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　桜庭和志が「プロレスラーは強いんです」と語ったUFC JAPANから15年を経て（その後2000年までに3大会を開催しているので日本での開催は12年ぶり）再上陸したUFC。

　思えば、NY時代、一本の電話からそれを知った。現在事務所をシェアするKobayashi氏が「今、Ultimate Fightingっていうイベントの仕事してんだけど知ってる？　なんでも、喧嘩自慢を金網の中で戦わせるらしいんだけど」と。「プロレスじゃないの？出場者の名前分かります？」と聞くと「え～っと、ジェラルド・ゴルドー？」「へ？」「ロイス・グレイシー、グレイシー・ジュウジツって聞いた事ある？」「何か忍術みたいなもんかな」「それと、ケン・シャムロック」「ウェイン・シャムロックなら知ってるけど」「あ、ケン・ウェイン・シャムロックって書いてある」とプロレスなのか、何なのか分からないまま行われたのがコロラド州デンバーで行われたUFC 1。そこで優勝したのがホイス・グレイシー。当時からNYにはJIU-JITSUと記された看板はあった。KARATEは最もメジャーで、JIU-JITSUと記された看板には並列してNIN-JITSU、KUNG-FUと記されてあったため、怪しさ満点だった。もちろん、そのJIU-JITSUがGRACIE JIU-JITSUだったかどうかは分からないが、ヘンゾがNYで道場を開いたのはUFCが始まってから数年後だったので、おそらくGRACIE系ではないと推測（=BRAZILIAN JIU-JITSUではない）。

　UFCは「路上の喧嘩」「死人が出る」「バイオレンス過ぎる」等の理由で開催出来る州が限られていた。アメリカは土地が広く、イベントを開催しても現場で観戦出来る人は限られている。TVが地上波ではなくケーブルが発達した理由もここにあり、PPVというシステムは「優良なコンテンツは有料でも観る」というカルチャーを作り上げた。素手では危険なため、オープンフィンガーグローブが導入され階級制にしても、UFCはあまりにも危険すぎるということでPPVも伸び悩んでいた。開催地も限られ、コンテンツとしても体力を失い、2001年にズッファが買収。ここからUFCがオフィシャルルールを制定し、ズッファがラスベガスでカジノを経営していたことから、ラスベガスでの興行が始まった。2005年にTUFが始まると、UFCが全米でブレイク。ここからUFCの快進撃が始まる。PPVの数字がハネ上がり、ゲート収入も好調。WECを買収し、PRIDEの権利を得たことで選手層も広がり、事実上MMAのメジャーリーグと化した。

　UFCのトップに君臨する選手達は選ばれし者であり、そこを目指す選手層も厚い。メガジムが乱立し、全ての練習が一カ所で出来る環境があり、競技人口が多いため、どの階級であっても様々なタイプの練習相手に事欠かない。

再上陸したUFCはアメリカのそのままを持って来ていた。UFC113を観戦した時のとてつもなく解像度の高い、オクタゴンよりデカいサイズのモニターは上陸していなかったものの、開会式などはなく、各試合前のVTRも過剰な演出もない。オクタゴンにはインタビューアーとラウンド間を彩るオクタゴン・ガールズ、選手をコールするブルース・バッファと試合を見つめるロレンツォ・フェティータとデイナ・ホワイト、そしてGSP等のファイターがオクタゴンで繰り広げられる事実を観戦。アメリカのスポーツ・ショーそのもの。選手の名前の下にはTwitterアカウントが記されていたのも興味深い。日本では格闘技はスポーツ・エンターテインメント色が強いが、UFCの選手からはアスリートのニオいが感じられる事が多い。どちらが良いとか、どちらが好きだということではなく。

現時点で、MMAの究極の戦場がUFCであることは事実。技術や戦略だけでなくフィジカルやスタミナも最高のモノを身につけていないと、オクタゴンに上がることさえも難しい。
　
　「Ultimate（アルティメット）」と呼ばれていた野蛮な闘いが、「UFC」というMMAの究極のスポーツとなった。