーツクライ
×ロミタス」
という組み合わせ。


サラキア
(府中牝馬S、エリザベス女王杯-2着、
有馬記念-2着)の4分の3弟で、
母サロミナ(独オークス)、
2代母ザルデンティガーリン
(オイロパ賞-2着、
独オークス-3着、
独ダービー-4着)は
いずれも独3歳牝馬チャンピオン、
という筋の通ったファミリーに属している。


ここ2走はいずれも5着と敗れているが、
前走の大阪杯(G1)は道悪がこたえた。

前々走のマイルCS(G1)は
好位のインにつけた馬同士で
決着したレースで、
大外枠で後方待機策を取った
この馬には厳しいレースだった。

ハーツクライ産駒らしい
東京巧者で[3-1-0-0]と
連対パーフェクト。


日本ダービー(G1)で
コントレイルの2着に敗れた以外は
すべて勝っている。


東京芝1600mは
2歳時にサウジアラビアロイヤルC(G3)で
レコード勝ちを果たしている。


コース適性は高く、
巻き返しの可能性は十分。


【インディチャンプ】

2019年に安田記念(G1)と
マイルCS(G1)を制覇し、
JRA賞最優秀短距離馬に選出された。



「ステイゴールド
×キングカメハメハ」
という組み合わせで、
シルクロードS(G3)を勝った
アウィルアウェイの半兄にあたる。


2代母トキオリアリティーは
希代の名繁殖牝馬で、
本馬の母ウィルパワー(準OP)のほかに、
リアルインパクト
(安田記念、
ジョージライダーSなど重賞4勝)、
ネオリアリズム
(クイーンエリザベス2世Cなど重賞3勝)、
アイルラヴァゲイン
(オーシャンS)を産んでいる。

孫の代からも本馬をはじめ
活躍馬が出ており、
子孫に強い影響力を及ぼしている。



昨年のマイラーズⅭ(G2)を勝ったのを
最後に勝ち星がないものの、
安田記念(G1)3着、
マイルCS(G1)2着、
高松宮記念(G1)3着と、
安定して上位争いに絡んできている。

単勝は買いづらいが、
連下には押さえなければならない馬だ。


【ラウダシオン】

「リアルインパクト
×ソングアンドアプレイヤー」
という組み合わせで、
アンブロジオ
(ファルコンS-4着
/ローズキングダム)の半弟にあたる。


インリアリティと
アンブライドルドのニックスを
抱えた配合は高く評価できる。


東京芝コースでは過去4走し、
NHKマイルC(G1)、
京王杯SC(G2)、
クロッカスS(L)を勝ち、
富士S(G2)は2着と、
連対パーフェクト。

父リアルインパクトは
東京芝1600mで連対率30.0%。


2011年以降、東京芝1600mで
産駒が20走以上した
106頭の種牡馬のなかで第1位。


第2位の父ディープインパクトが
26.2%なので4ポイント近い
差をつけた断然トップとなっている。


ただ、ラウダシオン自身は、
昨年のマイルCS(G1)を最後に
短距離路線に鞍替えし、
1200~1400mで3戦している。

今回は距離延長が鍵となる。


調教の動きや枠順などを総合的に判断し、
週末に最終結論を出したい。