最近は働き方や学び方について改革と称していろいろと実行をしようと考えているのですが、それにしても何をどのようにとなると現実的には難しいことも多いかと思います。最近では「三位一体の経営」について社会人MBAコースの学生から問われたことがあるのですが、これはある意味で企業の進むべき方向改革といいましょうか、企業としても何か新しいことをやっていかないと前に進めないような風の流れであるような気がするのですが、いずれにせよ、やらないといけないと思いながらもなかなか前に進んでいないことについてその学生は嘆いておりました。この現象についてどう考えるかが私達、教官の務めであるのですが、まず、社会人MBAコースでの話ですから、これは学び方改革の最前線にいる学生であること、また、学びながら働くという働き方改革の範疇でもあり、さらに論文の問題意識が三位一体の経営という、非常に現在の企業の進むんべき方向性についてのことであり、全てが最新の状況であるわけです。そこで私もあれこれと考えるわけですが、まず、自分と働き方と学び方との三位一体ができているかという問題があり、この点を何とかしなければ論点は見えてこないのではないかと思いまして、ここで例にさせていただいております。

 

まず、三位一体の経営自体は元々もっている技術を使い、それを組み合わせて新しいものを作っていこうとするものであります。しかし、ここで問題なのは、三位一体の三つの内容は研究開発部門、事業部門、知財部門の三つの分野を連携させるものとされ、これらを実行するにさしあたり「戦略」なるものが必要となり、そのことを「三位一体の戦略」と呼ばれているようです。これが実際には機能していないというのが現在における日本企業において大きな問題であり、これが企業の内部の要因からなのか、それとも外部の要因なのかというものを探っていくことがMBAやMOTなどでは盛んにおこなわれております。現実の企業の現場を見てみますと、主に特許を中心とした三位一体を考えてみますと、特許の資料は(とりわけ大企業は)金庫にもにた書棚に厳重に保管されており、だれもが閲覧できるような状況ではありません。これでは三位一体の経営は根本的に無理であるとなります。では、MBAやMOTにこの問題を結びつけるとき、どのように立ち向かえばよいのかというと、閉ざされた書棚を開くための技術開発を考えたほうがよほど有益であるように思え、そのようにアドバイスを行いたいところなのですが、相手は学生ですからそうはいかず、この点に教育の現場の限界を感じるのであります。

 

話は少しそれましたが、私が教育の現場で感じることは、まずは自分自身と勤め先と大学院とが一体化されているかというのがまず重要ではないかと思うのです。というのも、社会人としての経験を活かしながらそれを理論化していくことは非常に重要なことであり、それを日本でも行える人材を育てていこうとするのが大学改革の大きな要素であり、そのような人材を確保するために学び方改革や働き方改革というものが存在します。日本政府による人材育成だけが目的ではないのは当然のことですが、それも一部ではあることは確かなことです。では、自分と勤め先の二者間の問題が明らかとなったところで、大学院という研究機関において、自社において自由に閲覧できない特許資料を問題にすることが果たして何の効果があるのか?と思うこともまた事実であります。ゆえにこの場合、まずは特許資料を開示してもらう技術開発から始めていくことを基礎にしない限り答えは出ないでしょうから、時間はかかってもこの点から始めるのが得策であると思われます。

 

このように問題を根本的な部分から見直していきますと、企業とのかかわりと研究機関とのかかりも深まるものと思われます。ところが、やり方を間違うと企業からは煙たがられ、企業人としての立場が揺らぐことにもなりますが、成功すれば企業と大学とをつなぐ象徴しての研究者となり、学会でも高く評価され、一流の企業人になれるのではないかと予測しております。最近では安易に答えを出そうとするあまり、逆に遠回りになっていることも多く、時間がかかるのであれば教育に人材を割く必要はないと考える企業も多いのが現状ですし、よって、学び方改革や働き方改革にも少なからず影響が出ているものと思われます。

 

今回は三位一体というキーワードにて自分をどのように布置させるのかについて述べてみました。組織内における事業部門同士における布置も必要でありますが、それを観察し、実行への可能性を探る主体も布置されているわけですから、正確には四位一体(ユングによるとこれが完全体である)となるところにMBAやMOTコースの面白みがでるものと考えております。働き方改革や学び方改革で何かを変えていこうとする方々はぜひともこの問題にも取り組んでいただきたいです。ご高覧、ありがとうございました。