ムーン・ウォークは、マイケル・ジャクソンが世間に広めたステップだ。横から見て、前向きに歩いている動作なのだが、何故か後ろに移動する。
この「動作と結果の不思議な不一致」に目を奪われた。
当時、僕はこのステップを「マイム・ステップ」と解説していたのを見た覚えがある。もともとは、パントマイムの芸人が披露していた、だまし歩きの技だ。どうやら、バックスライドと言うのが元の名称のようだ。
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もう一つ、シリー・ウォーク'SILLY WALK'がある。直訳すれば「バカ歩き」。名前の通り、アホみたいに足(膝)をあげて歩く。モンティ・パイソンがやったものだ。軍隊のパレードの歩き方。それを、もっと遥かに、バカのレベルまで持っていくのだ。
Monty Python - Ministry of silly walks
ムーン・ウォークと、シリー・ウォークを2つ並べたのは、あることに気付いたからだ。ある動作が逆の仕組みであることに気付いたのだ。
それは、「踵(かかと)」の位置だ。
バカ歩きでは、引き上げる足をなるべく高くする。顔ぐらいまで上がればバカさが際立って良い。このとき、かかとは地面にべったり着いている。かかとに体重を乗せている。人の自然な歩き方を動きを大げさにしたに過ぎない。
一方、マイケルのムーン・ウォークは視覚のだましトリックを入れる。かかとの見せ方である。その要点は2つ。
・片足の、かかとを上げ、つま先に体重を乗せる。
・反対の、かかとを下げ、(体重を抜いて、後ろへ)スライドさせる。
こうして、常識(体重を乗せる足が地面に固定)の逆の形を作っているのだ。
これがスムーズにできると、アッと驚く「なぜか後ろに進む」ステップになる。
マイケルを見よう。
マイケル ムーンウォークを初披露(モータウン25)
↑3'36"からなのだが。短いな。
マイケルのセンスは格別だね。