司馬遼太郎の「坂の上の雲」に海軍の聨合艦隊が射撃訓練に「内膅砲射撃(ないとうほうしゃげき)」という方法があった。小銃を大砲の中に装置しておく。砲員は大砲を操縦して目標を狙い、その小銃弾を目標へ発射するのである。」と紹介していたが、これ意外と知らない軍事専門家もいる。
「内膅砲射撃」とも戦車でも「縮射射撃」とか「狭炸弾射撃」とか呼ばれる射撃があり、戦車砲でキャリバー50の12.7㎜の弾を使って射撃訓練を行っている。
明治時代の昔から現在まで行われている経済的な射撃訓練だ、高価な砲弾を頻繁に使うのは大変な出費になる。
砲弾1発で兵隊の月の俸給が吹っ飛ぶからね・・・。
内膅砲射撃は海軍用語なのかも知れないが解説しておく。
艦砲射撃にとっては如何に照準ということが重要であり、これが正しく出来ていなければ如何に射撃計算が正確であっても命中弾は得られないということです。
そしてその照準は 「射手」 によってなされるということです。
“ 教育・訓練と経験による熟達であり、射手個人の才能・技能であり、精神力の賜 ” であるのが 「照準」 である。
その照準の第1歩としての極く基礎的なやり方については 「照準発射訓練」 と称する方法により、弾を撃たなくても教えることはできます。
しかし、照準を担当するのは砲の引金を引く 「射手」 ですから、やはり実際に弾を撃って照準の善し悪しを訓練していくことが最良であることには変わりはありません。
艦の日々の業務・訓練において、次の点からも実弾射撃をそう頻繁に実施するわけにはいきません。
(1) 砲身命数の問題と実弾消費 (特に中大口径砲)
(2) 実弾射撃のためには射撃海面まで出港する必要がある
そこで、実弾を撃たずに射手を始めとする射撃関係員を訓練する簡便な方法の一つとして採用されたのがこの内膅砲射撃です。
小銃口径の内筒砲 (始めは小銃の銃身を改造して作られたものでした) を砲の中に入れ、砲と内筒砲の砲軸が正しく一致するように据え付けます。
そして、通常の射撃と同じように砲を操作し、標的を照準して内筒砲を発射することになります。
そこで疑問に思われる方もおられるかもしれません。
小銃口径の様な射距離の短いものを使っているのに、どうして砲の通常の照準で当てることができるのか?
つまり何故その砲の射手の訓練になるのか、 普通に小銃を撃って訓練するのとどこが違うのか?と。
それは換算表を作っておけばよいのです。
例えば、400m先の標的を狙うとするなら、この時の内筒砲に必要な仰角はその射表から求められます。
次ぎに本来の砲の射表からその仰角に応じた射距離を求めれば、それが照準器の縦尺 (距離尺) に調定すべき値になります。
そしてその値を照準器に調定して通常の砲の操作で400m先の標的を狙えば、内筒砲の小銃口径弾でピッタリと当てることができるわけです。
したがって、これによって射手は自分の砲を使って、その砲で通常の射撃をするのと同じように訓練が出来ます。
そして更に、射手の操砲・照準訓練だけではなく、測距、その伝達、(換算)、照準器の調定、照準、発射、というチームとしての一連の訓練も実施できます。
縮射射撃には縮射弾と呼ばれる弾薬を使う場合もある。
縮射弾とは主に射撃訓練で使用される弾薬である。
迫撃砲や無反動砲の場合、本来使用する弾薬を用いた訓練を行うには一定の広さと弾着地を持つ演習場で射撃を行わなければならない。
こうした実射には中規模以上の演習地を必要とする。
そこで本来の射撃距離よりも比較的短い距離や、比較的簡易な施設で射撃訓練ができるよう、一定の大きさと威力を持つ銃弾や火薬が開発され、運用されている。
こうした弾薬が縮射弾である。
無反動砲:縮射装置と呼ばれる弾薬を模した専用の装置に曳光弾を装填し、後部に雷管をセットして装置を装填する。
引き金を引くと曳光弾が光を放ちながら射出され、方向と高さを発光によって判断できるようになっている。
主に小銃射撃場や戦闘射場で射撃訓練が行われる。
迫撃砲:縮射装置と呼ばれる迫撃砲弾薬を模した専用の装置に火薬を装填し、砲口から落とす。
発射された装置の火薬部分が突出後着弾し、音と光、煙で着弾の現況を示す。
弾着にあってはあらかじめ射距離と射角設定を行い、射程は最大約300メートルが上限である。
縮射装置は縮射弾突出後に砲の前方へ弾着する。
戦車:装填手が直接縮射装置を装填して12,7mmの曳航弾を用いた射撃を行う。
狭炸弾と呼ばれる連装銃用のプラスチック製弾薬による車載機関銃による射撃も行われる。
標的は主に移動標的が使用される。
特科火砲:プラスチック製の模擬弾薬を射出する。
一部演習場には専用の射場もあり、トレーナー射場とも呼ばれており、上富良野演習場や然別演習場といった中規模演習場に設置されている。