【本書の感想】
「ボトルネック」という枠組みでの整理に目新しさはあるものの、書いてあること自体は小宮一慶氏の本と似通っている。但し、「この本を読む意味は乏しいか?」と言えば、そんなことはなく、「ボトルネック」という枠組みで、小宮さんの著作の内容を整理するという意味はあると思う。
難点を言えば、各種フレームワークを記載してはいるものの、紹介の域をでるものではなく、ボトルネックを解消するためのフレームワーク習得には適していないこと。
以下に、本書の要約を記す(読了日2009年5月3日)。
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「思考のボトルネックが、人生の限界をつくっている」。(はじめに)
ボトルネック:
ボトルネックがシステム全体のアウトプットを決める。(第一章)
→同一システム内では、ボトルネック以外でがんばってもムダ。(第一章)
「思考のボトルネック」:思考のアウトプットに限度を生じさせる「制約」(第一章)
①~③のいずれかが悪いだけで他に悪影響を与えるので、おのおのをバランスよく高める必要。
①「知識」のボトルネック:「情報」・「手法」・「技能」のボトルネック
→操作可能かつ習得可能で、ボトルネックとしての認識も容易なので、解消もしやすい。
②「選択」のボトルネック:「認識」・「選択」・「前提」のボトルネック
③「生/活力」のボトルネック:「健康」・「習慣」・「好奇心」のボトルネック
ボトルネックの改善
<物理的なボトルネック>(第一章)
①ボトルネックの特定
②ボトルネックの最大限の活用
③他のボトルネックへの同期
∵ボトルネック以外のリソースがボトルネックのリソース以上に働いた分はムダになるから
④ボトルネックの能力の引き上げ
⑤また①に戻る
<知識のボトルネック>(第六章)
①ボトルネックの特定
②情報がボトルネックの場合、手法を最大限利用
③技能がボトルネックの場合、技能を最大限利用
④ボトルネックの改善
⑤また①に戻る
「知識」のボトルネック:「情報」・「手法」・「技能」のボトルネック
○手法(method):
情報を扱う時の手順や枠組みの知識(第二章)
考えるスピードや質を上げるレバレッジ
○技能(skill):
情報と手法を実際に使いこなす技術(第二章)
「知っている」だけではなく、「できる」
知識のボトルネックを見つけるヒント(第六章)
○いつも言葉やデータを調べていて時間がかかる
→「情報」のボトルネック
○効率が悪い、ヌケ・モレがある
→「手法」のボトルネック
○せっかく知った情報や学んだ手法が身についていない
→「技能」のボトルネック
「知識」のボトルネックの改善方法(第二章):
劣っている領域の集中的強化
①~③のいずれかを伸ばせば、他のボトルネック要素を引き上げる働きもする
①情報:
少なくとも自分が活躍するフィールドとその関連分野では、効率的にやみくもに仕入れる
②手法:
やみくもに
フレームワークを獲得できれば、情報の取捨選択が容易になる(第六章)
③技能:
練習を重ね、実践力の不足を解消する
情報の生産性アップ(第三章):
○言葉と情報を持つ者は、力を手に入れることができる。
○但し、収集すべき情報の対象範囲を絞らないと、どんなに効率化しても、希少な時間とお金が浪費される(第三章)
→情報をどう増やすか?
①付加価値時間最大化と非付加価値時間最小化
②時間当たりの出来高(Output)最大化
付加価値時間最大化と非付加価値時間最小化(第三章):
ECRS
○Eliminate(なくせないか)
→最初に非付加価値作業をなくしてしまえば、その後、あれこれ考えなくてよくなる。
まず、意味の無いことはやめてしまう。
○Combine(いっしょにできないか)
非付加価値時間がなくせないならば、その時間に付加価値作業を行う
順次処理をやめて同時処理(マルチタスク化)にすることで、時間を創出する
→アウトソーシング:マルチタスクのタスクの担い手を他人にする
○Re-order(順番を変えられないか)
順番を変えると効率化することが、いろいろな場面に存在する
○Simplify(単純化できないか)
→二つの視点
○余計なことをそぎ落とし、単純化する
○標準化
形式を標準化しておいて、浮いた時間を考えることに使う
→エフェメラライゼーション:一回だけやって、後は自動化
何度もやらずに「いかに一度で済ませるか」
手法のボトルネックの解除方法(第四章):
①決め打ちのレバレッジ:切り口のフレームワーク
②発展するレバレッジ:思考プロセスのフレームワーク
決め打ちのレバレッジ(第四章):
目的に応じて多くのフレームワークを持っていると、速く、
○ヌケ・モレなく、全体論的に、(議論全体の網羅性)
○レベルをそろえて(議論のレベルが同じでないと議論が成り立たない)
考えられる。
※本書では「『決め打ちのレバレッジ』は」「片端から仕入れておくと、よい」と述べるのみで、個別のフレームワークの解説は無し。
発展するレバレッジ(第四章):
①ロジックツリー
考えていることを、順番に、思考の流れ沿って、「見える化」していく方法
②マインドマップ
③推論:演繹法・帰納法
④仮説思考
仮説を立て、その検証により、仮説の成否を確認すれば済むので、圧倒的に時間効率を上げることができる
仮説に基づき収集すべき情報や知識を限定すればよいので、情報の収集時間も大幅に短縮してくれる
⑤フェルミ推定
曖昧、または、制限された情報から、推定で答えを出していく手法
