死して生きるという、生きるの一択で人生を勝負する新武士道であるが、このようなことが可能なのも日本の特徴であろう。一本道という部分に老子的な部分も盛り込まれており、一本道という「道」に形而上の原理を求める方法論をも導き出されることに注目されたい。


さて、これまでは日本における女性の社会進出について言及してきた。その根拠にジェンダーレス社会を援用した。要は、日本においてはジェンダーレス社会の定義より先に、女性の社会進出が実現しつつあることを力説してきたことになる。


例えば、路線バスの運転士不足の問題を取り上げてみると、バスの運転士になりたい女性は実際には多い。そこに歯止めをかけていた各種の事業者があり、ここが問題であった。最近は女性の運転士は増えてきているが、それでも足りなのはなぜかといえば、普通のトラックに流れていることも大きな要因であろう。


これも現場に入ればよく分かるが、実際のところ大型免許を持っている女性ドライバーがトラックに対してどのような思いを持っているかを、実際の現場でヒアリングする小手先の調査ではなく、彼女たちと一緒にトラックを運転し、仕事を共有しながらヒアリングをしてみると驚くべきことを耳にする。それは何かといえば、牽引車を運転したいという声を多く聞く。路線バスでいえば2連結バスであり、トラックでいえばトレーラーである。大型免許とは別に牽引免許も必要となり、技術的にもっとも難しいとされる分野で活躍したいとする女性がどれほど多いかに驚かされる。


こうしてこれまでは男性のフィールドとされていた分野に女性が志願することにより進出してきているため、競争率が上がってきている。こうなると男性の立場は益々小さくなる。


さて、では男性も頑張って女性と共に切磋琢磨しなければならないが、そうならないからジェンダーレス社会が成り立たないのである。よって、ジェンダーレス社会でのアンバランスは、男性が劣勢であるからではなかろうかというのが私の仮説である。よって、一般的な理論とは逆となっている事に注意されたい。


ではなぜこのような現象になっているかであるが、現代の男性は分化に徹している傾向にあるからである。つまり、教育に力を入れた結果、頭しか使おうとしない男性が増えてきていることが原因であろうと思われる。


最近の国公立大学における大学院への進学率の高さを見ても分かるように、知識を蓄えることに貪欲な学生が多いのは良いことだと思う。ここでの学生は男女が混合されているが、大学院の修了後に男女で違いがでてくる。女性は学位を取得後、それを活用させようとする人がほとんどであることが特徴である。上述の2連結バスを運転したいと言っていたのは、某難関国立大学の博士号を取得していた女性である。このような女性が実際に多いのである。


ところが男性はどうなるかといえば、儲かりもしない学術研究に意欲を燃やし続け、そしてほとんどの人はそのまま夢敗れる。場合によっては破産申請する人も多いのが現実である。その人達が2連結バスやトレーラーの運転士になりたいと思っても、既に女性に市場を奪われているか、そもそも資金不足で運転免許の取得すら不可能な状態に陥っているのがオチである。


これを学術的に吟味するとどうなるかといえば、それは、現代の日本人男性、とりわけ、高学歴に高学閥が加味される男性ほど、高度に分化し続け、統合に失敗するとなる。


昔のエリート層であった武士が、未分化なまま切腹していくのと同じ状態であることを知らされる。


では、深層心理学や新武士道における分化の意味とは何かといえば、それは「知識の取得」である。つまり、高度に分化した人間とは、高度に知識を取得している人間という意味である。


現在のエリート層とされる日本男児の多くは、高度に分化し続けているが統合できず、自己実現を達成できずにいるというように、時代を読むことが可能となる。


では何が必要かといえば、未だ達成されない「統合」となる。では何と統合するのかといえば、細分化された知識である。その知識の中に女性が含まれている事はいうまでもない。


武士を現代人と比較すれば、明らかに未分化であった。よって切腹することにより自己実現を達成させたが、現代における武士は十分過ぎるくらいに分化しているので、自己実現するには統合が必要となる。これが切腹における現代的意味である。


さて、男性の中に女性性があることを理解できたのであれば、それを自我と統合して何か新しいことをやっていかなければ意味がない。学術研究を行うにしても、分化を促進するだけでは意味はない。それを統合し、新しい発見がなければならない。


今回はここで筆を置き、次回は知識の習得という意味での分化についての吟味を行う。これにより、今回行った吟味の意味が明確化されるかと思われる。


過ぎたるは及ばざるが如し、何事もバランスが重要であることを肝に銘じなければならない。