明日 あさって シアサッテ -2ページ目

明日 あさって シアサッテ

焦らない 無理しない 立ち止まらない

Stage5 旭川永山~美深温泉 100km 
3時スタート節度時間22時

 中〆は、豪華な食事で大満足だった。ここまでの夕食はコンビニ弁当かカップラーメンだったので、豪華な料理で3杯お代わりした。一杯目はぎゅうぎゅうに詰めたマンガ飯だったので実質4杯か5杯分食べたか?


久しぶりのまともな食事


 1週間前から禁酒しているので、ビールは飲まなかった。飲んでいるランナーも大勢いた。ウルトラランナーには飲みながら走るランナーも多いが、肝臓の負担を考えて、すべてが終わってから飲むようにしている。


 次の日は、100キロの長丁場とあってスタートも3時。1時40分に起床して準備を始める。
 ふと気づくと、隣の部屋のアラームが鳴りやまない。起きれないのだろうか?もう起きないのか?と思っているとアラームが止まった。
 やっと起きたと思ったのだが、あとで聞いたらアラームのリピートが終わっただけで寝坊したようだ。
 結局、この日は10キロ過ぎでリタイヤしたらしい。ここまで、時間内完走を続けていただけに惜しかったが、疲労がたまっていたのだろう。


疲れて眠くて進むしかなくて…



 3時と暗い中のスタート、夜の旭川の街をヘッドライトを点けた集団が歩いていく。
 1時間もしないうちに明るくなってくる。ヘッドライトを外し、涼しい早朝の空気の中を前へ進む。
 この時間帯に距離を稼がなければ、昼間は暑くてペースが落ちるはずだ。

 比布駅を過ぎ、宗谷本線粗衣の細い道を進む。塩狩峠を上る頃には、日が出てきてやはり暑い一日になりそうだ。

 峠を下り切ったところに有るCPが無いようだ。何人かが探しているが私は無視して進む。CPで無駄な時間を使っている暇はない。
 道を間違えているわけではないので、CPを取りはぐれても問題は無い。それよりも少しでも早くゴールに近づくことだ。
 しばらくすると、全体LINEにCPが無くなっているようだという告知が入っていた。
 まあ、こういう事もトランスエゾあるあるだ。


稚内まで200キロを切った

近いの?遠いの?


 しかし、暑くなってきた。まだ朝の8時過ぎだが日が出てきたので、直射日光が容赦なく身体を焼く。
 短パンとゲーターで走っているので、膝の部分がむき出しになっている。北に向けて走っているため太陽は後ろから照り付け、膝の後ろは火傷したように日焼けしている。

 あまりの暑さにコンビニが有ると入ってアイスを食べるので、ペースが上がらない。
 設定時速が5.26kmなので、かろうじて上回っているが余裕はない。少しでもロスしたらあっという間に借金生活だ。
 疲労の蓄積したこの足で、ペースを上げて借金を返済する自信はない。

 まあ、このペースを刻んで行けば何とかなるということだし、日が落ちて涼しくなれば楽になるはずだ。


あ あづい…


 今日のコースは、風連を通り過ぎる。この先エスケープの手段がなくなる。
 残り40キロ弱進むのか?止めるのか?決めるのは今しかない。
 暑さにやられ、ふらつく足で転ばないように路面を見ながら進む。

 少し涼しくなってきたかな?
 このままいけば何とかなるかな?
 足はあと40キロ持つのかな?もし、止まったら節度時間に間に合わない。

 などと考えていたら、曲がるべきところを直進していた。
 痛恨のロスト!往復で1キロ強無駄にした。
 元に戻る間に心が折れた。

 明日からの残り2日をしっかり完走するために、足のダメージを最小限にしておこう。
 ここで、突っ込んで足が止まったら、確実に節度時間をオーバーし、完走もできず、足のダメージも大きくなる。
 ここで、完走するには走力もスタミナも脚力もまだまだ足りない。
 これは言い訳なのか?冷静な判断なのか?

 今考えると
 行けたんじゃねーの?あそこで無理せず、どこで無理するの?あそこで止めてたら完走なんて夢のまた夢だよ
 と思わないでもない。

 しかし、あの時の自分はそう判断した。
 足の痛み、モチベーション、残り時間。色々考えて止める判断をした。

 風連駅で30分待ってバスで名寄駅に行き、1時間半待ってバスに乗ってゴールのびふか温泉にたどり着いたのは、19時半過ぎだった。


 風呂で汗を流し、洗濯をして、風連のコンビニで買ってきたカップ麺で夕食を済ます。
 ストレッチして、アイシングをしていると節度時間の22時が近づいてきた。
 ゴールゲートの設営された玄関前で、完走者を出迎えるためにみんなが集まる。
 最終完走者は3人。私がリタイヤした時点では、後ろにいた3人だ。
 諦めずに前に進み続け、時間内にゴールにたどり着こうとしている。

