静かな日曜日の朝。
明るい日差しに目が覚めると、気持ちのいい風がベッドを吹き抜けます。
今日も気温が上がりそうな7月の海の香りと共に。
私は寝ぼけ眼のままベッドの上で日曜日の朝を満喫し、気持ち良くまどろんでいました。
そこへそんな雰囲気をぶち壊すかのように携帯が甲高く鳴り響きます。
ロベルトです。
ロ・「ミズエ?寝てた?」
ミ・「うん、いや、起きかけてて、でもまだベッドでまどろんでる最中。」
ロ・「なに?取り込み中?」
ミ・「まどろみ中!」
ロ・「うへへへ~」
日曜日の朝っぱらからこの男は私に一体何の用があるのか?
ただ単に私へのいやがらせか?
ロベルトはのらりくらりと意味のないつまらないジョークを飛ばしながらなかなか本題に入ろうとしません。
ミ・「セニョール・ロベルト!ズバリ聞くけど一体用件は何?」
ロ・「・・・・・・・・・」
ロ・「ちょっとお願いがあってさ・・・」
そらきた!
そんな事だと思いました。
ミ・「だからなにっ?」
この後、恐るべき話を聞かされました。
食事中の方はこの先読み進めることをお勧めしません。
ロベルトの洗濯機が3月に壊れました。
壊れたまま放置され、かれこれ丸3ヶ月以上経っています。
はじめはお隣のゴルの家の洗濯機を使っていたのですが、
1ヶ月も経たないうちにゴルの洗濯機も後追い自殺のように壊れ二人揃って全滅しました。
ロベルトはメリに洗濯を頼んだり小さなものは掃除のオバちゃんが洗ってくれたりしてたようです。
(ちなみにゴルはサンティに迷惑をかけているようです。)
当初は洗濯機を修理すればいいだけの話だったのですが、
修理屋さんの意見によると洗濯機自体がもうかなり古いので
新しい洗濯機を買ったほうがいいとのことでした。
ところがタンゴ・イ・トゥルコもプルガも火の車だし、洗濯機どころの話じゃありません。
ここまでは私も聞いていました。
ところがロベルトの洗濯機が壊れた瞬間の話までは聞いていませんでした。
その悲劇の瞬間。
汚れて汗臭い衣服、3ヶ月替えていなかったシーツ、数ヶ月使い続けていたタオル、
臭いパンツに靴下、雑巾、カビの生えかけていた運動靴3足まで入ったまま洗濯機は停止したそうです。
無情にも水は満タンでシャボンは黒ずんで・・・。
その3ヶ月前の壊れた瞬間の状態のままかれこれ3ヶ月が過ぎ、この暑さに突入。
洗濯機はもうどうにもこうにも耐えなれないくらいの悪臭を放ち始めたそうです・・・。
洗濯機の中を外から見ると中は緑色で何が何だか分からない状態だそうです。
かつて布だったものはドロドロにとろけ原型を留めておらず、
満タンだった水もいつの間にか凝縮されたドブ色のヘドロの固まりとなり、
ぐちゃぐちゃとしたおどろおどろしい全面緑色の人類には理解の出来ない小宇宙が
ロベルトの洗濯機の中には拡がっているようです・・・。
ロベルトの「ちょっとお願い」とは・・・
それを一人で開ける勇気がないので私に一緒に開けてくれということなのです。
ミ・「うっ・・・・・・」
ロ・「怖くてとてもじゃないけど一人じゃ開けられないよぉ・・・。
一生のお願いなんだ!愛するミズエ!ただ黙って俺の側にいてくれるだけでいから!」
間違ってもこれは愛の告白でも何でもありません。
腐ったヘドロ洗濯機を一緒に開けてくれ、という告白です。
日曜の朝がぶち壊されました。
しかしまぁ、日頃お世話になっているロベルトの為です。
仕方ない・・・。
一肌脱ぎましょう。
来週心を強く持って防毒マスクを持って行ってくることにします。
ミズエ