年末年始の帰省時期が近づいてきました。

 

私は子供の頃、お正月は少し遠方の祖父母宅で過ごしていましたが、毎年行くのが楽しみでした。

 

 

おばあちゃんの家に行くと、お年玉をもらっておもちゃ屋に繰り出したり、お菓子の詰め合わせが用意してあって、いとこ達と一緒に食べたり、私が工作好きだからと箱や厚紙を置いてくれていて、「秘密基地」や「ロボット」を作ったり・・・

 

子供の頃のいい思い出です。

 

大人になった現在、私は小児科医となって年末年始のうち何日かは病院で救急当番で、具合の悪くなった子どもたちを診察しています。

 

受診してくる患者さんの中には帰省中の子供がいて、普段とは違う環境ならではの病気や事故にあっているお子さんも多いです。

 

この記事では帰省時によくみられる体調不良をいくつかご紹介して、お孫さんが安全にすごすためにどんなことに気をつけていけばいいか考えていきます。

 

①    誤飲、誤嚥

子供の手の届くところに小さなものがあると、つい口に入れてしまうことがあります。

コイン、お薬、ボタン電池、殺虫剤、タバコなどが代表的です。

食べ物でもお餅はもちろんのこと、丸いミニトマトやブドウが気管につまることもあります。

 

 

お薬については、

大人のお薬を誤って飲んでしまうことや、お薬の包装シートは表面が尖っていて胃や腸を傷つけることもあり注意が必要です。

そのほか塗り薬を誤ってつけたり、のんだり、意外なものでは貼り薬もあります。

シールタイプのお薬は大人の容量ですから、子供にとっては過剰投与になるため、過去に鎮痛剤のシールを誤って貼ってしまい呼吸困難になった例がありました。

 

 

 

②    やけど

ストーブの金具の部分にふれてやけどする患者さんをしばしば見かけます。使用しないか、ガードをつけるなどで安全を確保してください。

 

お湯が出るポットも手の届かないところに置き、そのコードもひっかからないように注意が必要です。

 

タバコは誤飲だけでなくやけどの可能性もあり、煙によって喘息発作が起こることもあります。子供がいる環境ではとくに控えたほうがよいでしょう。

仏壇の周辺のろうそくやライター、マッチ、お線香もやけどや子供が遊ぶことによる火事の心配があります。

 

③    食物アレルギー

昔は食べ物ののアレルギーで具合が悪くなるお子さんは少なかったようですが、現在食物アレルギーをもつ子供はとても増えています。

つい、ボーロやチョコレートなどを食べさせたくなることがあると思いますが、食べることでアレルギー症状がでて救急車で運ばれたり、最悪死に至ることもあります。

 

「食べられる」か「食べられない」か、必ず先にご確認ください。

 

離乳食にと初めて食べさせた茶碗蒸しで、卵アレルギーの症状が出て救急搬送されるようなことが、何度も起こっています。

 

④    喘息

お泊りをする場合、来客用のお布団を久しぶりに使うことがあるかと思います。

久しぶりに使用するお布団にはダニやホコリが増えてますのでそれらを吸いこんで喘息症状が出て呼吸困難が起こることがあります。

お泊りの前に掃除や換気をしたほうがいいでしょう。

綺麗な布団をレンタルするという方法もあります。

 

⑤    その他不慮の事故

 

お風呂に水がはってあり、おぼれる

花瓶が落ちてきて頭をうつ

階段や段差から落下する

ペットに赤ちゃんがか噛みつかれる

など

 

 

いつもと違う環境では思いもよらぬ事故が起こります。そして、親戚がたくさん集まることで「たくさん人がいるから大丈夫」という安心感が逆に落とし穴となって、目がいきとどかないこともあります。

 

小児科で救急当番している身からしますと、年末年始は意外な事故が起こりやすい時期といえますので、子供の安全に配慮したちょっとした工夫、注意を向けていただければと思います。

 

 

私自身はどうかと言うと、救急当番でない日に子供たち二人をつれて帰省しています。

 

実家では、子供用のガードがない石油ストーブでやけどしそうになったり、祖母のお薬を口に入れそうになったりとヒヤヒヤする場面がこれまでにもありました。

 

そんな場面に出あうたび、「ああ、自分が小さい頃の帰省は親も大変だったろうな」と思います。

 

私自身は幸い年末年始にそういった事故にあわずにすんだので悪い思い出はありません。

年月がたって、おばあちゃんの家で工作遊びをしたあの時が楽しい思い出となっているのは、私が誤ってケガをしないように大人が色々と気をつけてくれていたからなのかな。。。と思いを巡らせ温かな気持ちになります。

 

事故が起こるか起きないかは紙一重でちょっとした工夫や注意で防ぐことができます。

皆様が年末年始を安心安全に過ごせますよう、そしてお孫さん(ひ孫さん)が大人になってから“いつかの帰省”を温かな気持ちで思い出す日が来ることを願っています。

 

 

※さらなる事故の具体例はこちらにも詳しく記載されています。

http://www.pref.aichi.jp/kosodate/hagumin/growing/age.html