くさぐさと寝付けぬ闇と四方の嵐逃げもならずに読書がすすむ
安倍良香 作
離農せし家の傍らにうづくまる馬頭観音が氷雨に濡るる
夜深く白鳥渡る声がする老いも若きも混じれるものを
吉田千寿子 作
病室の窓より紅葉の濃ゆき色 命の燃ゆる我の眼に
読み終えし本を片手に空見上ぐ蜻蛉行き交う夕焼け空よ
梨木いずみ 作
時雨降る夕べ父母を待つ子等の声響きマンション灯火ゆれる
吹く風に寂しさ払うか樹々の枝ゆれて黒々影曳く夕べ
横尾良子 作
雪に変はる雨と思ひき頬うたせおまへの点す灯へ戻りゆく
限りなく波は起こりて岸をうつ支笏湖人絶えけふは立冬
横尾幹男 作