それでは皆様方、『天使にラブ・ソングを…』のパート1をご覧いただいたでしょうか。アメリという国は面白い国で、難しい理論を極度に単純化し、それをもとに物語を作り、ドラマ化することが多くあります。その一つが上記映画であり、深層心理学を元に描かれたドラマで有名なのは『アリー my Love』などです。

余談ですが、アリー my Loveはイギリスでも大ヒットしたアメリカのドラマで、主演女優のキャリスタ・フロックハートがロンドンにやってきたときはヒースロー空港まで見に行ったことを思い出します。

まず、ここでイノベーションとはなんぞや?ということですが、これは何度も言ってますように「新しい組み合わせ」のことです。これを英語でいうと「new combination」となります。

そうですね、ここでこのnew combinationが「イノベーション(innovation)」になるに至った事実関係から明らかにしていきますと、このイノベーションを学術用語として生み出したのはご存知の通り、オーストリアの経済学者であるシュンペーターです。そしてこのシュンペーターが最初にイノベーションのことをなんと名付けたのかというと、「neue Kombination」、英語では「new combination」。日本語では「新結合」となります。要するに、シュンペーターは最初、新結合理論を思いついた時はまだドイツ語で論文を執筆しておりまして、この論文をひっさげてアメリカの大学へ移った時、現地のアメリカ人に伝えるために英語表記にしたときに、上記の「new combination」となりました。

そしてここからが面白いのですが、この「new combination」がいろんな人が目にするようになり、また発音されるうちに独特の訛りが出てくるようになりました。そして訛りだけではなく、少し長めの音を発音するのは面倒だということで、徐々に短縮されるようになりました。そしてアメリカの学者の間でいろんな呼び方が出てきたのですが、最終的に「イノベーション(innovation)」という表記と発音に落ち着いたのでありました。

これからもわかるように、イノベーションとは厳密には技術革新や革新そのもののことではなく、あくまでも「新しい組み合わせ」のことをいいます。結果的にこれが技術革新に結びつくという点では技術革新かもしれませんが、文脈を知らずに技術革新と覚えてしまうととんでもない間違いを起こしてしまいます。『天使にラブ・ソングを…』をみて「どこが技術革新なんだよ!!」と思ってしまった方、この機会にイノベーションとは「新結合」と覚えなおしていただくと幸いです。

ところでこのイノベーションですが、何が新しく組み合うとイノベーションとなりうるのかということですが、

1.新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現

2.新しい生産方法の導入

3.産業の新しい組織の創出

4.新しい販売市場の創出

5.新しい買いつけ先の開拓

以上5つの要素が新たに組み合わさるとイノベーションとなるとシュンペーターは述べております。

まあしかし、もっと単純に考えてみましょう。例えば、赤色の絵の具に白色の絵の具を混ぜると=ピンクになります。新しい色になってますよね。

小麦粉に卵と牛乳と砂糖を入れて焼くとパンケーキ、同じく小麦粉に少量の卵と大量の水を混ぜ合わせ、タコを入れて焼くとたこ焼き、また同じく小麦粉に少量の食塩に少量の水を加え、一晩寝かせて細く切れば「麺」になります。元は全て小麦粉。それに加える素材を変えるだけでいろんなものができてきます。添加する素材が変化すればごらんの通り、品は変わる、品が変われば仕入先、販売先、作り方、人員の配置など全てが変わります。これがイノベーションの考え方の原点です。

今回はイノベーション理論の導入部分を説明いたしました。この回で映画の内容にまで踏み込んでもいいのですが、あまりにも長くなるので次回に持ち越すことにします。いつもご購読、ありがとうございます。次回をお楽しみに。