回復期リハビリテーション病院に勤務して2か月が経ちました。手術から引退した淋しさはやはり感じていますが、自分はこの回復期リハビリテーション勤務を決してやりがいがない仕事とは思っていません。急性期病院の外来で手術をした方がいい患者さんに出会った時の高揚感、手術室での緊張感、手術でよくなった患者さんを診る時の達成感などは言うまでもありませんが、回復期リハビリではリハビリテーション・スタッフによって患者さんが文字通り回復してくる姿を見る喜びがあります。毎日の仕事は入院している受け持ち患者の回診は朝の30分ぐらいで終わってしまい、午前中に2時間ぐらいかけて電子カルテの入力や書類作成、昼食と昼休み(読書と昼寝)が1-2時間あって、午後はカンファレンス(リハビリスタッフや看護師、ソーシャルワーカーなどと患者さんの検討会)や患者家族への説明、それらの合間にはパソコンでSNS閲覧・投稿、ブログや論文を書いたりしています。この調子で週4日の勤務はすぐに終わります。週1日の非常勤勤務先がなかなか決まらず、土曜日に知り合いの脳外科医のクリニックの手伝いに行っていた関係で、土曜日仕事の日が多くなっていますが、やはり平日の仕事が楽なのでそれ程苦にはなりません。

 

 回復期リハビリ病棟へは前述しましたように患者様は外来から入院することができず、必ず急性期病院からの転院の形で入院して来ます。このため、前医からの診療情報提供書と言われる紹介状は患者が来る前に来ます。4年前に勤務していた回復期病院でも10年前に担当していた回復期病棟でも同じでしたが、この診療情報提供書は非常にいい加減に書かれているものが多いと感じます。医者がこの書類を書くことに力を入れていないことがはっきりわかる貧弱な内容のものがほとんどです。あるいは大分前に書かれたもので、良くも悪くも実際に入院してきた患者の状態が診療情報提供書と全然違うこともしばしばあります。最初に急性期病院からFAXで送られてくる書類と実際に患者さんが入院してくる時に持ってくる書類は、看護師さんのサマリー(要約)に関しては必ずアップデートされていますが、医者の診療情報提供書は何週間か前のFAXと全く同じであることがほとんどです。患者さんの容態は回復期リハビリの時期よりもむしろ急性期の方がより回復するものです。

 

 また、患者さんの状態が原疾患で悪化した場合にも、必ずしもすぐに紹介元の病院で引き取ってくれるとは限りません。おそらくは紹介元の急性期病院の脳外科医より私の方が経験豊富です。その場合、急性期施設での処置が必要であることは間違えないと思います。それでも急性期病院の医者は回復期病院を軽く見ているとしか思えない言動が目につきます。前に勤務した回復期では、慢性硬膜下血腫が増大して手術になる可能性のある患者を紹介元に引き取ってもらおうと電話したところ、「こちらで何をしろというのですか」と若い脳外科医に逆切れされたことがありました。この時には、「やはり急性期病院に戻ろう」と決心したものでした。

 

 確かに回復期は急性期から紹介してもらうしか患者を入院させる手段がなく、急性期病院に対して下手に出ざるを得ないということがあります。一方で回復期に転院してくる患者やその家族は、急性期病院の対応や手術などの治療結果に不満を持っている場合が意外に多いことに驚きました。自分自身は手術や術後管理で苦労した患者さんが回復期に転院してくれてほっとした経験が数多くあり、また、あまりいい状態でなく回復期に行った患者が退院して、外来に来た時に見違えるように回復していて驚いたことが何度もありました。自分自身はそのように回復期にはずっと感謝の気持ちを持っており、2年間医療系大学の作業療法学科の教員をしていた時も、現在の回復期専従勤務もこれまでの恩返しと思ってやっています。急性期病院の医者がどうして回復期に対して私のような感謝の気持ちを持てないのか不思議でなりません。

 

 現在の病院では、「脳神経外科」ではなく「リハビリテーション科」の所属になっています。やはり自分には診療科の中でも最も難しいと言われている脳外科の専門医試験に合格したという自負があり、自分では「リハビリテーション科・脳神経外科」と併記するようにしています。繰り返しになりますが、決して回復期病棟勤務を不満に思っているわけではありませんが、やはり自分が執刀しなくても手術室に入りたい気持ちは捨てきれません。せめて専門の術中モニタリングを通じて手術のお手伝いをしたいと思っています。回復期病棟に勤務しながら手術室にも顔を出せるような環境があればそちらに行きたい気持ちはありますが、自分で執刀もしないのにそんなことを望んではいけないものかも知れません。