12日に4月歌舞伎座夜の部に行った。感想をまとめたい。まず、仁左衛門玉三郎の鬼門の喜兵衛はまずまずの出来だった。嫁菜売りと髪結いの話を聞くともなく、煙草を飲みながら聞いていて強請を思いつく具合などうまいもの。ただ、玉三郎のお六が奥に引っ込んで残った仁左衛門の喜兵衛が早桶に入ってて仮死状態の丁稚の前髪を剃るときに早桶を蹴っ飛ばし足をかけて砥石で歯を研ぐところは足元やや不安だった。油屋内になり、喜兵衛とお六が死人を担ぎこんでのゆすりの場面は番頭と丁稚の演技がいまいちだったので盛り上がらなかった。ただ、引っ込みは仁左衛門玉三郎がワルなのに、籠を担いで花道を入るところがおかしさもあり、良かった。

続くお祭りは、これはもう踊りではない。仁左衛門玉三郎二人の濃厚な色気を楽しむ場面になっている。実際、仁左衛門玉三郎が頬を寄せるところで客席からジワが来た。その後、花道の引っ込みまで二人の愛嬌で客席が湧くものだった。

次の九条武子作の四季という踊りは、もう内容もない、どうして天下の歌舞伎座でこの踊りを出したかというものだった。まず、春は弥生雛の趣向だが、菊之助の女雛、愛之助の男雛とも、鬘が冠付きで下はどうしたって十二単や狩衣となるところ、なぜか普通の着物で金色の帯だけ幅が広く大きくてアンバランスだった。また、夏の都の舞妓の中村児太郎の鬘がおかしかった。舞台で一通り舞妓や若衆、太鼓持ちが踊ったのちに花道に明かりがついたので今更だれたと思ったら、亭主役の芝翫が登場した。さして踊りが得意ではない芝翫にこういう場を与えるのもおかしい。秋は孝太郎の妻が砧を打つというものだが、衣装が流星の織姫のような中国風の衣装で違和感があった。最後がミミズクで、松緑が主になっての踊りだがこれもさしたるものではない。一点、左近の女形が綺麗だった。とにかく普通の舞踊公演でもこんなに単調なのはない。四季とあり、衣装や役者は変わるけど踊りはみな手踊りで代わり映えがしない。多分、仁左衛門の体調をおもkうばかって南北の世話物を第一幕に持ってきたのであとは踊りくらいとなったろうが、何も決まったものではなくて二番目に変則で時代物を持ってくれば良かったのでは?例えば芝翫の「森綱陣屋」とか菊之助の「熊谷陣屋」を持ってくれば良かったと思う。菊之助、松緑、芝翫、愛之助と顔が揃ったのにもったいない使い方だと思う。