ある温泉宿に泊まりました。
観点によっては日本を代表するといってもいい場所です。
メディアで騒がれたこともあるくらいなので知っている人も多いことでしょう。
そこは秋田県の山奥のなかなかアクセスしにくい所です。
なので通常であれば何かのついでに行くようなこともありません。
しかし今回は登山の前泊でちょうど良い機会に恵まれました。
とはいえ少し抵抗感はありました。
なかなかひなびた宿で湯治目的の自炊棟もあるくらいです。
単純に今まで体験したことのない世界観でした。
有名な理由はその治癒効果にあります。
どことなくあらゆる病気が平癒するイメージでしょうか。
特に癌に関してはよく効く印象です。
それはpH1.2という強酸性泉が理由のようです。
この強さは他に類を見ないレベルでしょう。
加えて毎分9000リットルという日本一の湧出量らしいです。
とにかくそのどれもが自分の枠外でした。
そしてそんな湯治場なので雰囲気も独特なものです。
当然のことながら明らかに治療目的のお客さんも多いものです。
それがいわゆる旅行とは一線を画す空気感を生み出しているのでしょう。
あえて表現するなら日常と隔絶された自分の体と向き合うための場という感じでしょうか。
どこか修験道とも共通する何かがある気がしました。
旅の開放感や楽しみという様子はあまり見当たりません。
物理的にはその要素もなくはないのですが集まる人がそうではないのでしょう。
そんなわけで自分たちが場違いだとも言えそうでした。
ただ排他的でもなく居づらいわけでもありません。
おかげでここでの貴重な時間を味わうことができました。
その中でもとにかく記憶に残るのはやはりお湯の質です。
明らかに温泉という概念の外にある感覚です。
温浴効果ではなくその成分の刺激に意味があるのでしょう。
源泉100%の浴槽は38~39℃に設定されているとのことでした。
つまり体を温める感じではないわけです。
それでも上がったあとにのぼせたような気分になったりもします。
素直に不思議な体感でした。
地球はこんなものまで与えているのかと思いました。
谷 孝祐
2017.8.9 22:29