-医療制度の抜本改革(医療維新)に向けての政策提言書-
目次
1.現状認識………2
2.対応方針………4
3.具体的な改革提言内容………5
(1)窓口負担改革 ………5
・ 高齢者医療制度の原則 3 割負担化………5
・ 低所得者等医療費還付制度の創設………5
(2)制度改革………6
・ 後期高齢者医療制度の税財源化 ………6
・ 後期高齢者向け診療報酬体系の再構築………6
・ 高額療養費制度の見直し………7
・ 「医薬分業」による政策誘導コストの見直し………7
・ 後発医薬品の原則化と一般医薬品の保険適用見直し………8
・ 慢性疾患に関する診療報酬の包括化………8
・ 終末期医療の在り方の検討………9
・ こども医療制度(仮称)の創設と出産費用の無償化………9
・ 健康ゴールド免許制度(仮称)の創設………10
・ 過度に複雑な保険者の統合再編………10
・ 診療報酬への変動制の導入………11
・ かかりつけ医機能の強化………11
・ 医師、看護師、薬剤師等の職能の再編………12
(3)生産性向上………13
・ DX、設備投資等の促進(パーソナル・ヘルス・レコードの実現等)………13
・ 全国医療情報プラットフォームの整備………13
・ 画像データ共有システムの導入………14
・ 経営情報・診療介護等情報の見える化………14
・ 創薬支援の強化………15
4.結語………16
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-医療制度の抜本改革
(医療維新)に向けての政策提言書-
1.現状認識
日本が直面する高齢化と長寿化は、国の将来に深刻な影響を及ぼしている。
高齢者を支えるために現役世代に課せられる社会保険料の負担は限界に達し、この重圧は経済および社会の活力を蝕み続け、少子化という新たな社会問題を深刻化させる要因になっている。
さらに政府は現在、「子育て支援金」の名の下で現役世代へのさらなる負担増(実質増税)を画策しており、このままでは国の活力や財政基盤が毀損されるだけでなく、医療や介護を含む社会サービスの持続可能性自体すら危ぶまれる。
こうした負担の大きな要因になっているのが、年間40兆円を超え、なおも増え続けている我が国の医療費であり、その制度改革の議論をこれ以上先送りすることはできない。
そもそも、医療費は介護費と合わせて日本の GDP の約 1 割を占め、経済規模で言えば自動車産業と同等である。
しかし、その内実は大半が税と保険で賄われており、市場のチェック機能が働きにくい。
加えて、人件費の比率が 7 割にも達する労働集約型の産業であるため、資源の配分や効率性の面で問題が生じやすい。
そのため、この日本最大規模の産業には人件費の適正化や効率的な運用モデルへの転換といった医療産業全体の構造改革が求められている。
すなわち、今こそ持続可能な医療制度の構築を核とした抜本改革を断行せねばならない。
「生産性革命」ともいえる大改革によって医療システム自体の持続可能性を高め、将来にわたって質の高い医療サービスを全ての国民に提供できる体制を確立するべきである。
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聖域なき改革を断行して歳出を抑制すれば、少子化対策としても第一に行うべき現役世代の負担軽減、すなわち現在の高すぎる社会保険料負担を軽減できるのはもちろんのこと、政府の「子育て支援金」制度のように医療保険料を増額・目的外使用して効果が不透明な子育て施策にバラまくという短絡的な手法に頼ることなく、他分野の歳出歳入改革と合わせて、少子化問題の真の解決に必要な財源は確保できる。
すでに我が党は昨年 6 月、「こども未来戦略方針」に関する提言書(維新版・異次元の少子化対策)の中で社会保障制度を含む徹底した歳入歳出改革によって少子化財源を確保することを提起してきたところであるが、その中の医療制度改革について、本政策提言の中ではさらなる具体化を図った。
誰もが等しく歳を重ねるからこそ、構造改革によって世代間格差のない持続可能な社会保障制度を再構築していくことが重要であり、そのための抜本改革案「医療維新」をここに提言する。
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2.対応方針
以上の現状認識の下、次の基本的な方針に基づいてわが国の医療制度医療を抜本改革すべきである。
(1) 持続可能な医療制度への抜本改革
急速に進む高齢化に伴う医療費が増大する中、どのようにわが国の医療を持続させるかが最大の課題である。そのため、以下の点につき抜本的な改革に取り組む。
① 給付と負担の見直し、世代間格差の是正
後期高齢者への過度な給付と現役世代への過度な負担という構造問題を抜本的に是正するため、窓口負担改革や保険制度改革等に取り組む。
② 医療産業の生産性およびサービス品質向上のための構造改革
自動車産業にも匹敵する一大産業である医療サービスの生産性および品質向上を図るため、診療報酬や医薬分業の体系等の構造改革を行う。
③ DX による生産性の向上
上記の改革を行うためには、医療分野におけるデジタル化が不可欠である。医療情報の一元管理やオンライン診療等の医療 DX を推進する。
(2) 健康で安心できる医療制度の構築
医療制度の持続化を図る上で忘れてならないのが、国民の健康と安心を確保することである。
低所得者等への手当てや地域医療体制の充実等を着実なものとする。
以下、この方針に基づき(1)窓口負担改革、(2)制度改革、(3)生産性向上の観点から具体的な改革を提言し、充実した医療制度の持続可能性を高める。同時に、社会保険料の負担軽減・少子化対策財源の捻出を実現し、豊かな社会保障と現役世代の活力の好循環を生み出す。
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3.具体的な改革提言内容
(1)窓口負担改革
・ 高齢者医療制度の原則 3 割負担化
日本の高齢者医療制度は窓口負担割合が低率に抑えられているため、世代間での給付と負担の格差が顕著に生じており、少子高齢化が進む中での財政負担の増大が財政上の持続可能性を著しく損なっている。
この低負担率は、高齢者の頻回受診をも誘発し、結果として医療提供の質を向上させるためのインセンティブを弱めている。
具体的には、低い窓口負担が医療利用の過剰を招き、医療資源が必ずしも効果的に利用されていない状況を生んでいる。
そこで、世代間での公平性を確保し、医療サービスの効率と質を高めるために、高齢者医療制度における窓口負担を一律に現役世代と同じ3割負担(※)とする。
ゼロコスト問題が指摘される生活保護の医療扶助にも、「低所得者等医療費還付制度」(後掲)の創設を前提に一定程度(ワンコイン)の負担を求める。
※現在1割負担の高齢者については、大幅な窓口負担増を緩和するための経過措置として、2割負担への移行から始めることも検討する。
・ 低所得者等医療費還付制度の創設
窓口負担を一律3割にした場合、低所得者・生活困窮者等への負担増が懸念される。
マイナンバー制度、マイナ保険証をフル活用し、年齢及び生活保護受給の有無にかかわらない低所得・低資産者等に向けた医療費還付制度「低所得者等医療費還付制度」(仮称)を創設する。
本制度により低所得者・生活困窮者等への還付による負担軽減を実現しつつ、生活保護受給者にも一定の自己負担額を導入することで、医療利用の適正化を促進する。
将来的には、より普遍的な「給付付き税額控除」制度の体系の中に位置付けていく。
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