土づくり技術 ⑥。 | 土壌菌の素顔 Ⅱ

土壌菌の素顔 Ⅱ

「土」は岩石の風化物などではない。「土」は有機物から生まれている。
「論より証拠」、自然界の有機物は腐敗などしていない。

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「土づくり技術」についてこれまでに述べたことをまとめて最後とします。

「土づくり」とは、「腐植前駆物質水溶液リードアップ」を田畑土壌に散布するだけでいい、と当初申し上げました。
イラストにもまとめていますが、
①まずは土壌中の土壌細菌をはじめとする土壌微生物を活性化させる(土壌生物性の改善)
②次に土壌微生物の活性化で田畑土壌中に「腐植前駆物質」が生成される
③各農法ごとに
・慣行農法では、「腐植前駆物質」が化学肥料、農薬、ホルモン剤の代わりを果たすようになる
・有機農法では、田畑に投入する堆肥を、より「腐植前駆物質」に近づけることで本来の目的である有機物を利用した農法が達成されるようになる
・自然農法では、田畑土壌がこれまでに受けたダメージをリセットして「0」地点に戻すことで「腐植前駆物質」が生成されるようになり、生産性を上げるための「時間」を短縮することができるようになる

要は、どの農法であろうとも田畑土壌中の土壌微生物にいかにダメージを与えることなく、腐植前駆物質の生成を継続させるか!ということです。


このように「腐植前駆物質」をキーワードに農産物生産手段をまとめることができますが、実は「腐植前駆物質」はこれだけに止まりません。これからが「土づくり技術」で皆さんに一番お話したかったことなのです。それは農産物の品質、中身の問題です。

これまでこの「中身」について注目が集まったことはあまりありません。これまでの農産物は「中身」ではなく「見た目」で評価され、形や大きさ、きれいさ、鮮度でモノの良しあしが決められていました。しかし、「中身」をものの形や大きさで評価するとはナンセンスです。加えて生産手段である「農法」で「中身」を評価することもナンセンスです。

有機農法のところでも申し上げましたが、今の有機農法の生産物は「傷み易い、腐りやすい」とよく言われます。しかし、「腐植前駆物質水溶液リードアップ」を用いて土壌生物性の改善が図られた田畑土壌の生産物は鮮度をいつまでも保持することができます。極端な例では「腐敗することなく枯れて」しまいます。この違いが何に起因するかを調べていてたどり着いたのが「抗酸化能」という言葉でした。

「抗酸化能」。誤解を恐れずにご説明すると、酸化されにくい、腐敗しにくい、ということができます。ただ、作物(植物)はもともと抗酸化能を持っています。なぜなら、太陽光の紫外線ダメージに打ち勝ち、力強く自然を生き抜くためにです。



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(東京理科大学 矢島研究室調べ)

このように、すでに抗酸化能を測定し品質確認の在り方を模索しています。詳細は次の機会へ譲りますが、これまでに分かってきたことは腐りやすい農産物はもちろん低い抗酸化力しかなく、化学肥料や農薬、未熟有機物などの影響を受けた農産物の抗酸化力も押しなべて「低い」という傾向が把握できています。
敢えて、上記の測定結果の詳細は申し上げません。それぞれに違いがあるようですから何かが違うということです。これからはこの結果を数値化します。この数値をもとに「中身」を決める方法もひとつの在り方ではないか、消費者の方に判断材料としてご提供するのもひとつではないか、と考えています。

これまで農産物は当然のごとく「安全」「安心」を求められてきました。安全=どの国で、誰が生産したものなのか? 安心=どのような方法で生産されたものなのか?しかし、私はこの安全安心は、食べてもいいものかどうかの判断材料でしかないと思っています。これからは「抗酸化能」を数値化して表示し、抗酸化能の高い「健康創造農産物」を提供する時代が来ると思っています。

この「抗酸化能」は、生産された農産物においては、「鮮度」を表しますが、これを食する側のヒトにおいては、健康をサポートしてくれる貴重な力であり、機能です。その意味は食事や運動、喫煙、投薬治療などで生成される「活性酸素種、フリーラジカル」を消去する能力を高く持っているとされ、「活性酸素種、フリーラジカル」とは、老化、生活習慣病などの原因物質といわれています。

「食」は上薬、「医」は下薬。食[事]は医[療]に勝る、と考えています。これからますます高齢化社会を迎える日本。その日本の否、世界の明日を明るくするためにも生きる基礎となる「食」を、食を生み出す「農」をおおもとから考え直す時が来ているように思えてなりません。

長い間お付き合い頂きまして、誠に有難うございました。