2022年、その男はまたJ1の舞台に帰ってきた。
それも、12年間も昇格できずにJ2で苦しみ続けた"古豪"を率いて。



3年前、曹貴裁は湘南の監督だった。前線からの鋭いプレスと縦に速い攻撃を軸に戦う"湘南スタイル"は確立され、シーズン前半は好調であった。
しかし、来る10月8日。曹貴裁は退任となった。原因はその指導の仕方がパワハラであったとJリーグに認定されたことである。

確かに彼は指導の中で厳しい言葉をかけることが多かった。負けが込んでいるときにはロッカールームで怒号を飛ばすこともあった。

ただ、そこには選手への大いなる愛があった。
それを象徴するように多くの選手が彼を慕っており、曹監督のもとでプレーするために湘南から京都へ移籍した選手もいる程だ。

曹貴裁が退任となった後の湘南は文字通り崩壊した。代理監督となった高橋コーチのときには2試合で11失点という大敗を喫し降格圏へと転落。後任となった浮島監督によって何とかJ1,J2入れ替え戦を勝ち抜き残留したものの厳しいシーズンとなった。

その後、再び京都の監督としてJリーグに帰ってくるのだが、その際曹監督は元の教え子である松田天馬などの湘南の主力選手達を京都に集めた。新天地で再び曹貴裁帝国を築くためだ。実際、以前の湘南スタイルに近いサッカーで躍動し、1年でのJ1昇格を果たした。

一方で、湘南も新たなステージに進んでいた。
山口智新監督を迎え、以前よりも更に戦術的で頭脳的なディフェンスラインを作り上げ安定したチームとなってきた。


そんな曹貴裁によって新たな道を進むことになった両チームが今週末激突する。 
《 続く 》