 ギリギリになるという連絡だったが、10分前にふらふらと歩いてゴールに現れた。
 拍手に応える余裕も残っていない、足取りもおぼつかない。

 そこにあるのは、ホッとした表情?嬉しそうな顔?やり切った感?
 そのどれでも無い。そして、その全てを包含した表情が疲れ切ったその顔にはあった。

 本当に感動した。なんだか涙がこぼれそうだった。

 人ってこんなに頑張れるんだ。


全てを出し切って余力も無い


Stage4 富良野~旭川永山 67.3km 
5時スタート節度時間17時50分

 昨日は途中でリタイヤとなってしまった。
 でも、節度時間にゴールの宿に居ることができたので問題はない。
 トランスエゾで一番大事なのは時間を守ることだ。
 ゴールの節度時間、スタート時間、ミーティング時間、遅れれば参加しているランナー、スタッフ全員の時間が遅れる。
 自分の足でゴールすることよりも節度時間にゴールに居ることが大切なのだ。

 今日は富良野・美瑛の丘をめぐる景色を楽しめるステージだ。
 距離は短く、設定時速も5.24kmと一番遅い。

 短いので楽そうだが、ロストをすると命取りになりかねない。
 そして、丘をめぐるということはアップダウンの連続ということで、距離が短い事も相まってあまり景色を見て楽しんでいる余裕はない。
 油断すると時間内完走がなくなり、連敗となってしまう。
 今のところ2勝1敗なので、勝ち越しているが今日失敗すると、明日は100kmの日なので3連敗で負け越しなんてことになりかねない。

 今日から3人リトルエゾの人が加わり、にぎやかになる。
 ゴールの旭川永山の宿では夕食が出て、to宗谷の中〆がある。
 気分良く中〆に参加するためにも、何としても完走したい。

 平坦な道を抜け、河川敷の砂利道を抜けると、アップダウンが始まる。


歩くしかない坂


 景色は良い、癒される。オートバイや車で走っていれば、どれほど幸せだったろうか。
 しかし、自分の足で走りあるいは歩かなければならない。自分で選んだ旅の手段だ。その達成感や充足感は何物にも代え難い。
 しかし、苦しくつらい。。。。

 曇り空で涼しいと思っていると、雨が降り出した。ザックカバーだけ着けて、雨に降られたまま進む。荷物さえ濡れなければ、雨は歓迎だ。
 風も台風のような暴風でない限り、体感気温を下げてくれるので大歓迎。
 無風状態の雲一つない晴れ、これほど嫌なものは無い。


雨の後は走りやすい


 雨はすぐに止み、絶景の丘の上で集合写真を撮るというが、せっかく雨で涼しくなったこの時間帯に距離を稼がなければ勿体ないので、一人パスして先に進ませてもらった。

 まあ、ここは来たことがあるし写真を撮るよりも大事なことがある。


花とオジサンとソフトクリーム


 暑くなってくる、かんのファームでソフトクリームを食べて体の中から冷却する。
 日が出てきてさらに暑くなったところで、新田農園さんに到着。
 好意でエゾラーのためにエイドを開設してくださっている。
 スイカ、じゃがバタ、野菜の天ぷら、トウモロコシ、おにぎり、、、食べ切れない量のご馳走。
呼びかけ人が写真を撮ろうと呼びかけるが、だれも席を立とうとしない。
 写真を撮るよりも大事なことがある。


今回食べたもので一番美味かった


 根が生えそうなところを無理やり引き抜いて、リスタートする。このままここに居ても良かった。

 まだ、距離と時間に余裕はあるがこの先もアップダウンが続く。油断してはいけない。
 丘を越え、下りが始まる。下界に降りると熱気に包まれている。

 旭川空港の横を抜けて、炎天下の舗装路を進み、コンビニでアイスを食べ身体を中から冷やす。
 15時を過ぎると日も傾き、楽になってくる。

 残り距離からすれば時間に余裕があるが、旭川の市街地にゴールの宿があるので信号が多くなる。最後は余裕を持って歩きたいので、走りと歩きを繰り返しながら進み続ける。

 ゴール1.8km手前の最終CPに30分前に到着する。4~5人のグループになっていた。
 さすがにもう大丈夫だ。ゆっくりと歩いてゴールの宿を目指す。
 しかそ、歩いているとなかなか前へ進まずイライラする。
スマホのマップで確認しながら、「400m来た」「1㎞切った」「あと500m」など気を紛らわせて前に進む。
 やっと、ゴールの宿が見えてくる。明日から参加するリトルエゾの人たちも含めて大勢の人が出迎えてくれた。
トランスエゾ to宗谷 Stage3十勝清水~富良野 87.7km 4時スタート節度時間20:00

