短歌ブログ 道 -3ページ目

      短歌ブログ 道

   横尾幹男先生は高校時代から短歌に目覚め
   生涯を短歌と歩もうと決意されたそうです 
   このブログは先生の下に集った
   ベテランから初心者の短歌を載せています

冬枯れの姿をさらす裸木たち枝にはしかと芽を残しつつ

ポツポツと灯りそう始めた街並みに山影落とし夕日去りゆく

藤原恵美子  作





雪降りて寒さ厳しい今朝の部屋 薔薇のカレンダー温風に揺れる

連日に喪中のハガキ届きたり雪降り続く今日も生きなん

澤田静子  作




スーパーの裏をうろつくキタキツネよ君も独りか雪降りやまず

古傷がひしひし痛むさむき夜は雪降る音に耳そばだてる

吉田千寿子  作




爪切りて沓下はきて何処へ行くと問ふる人の居る部屋の温とさ

肩に積む雪払いつつ歩みゆく寂しさふいに遠のくごとく

横尾良子  作





鍵あける手をことさらに寒くする冬の未明の蒼きひかりぞ

父母もわが頭上にて眺めいむ 冬のオホーツク夕映えの海を

横尾幹男  作
ストールとダリアの球根餞別に友を送りて秋の空見あぐ

くさぐさと寝付けぬ闇と四方の嵐逃げもならずに読書がすすむ

安倍良香  作




離農せし家の傍らにうづくまる馬頭観音が氷雨に濡るる

夜深く白鳥渡る声がする老いも若きも混じれるものを

吉田千寿子  作




病室の窓より紅葉の濃ゆき色  命の燃ゆる我の眼に

読み終えし本を片手に空見上ぐ蜻蛉行き交う夕焼け空よ

梨木いずみ  作




時雨降る夕べ父母を待つ子等の声響きマンション灯火ゆれる

吹く風に寂しさ払うか樹々の枝ゆれて黒々影曳く夕べ

横尾良子  作



雪に変はる雨と思ひき頬うたせおまへの点す灯へ戻りゆく

限りなく波は起こりて岸をうつ支笏湖人絶えけふは立冬

横尾幹男  作
す日々共に十三年目となる愛犬よさんぽコースも目配せしつつ

誘われ広場へ集まる枯れ葉たちザワザワと膨らむささやき

藤原恵美子  作




やわらかな秋の光に包まれて雀飛び交う楽しい朝

育て来た二人の孫も成人す我の背丈をゆうに越えて来し

藤原三枝  作




ゆっくりと雲も流れて変容し背を押すタイヤ交換せよと

あじさいの新芽を残し枝を残し伐りぬ秋の最中の冬支度なり

澤田静子  作




薔薇の木からはたりと落つる蜜蜂の翅は再び動かざりけり

風にのり夕空浮くうろこ雲茜に染まり彼方へ去りぬ

吉田千寿子 作




優しさも無気味さも失せ森の樹々に寄り添ひている月の明るさ

もり上りもり上り来て引きてゆく海の夕焼け  父母に似る

横尾良子  作




好きといふ一つの感情  幾十年つづくはずなき今朝も時雨れる

はるかよりはるかへ渡る風聴いて闇なす森のすでに立冬

横尾幹男  作
咲き誇る秋明菊の群生に賑わい残し風渡りゆく

移りゆく季節を車窓で感じつつススキはすでに穂を揺らしいる

藤原恵美子  作




娘よりたより添えられ荷が届く解けば溢るる桃の香よ

主なき塀を越えゆき咲く萩よ風にゆらいで秋深まりぬ

藤原三枝  作




空高くとんぼ群れなし飛びていし俄に色づくナナカマドの朱

ざざわと胸を吹き抜く風も止み病葉一枚手にのりている

澤田静子  作




突き上ぐる衝撃幾度も襲い来て硝子は砕け椅子跳び跳ねる

夜の明けて災害派遣の車列ゆく地震発生五時間の後

いちめんに白露を置く草原を駆け抜けてゆく昨日の後悔

白鳥の渡りゆく声響かせる新月の空仰ぎ見ていつ

吉田千寿子  作




 
急坂をのぼりつめれば幌見峠その名たがわず一望はるか

入れ替り旅行案内届ききてのぞみ繋げば地球一周

てきぱきと決断しゆく息の側で夫を送る友に安堵にじみて

安倍良香  作



君からのLINE来ぬ日はスマホなど筋トレ用の小さなダンベル

片思い嫉妬と戦う友のこと分かる分かると頷いている

梨木いずみ  作




夕暮れて航海を待つ一隻の船のあかりが白く灯りぬ

坂道をのぼり来たればしづかなる炎の立つるレンガ堀の蔦

吉田千寿子  作




夕暮れの光を背にして帰り来る一人を待てりみどり児抱き

ひらひらと秋の光を騒立てて降り来る落葉や真昼間の野に

横尾良子  作




雲重く垂れ込め静けし町にして闇へ入りゆく予感に暮れる


赤き灯を点せる塔が我此処にありと夕べ岡の上に立つ

横尾幹男  作