問題を、推定可能、または、取得可能な要素に分解し、見積もることがキモ
要素分解で調べるデータや事実が適切に切り出されるので、ムダな調査や思考を減らすことができる
※本書では個別のフレームワークについては簡潔な解説のみで、参考文献を挙げている。
MECE(第四章):
MECEで考える際に大事なのは、同じレベルで細分化して比較すること
→分類のレベルをそろえることは、議論のレベルをそろえること
スコーピング(第四章):
議論の対象となる「全体」を最初に定義する
→スコープが違えば結論が変わる。「全体とは何か、それは妥当か」を常に意識する必要
→スコープを設定しないとMECEの設定はできず、スコープを変えればMECEは成り立たなくなる
一度学んだ手法をそのまま後生大事にするのではなく、改良を加えながら進化させることが重要。(第四章)
技能のボトルネックの解除方法(第五章)
○答えは考えて生み出すもの。その効率・質を上げるには、手に入れた情報と手法をフル動員し、かつ、何度も情報と手法を使ってみること
○再現性のある情報と手法の操作法を身につけることが重要
→机上練習・実地練習
机上練習(第五章)
①「要素技術」である「手法」は、「一に練習、二に練習」
→フェルミ推定・ロジックツリー作りは十回もやればだいたいの勘所はつかめる
②要素技術を組み合わせて操作する訓練はシミュレーション
仮説を立てて複数のシナリオを想定し、検証
→プレゼンであれば、受け手がどんな点に興味を持ち、どんな点を質問するかを仮説で考え、検証する
③ケーススタディ
「知識」と「手法」を使って使って自分のものとする、お金と時間の投資に見合う学習法
実地練習(第五章)
○読んだだけでは情報や手法は身につかない。
○失敗からは逃げず、乗り越える。
①ゲーム
②ディベート
③ロールプレイング
→「本番」も「真剣なロールプレイング」と捉える
①新しい知識をどう組み合わせればわかりやすいか
②チームをどう説得するか
③自分は何に貢献できるか
④どうすれば作業中も仲良くできるか
を試して、学んでいく場と考える
④見よう見真似
「選択」というボトルネック(第七章):
「選択」がボトルネックになって、「知識」のボトルネックをいくら高めても、その努力が無駄になるおそれもある
○認識:自己認識、自身の置かれている環境の認識
→自己の能力を縛ったり、本来持っている力を押さえ込んだりする
○選択:自分の「居場所」やこれから「向かう先」を選ぶこと
→最も影響力を持つボトルネック。選択が人生を変えてしまう
→「認識」が低いとそれ相応の「選択」しかできない。低い「選択」をすることで、ますます自己の「認識」を低くするおそれも
○前提:常識や思い込み
→認識や選択を縛る力を持つ
○いったん自分の枠から離れて、上空の視点から自分を俯瞰する(第七章):
ステップ1:自分は何者で、今、何をしているのか(認識)
ステップ2:自分は何がしたいのか、何になりたいのか(選択)
ステップ3:それはできるのか、なれるのか(前提)
ステップ4:再びステップ1に戻り、認識を改める
「選択」のボトルネック(第七章):短期的・長期的の視点
○短期的視点
①「重要」と「緊急」の軸
②「好き」と「得意」の軸
③今いるところで真剣にがんばる軸
○長期的視点
①自分を「たな卸し」する
②未来を夢見る視点、未来から見る視点
「重要」と「緊急」の軸(第七章):
リソースに制約があるならば、「重要」と「緊急」で選択した上で、さらに最小の努力で最大効果を狙えることを選択する必要
第1象限:緊急でも重要でもない
第2象限:緊急だが重要ではない
→効率化・アウトソーシングを検討する
第3象限:緊急ではないが重要
→緊急でないためになおざりにされたり、先送りされたりするが、最も大切に扱うべき象限。
第4象限:緊急で重要
「好き」と「得意」の軸(第七章):
第1象限:嫌いで不得意
第2象限:好きだが不得意
第3象限:嫌いだが得意
→続けるか否か、よく考えるべき
→但し、嫌いの理由が単なる思い込み(「前提」化)の場合があることに留意
第4象限:好きで得意
自分を「たな卸し」する(第七章):
以下のような項目に区切って、自分は今まで何を達成してきたのか、今はどのような状況なのかを分析する:
①仕事
②家族
③人間関係
④健康
⑤趣味・ライフワーク
⑥財産
未来を夢見る視点、未来から見る視点(第七章):
現実の世界では、課題にぶつかった場合、全ての知的作業を行ったうえで、最終的には、決断、すなわち「選択」が必要
→その判断基準が、思い、志、ミッション、価値観
前提を見つける方法(第七章):
①前提を疑う
②コンフリクトを見つける
前提を疑う(第七章):
「なぜ、自分はこの行動に制限をつけるのか」という理由を観察し、考察を重ねる
→「なぜ、そうなのか?」「なぜそうなってはいけないのか?」を繰り返す
コンフリクトを見つける(第七章):
①考え方にコンフリクトを見つけて、
②コンフリクトを生んでいる「前提」を見つけ、
③その「前提」が正しいかを検証し、
④正しくなければ「書き換え」てしまう
健やかさを保つルール(第八章):
Simple-Small-Sustainableのルール
①Simple(単純)であれ:物事を複雑にしない
モノを多く持たず、高機能の家電は持たず、メンテに手間がかかるものは買わない
→わずらわしいものをできるだけ少なくする
②Small(小さく)あれ:できるだけ小規模のもの、顔が見えるものを選ぶ
③Sustainable(永続的)であれ:
そもそも、使用を減らそう