暑さで無闇矢鱈にむしゃくしゃしています。
一歩外に出るだけで気持ちいいくらい汗が滝のように流れ落ちます。
(私は決して汗っかきの体質ではありません。)
3時までバイトで午後家に帰ってくると、やらなければいけないことは山のようにあるにもかかわらず、
最低限の掃除と洗濯と洗い物と植木の水やりをしたら精根尽き果ててしまい、
集中力の要る仕事は何もできないことが自分自身で分かります。
こんな日は「IVAM」に涼みに行くしかありません。
「IVAM」とは・・・
水なし川の「芸術の橋」を越えた所にあるとてもモダンな美術館です。
バレンシア市がお金をつぎ込んで有名な建築家に依頼して作られた自慢の美術館です。
私は機嫌が悪いときや気分が乗らない時は必ず「IVAM」に行きます。
吹き抜けの3階建てで、9つのギャラリーに分かれているこの美術館は
贅沢な空間と完璧な空調と明るい雰囲気、洗練されたセレクションの本屋。
いつ行っても磨きぬかれてチリ一つ落ちていないカフェテリア。
そして常設展以外にいつでもコンスタントに3、4の人を楽しませてくれるような展覧会を催しています。
天井の高い物音ひとつしない静まりかえった空間でゆっくり絵を観ながら移動します。
その瞬間だけは世界の時間がピタリと止まったような錯覚に陥ります。
ついでに日曜日はタダです。
平日でもたった2ユーロです。
「IVAM」は私の心の友であり、秘密の隠れ家でもあります。
今日はこんな展覧会をしていました。
イグナチオ・ピナッソ。(1849年~1916年)
バレンシア生まれの画家です。
海の絵ばかりを描く画家で、系統でいうとモネやシスレーなどの流れをくんでいます。
150年前のバレンシアの海はこんなんだったんかぁ~。
警備員と私一人っきりの貸切状態の贅沢な空間で思う存分ピナッソを鑑賞させてもらいました。
海は150年前でも300年前でも大した変わりはないようです。
船は船、白い波は白い波、入道雲は入道雲、海岸に落ちている貝殻も同じだし、
暑い夏の日に人が水に浸かり喜んでいる様子も同じです。
唯一の凄まじい変貌は女性の服装。
150年前の女性は海に行くのにも首まであるレースの長袖のブラウスを着て、
広がったスカートを穿いてその下に股引、ロングブーツで完全装備。
ついでにレースの日傘をさして、
更に焼けてチンチンになっていると思われる岩の上に平気な顔をして腰掛けています。
これでもかっ!これでもかっ!これでもかっ!
ってかんじです。
いくら地球が温暖化とはいえ、
緯度が同じな限り1870年のバレンシアの夏も2006年のバレンシアの夏も
さほど違いはないと思うのです。
にもかかわらず・・・
この灼熱のボイラー室のような湿度80%のそれでも洗濯物は40分で乾く暑さの中、
150年前の女性は↑の衣装で
マザーテレサのような微笑を浮かべているのです・・・・。
もしもこれが私だったら・・・・
「ちっくしょー!なんなんだぁ!この暑さはっ!長袖ぇ~?股引ぃ~?ふざけんなっ!
やってられねぇ~!べらんめぇ~!」
と叫び散らしながらボタンを引きちぎり、チャックをむしり取り、衣装を剥ぎ取って、
パンツ一丁で海に向かって走り雄叫びを上げながらザブンと飛び込むことでしょう。
根性の入り方が違うんです。
150年前の女性は。
見習わなければいけません。
弱音は吐くな!
ミズエ
