このシリーズも10回となりました。経営学の話も一応の整理がつきましたから、これでこのシリーズは終えようと思います。実際にはまだ多くのことを述べてもいいのですが、それは専門家の道楽というものですから、この回をもって終了させ、また何か面白いことが発見できたら書いていこうと思います。

 

一番初め、経済学は経営学の父として、その立場より経済学を語り、時系列的に経営学の話へ移していきました。そこではやはり、立場的に、経済学といえども人を中心として捉え、議論をしてきたつもりです。経済学の主要な問題である失業の問題にしても、やはり心理学を交えて分析を行ったほうが、とりわけ現在の我々の生活環境や労働環境を考慮すると、必要であるのではないかという結論に至りました。これはあくまでも経済現象を現象として捉えたものではなく、経済現象に人の要素を組み込んだがゆえにそのような結論となったわけで、これを正味の経済学として捉えてしまうと経済学に対して誤った理解となりますので、ご注意を。しかしながら、実態の経済、例えば、なぜ人はリンゴを購入するのかを考えるとき、限界コストにて思考しているかというと、そうとは言い切れないわけです。例えば、リンゴを二つ食べたいと思って果物屋さんに行き、リンゴの前に立った時、やはり3つ買いたくなることを限界コストについて考えながら買うかというと、難しいものがあります。また、これに関連して、限界メリットを考えてみますと、人によって3つ購入するより100個購入して満足する人もいるわけで、では、それらがクロスする点がリンゴにおける購入の最適点であると経済学は主張しますが、ここに納得のいかない人もいるでしょう。それらの例をあげるときりがないのでやりませんが、インターネットの社会となり、人々は形式的に国境を越えてつながり、標準化されつつあるように思われましたが、実際には個性化が進行し、この例からしてもリンゴの購入に関しても以前よりも予測をすることが難しくなってきているかと思われます。

 

経営学にしても、これまでみてきたように、経営の現場で起こる現象を現象として観察することが経営学でありますが、その現象の観察だけでは問題が見えてこないこともまた多いかと思われます。例えば、創業者の思いを従業員に伝えるにはどのようにすればよいのかについて、とりわけ、成功した企業家は苦心するのですが、この苦心の本質は、やはり「カネ」についてのことになるのですが、カネについてのことをカネそのものを教科書とせず伝えることは至難であります。京セラのアメーバ経営はこれを「金額」というものに置き換えてヒト・モノ・カネ・情報という経営資源の大切さについて従業員に浸透させた有名な企業でありますが、これに近いことはパナソニックでも松下電器の時代より行われてきておりまして、やはり、人間の心理を突いた経営の方法を実践している企業はヒトの面で恵まれ、結果として強い企業が形成されるのではないかと思われます。

 

いろいろと述べてまいりましたが、一番の問題は何かといいますと、私の専攻するユング心理学は深層心理学といいまして、可視化できない部分を見ていこうとする学問であります。それゆえ、心を可視化することができませんから、経営学と結びつけた場合、実証することが非常に困難である点が一番の問題であります。ですから、経営学と心理学の融合による仮説について我が身をもって実証していくしか方法がなく、この点に私の研究の短所を見出すことができます。私の研究を知って私の門をたたく研究者も多いですが、私としてはいばらの道が目に見えるのですべての人に、まずはお断りしております。しかしながら、いくつかの成功事例に関しては少子化問題や地方創生などの分野で活躍する民間企業様に情報をお渡しするなどして社会に還元するとともに、理論の裏付けを行っております。

 

新しいシリーズに入る前に単発の記事がいくつか入るかと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。ご高覧、ありがとうございました。