 いよいよ3日目だ。
 エントリーして3日目が前半のヤマになると考えていた。
 諸先輩方の話やブログなどから3日目を乗り切れば身体が慣れてきて、ジャーニーランを走る身体に切り替わるようだ。
 2日目は初日の疲労は有るが何とか乗り切れる。疲労の抜けない身体に2日目の疲労が上乗せされ、3日目は非常につらい。ここからがジャーニーランの始まりと言っても良い。

 そして、3日目は狩勝峠がある。標高差約500mを約10kmで上る。その後短いが勾配キツめの樹海峠もある。

 ここを乗り切れば、4日目は距離も短く、富良野・美瑛の美しい景色を見ながらのランだ。

 夜降り続いた雨もスタート前に小降りとなり、涼しい中のスタートとなった。
 カッパを着てスタートしたが、雨も止み暑くなってきたので脱ぐ。ザックカバーは着けたままにした。
 2kmも行かないうちに雨が降り出し豪雨になる。カッパを着る場所も無いのでそのまま走り出す。


雨の中CPで自撮り


 雨はいずれ止む予報なので、シャワーランで身体が冷えて走りやすい。
 調子良く進んでるといつの間にか一番前にいたようだ。

 雨が止み、旧狩勝線の廃線跡に入る。雨上がりの未舗装の道は、ぬかるんで滑るので大変だった。ようやく廃線跡を抜けたところにCPがある。あるはずなのに見つからない。。。CPを探してかなりロスしてしまう。

 気を取り直して、狩勝峠の上りに入る。
 距離は長いが斜度は大したことは無いので、走りと歩きを繰り返し、2時間かけて頂上にたどり着いた。


狩勝峠登ったど〜


 頂上のボランティアエイドでしばし休憩し、下りに入る。

 下りは楽だがここで調子に乗ると足を削られて、動かなくなる。慎重に足のダメージを極力減らして下る。
 やがて道は平坦になり、集落を抜けた先にミーティングで分かり難いと言われたCPがある。
 注意していたはずなのに暑くてボーっとしていたのと、下を見て淡々と進んでいたので見逃してしまった。
 2km近く行きすぎたところで、気づいて後ろから来たランナーと探しに戻りようやく見つける。
 往復で4キロはロスした。

 良いペースで来ていたが4キロ近くのロスはやばい。かなり頑張ってもぎりぎりのペースだ。体力的にきつい3日目の中盤でこのミスは本当に痛かった。精神的にキツかった。
 でも、残り45.6kmを7時間48分なので、時速5.8km。まだ、間に合わない距離と時間ではない。

 時間も昼の12時過ぎなのであきらめるには早過ぎる。

 幾寅駅の近くのセイコーマートで補給して、樹海峠に向かう。
 この樹海峠がキツカッタ~
 暑さと斜度で歩きたいが間に合わないので、歩きと走りを繰り返し何とか上っていると、反対車線の車から名前を呼ばれる。  えっ?誰?

 車から降りて来たのは、旅友のKさん夫妻だ。
 もうすこし時間に余裕があれば、ゆっくりと話もできたのだが一緒に写真を撮って先を急がせて貰う。


元気を貰いました!


 しかし、人間の心、気持ちは不思議だ。あれほど疲れ、希望を失いかけていたのに急に力が湧いてきて、楽しくなってきた。
 顔を見て少しだけ話して、エールを送られた。それだけで、勇気百倍!元気千倍!
 足取り強く、上を目指す。

 樹海峠を下り、残り30kmで5時間 時速6k。
 どんどん借金が溜まっていくのにペースは上がらない。疲労の蓄積で足が動かなくなってきた。
 でも、まだ諦めたくはない。

 この状態で時速6キロで5時間動き続けるのは辛い。でもやるしかない。
 前へ進み続けなければ、、、

 そして、最後から3つ目のCPを見逃してしまう。
 気づいて戻る途中で、先ほど一緒にCPを取りに戻ったランナーが力強い足取りで走ってくる。「まだ間に合う。頑張ろう」とエールを交換する。
 1キロほど戻ってCPを回収する。
 そして、ここで事実上の終戦だった。すでに間に合う距離と時間と足ではなかった。

 3回のCPロストと5km以上の距離のロス。3日目で疲労の峠を迎えていた身体に跳ね返す力と気力は残っていなかった。


夕焼けが心に沁みる


 トランスエゾを完走する力は、まだ無いということだ。

 でも、明日がある。
 トランスエゾは、完走できなくても翌日からはオープン参加という形で走り続けられる。