無意識なるものは自由すぎる、そして人間の行動のほとんどは無意識からのものでありますから意識のレベルが遠のくととんでもない事態に至ることもあり、ここが難しいのであります。しかしながら、そのバランスがとれると普通になってしまい、さらに問題は難しくなってしまいます。ここを考えてゆくのが心理学の醍醐味であり、面白い部分であります。

 

無意識からの贈り物があまりにも過剰になると、これは統合失調症になったり、自我肥大になったりして大変な状況となてしまいます。ところがこの一歩手前でとどまっているとき、行動の主体にとって心理的な負担は大きくなるものの、それを投影する側には見えるものがあり、そこに感動を呼ぶ作用が発生するときがあります。

 

それはどのようなときかというと、前稿における初心者によるライブのステージであります。

 

ステージに上がっている本人たちの頭の中は真っ白の状態ということは、意識が遠のいて無意識が底の方から火山のマグマのごとき吹き上がっている状態であります。このような状態になるとありとあらゆる無意識が一気に噴火しておりますのでステージに立っている主体は本当に訳の分からない状況でありますが、聴衆は吹き上がるマグマを見ることにより、「すごい!!」となるわけです。主体からはいろんなものが一気にでておりますので、聴衆は様々なものを投影し放題の状況であります。ということは、主体は何をやってもウケける状況となっております。こうなると主体の勝ちであります。

 

ここまで話を持ってくることにより、無意識からの贈り物という表現が非常に合理的に作用するのではなかろうかと思われます。

 

この感覚を素早く察知してこのまま突き進むバンドもあれば、なぜこのような無茶苦茶な状況で高評価なのか?と考えるバンドとに分かれていくのですが、ここで分かれていったとしても、前者のバンドはそのような精神状態を常にキープすることは不可能でありますので、結局のところ考えてゆくバンドへと変化してゆきます。

 

余談ですが、音楽のライブにおけるビギナーズラックとは上述の状況を表現したものであります。このようなことが永遠に続けば・・・と思うのはむしろ当然でありますが、この先に続くのがまた難しいのであります。なぜかというと、ここからは意識との対決になり、意識が無意識を押さえようとする作用が働いてくるからであります。

 

換言すると無意識でのライブはカオスの状態を生み出しますが、ここに意識が加わることにより、非常に整ったステージへ変化し、そこに聴衆は新たなる象徴を見出してゆくことになります。そしてバンドとしても新たなる発展を遂げてゆくことになります。

 

私の論文によく登場していただいているジミ・ヘンドリクスは心理学的にも神の領域の人物でありますが、非常に残念なことに27歳で他界しており、彼のその後を見ることができない点がネックとなります。そこで新たなる、そして成功し続けているバンドを事例として取り上げながらこの先の話を進めてゆこうと思います。

 

そのバンドの名前はPearl Jam(以下、パールジャム)であります。

 

パールジャムはアメリカのロックバンドでありまして、既にロックの殿堂にも入っており、いわゆる世界的に有名なバンドであります。そんな彼らも最初は小さなステージから出発しているのですから、アメリカンドリームの典型例といってよいでしょう。

 

世界中に多くのファンをもつパールジャムは、あいだ理論からすると非常にアンバランスな世界を生き抜いております。なぜそのような生き方ができるのか、彼らの成功物語を吟味しながら心理学的な成功論、そして無意識の活用の仕方を考察してゆこうと思います。

 

ご高覧、ありがとうございました。