短歌ブログ 道

      短歌ブログ 道

   横尾幹男先生は高校時代から短歌に目覚め
   生涯を短歌と歩もうと決意されたそうです 
   このブログは先生の下に集った
   ベテランから初心者の短歌を載せています

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急ぎ足のわが影見れば背中丸く姿勢ただすに物差し欲しき

起き抜けに壁と激突まぶた腫れヘアカットの予約取り消す 

安倍良香  作




お気に入りのパン屋のスタンプ集まりて百円引きにガッツポーズす

新じゃがのポテトサラダは祖母の味  久方振りに手紙を書こう

梨木いずみ  作




家出せし猫が夜更けに帰り来ぬ面差し変わり眼光鋭し

鈴蘭や水仙さえも毒をもつ  ましてやわれの心の中にも

吉田千寿子  作
天よりの恵みのごとく降り注ぐ地上を覆いて春の雨降る

ひさかたの雨音響く春の夜  芽吹き始めし一粒の種

藤原恵美子  作




今日からは「令和」となり薄紅の桜ひらきて人集いくる

孫たちよ次の世代を頼みます青葉しげりて花満つる地を

藤原三枝  作




葉に残る雨粒光りチューリップ陽を返しいる早朝の庭

雨に打たれ路上へ留まる花びらよ  見向きもせずに通い過ぐる朝

澤田静子  作




ポストには燃料店の請求書とひまはりの種が置かれてありき

日に焼けて明るく笑ふ農青年よ教へてくれぬか髭伸ばすわけを

吉田千寿子  作




ゆさゆさとリラの花房ゆれ惑う越えられぬもの何もあらぬに

桜花あえかに命を水面へと散りて流れてまた夜が来る

横尾良子  作




月光の庭に居座る黒き石しずかに我の揺らぎを支ふ

月の照る静寂・過去から死後まで遥かはるかを歩みつづける

横尾幹男  作
青空に白い目絵の具を落としたか春風吹いて雲かすみゆく

平成の三十一年を共に生き戦後一〇〇年が令和へ向かう

藤原恵美子  作




まだ深き雪の下にて見つけたり水仙の芽よ春忘れじかと

春の朝雀の子育て微笑まし光の中に木々を飛び交う

藤原三枝  作



福寿草きらきらと咲く庭隅に終らぬ冬が棲みついている

ながながと体を伸ばす猫へ差す春陽の温み甘く匂へり

吉田千寿子  作



かた雪の残りし庭にクロッカス出番が来たよと顔を出しおり

青空にポパイの白雲浮かんでいる午後の散歩路足取り軽く

澤田静子  作
暗闇で先行き見えぬ旅の途にカーナビ示す道しるべ行く

1日を泣いて過ごすか笑おうか友と語らう午後となりたり

安倍良香  作




桜咲き君の瞳を思い出すもう会えないと空を見上げる

花びらが君の魂ならば今  そっと手に受け口付けるのに

梨木いずみ  作




朝の陽がうすくれないに丘染める我には届かぬ景色の如く

地下鉄の人波にのまれ見覚えのある背が消へる  改札出でたり

吉田千寿子  作




其処此処に球根の花々華やぎてさまよう我を風が笑いぬ

早春の光あつめて溢れ咲く桜花を映す風の野の川

横尾良子  作




朝茜する街見下ろしともかくも一年ことなくあれと合掌す

膨らめる花芽うるほし降る雨のしめやかにして街に灯の入る

横尾幹男  作 
言えぬこと癒えぬ辛さを抱えつつ二人でも一人暁さがす

何気なく脱がれた靴を直しつつ君の体力限界を知る

安倍良香  作




モヤモヤを振りはらうように掃除する窓を全開良い気よ巡れ

清め塩ギュっと握って対峙する強くはないが弱くもないと

梨木泉  作




断崖を掴み根を張る松の木やその静寂に心ざわめく

冬を越へ休むことなく踏まれいてボロボロとなる春の国道

吉田千寿子  作




ゆっくりと足跡のこし歩み来し人影まばらな海辺の町を

次の世も出逢えるごとく春の風海へ向かいて吹き過ぎてゆく

横尾良子  作




今日もまた為すことなく眺めいる窓を歪めて春の雪降る

雪雲が激しく広ごるまた今日も春待ちひっそり生きいる我に

横尾幹男  作