このシリーズでの前回の話では、私達の個人的な意思決定の話を概論的にしましたが、この意思決定について日本政府はどのような意思決定を行っているかについて話す前に、もう少し私たちのことについて突っ込んでみたいと思います。

現在は自民党総裁の安倍晋三首相が官邸の主となっておられ、その意味で安倍さん直轄となるのですが、過去を振り返ると私たちのバンドに介入してきたのは民主党が政権を主導していた時代、時の首相は菅 直人元首相の時代にまでさかのぼります。その後に野田佳彦前首相の管轄となり、現段階で2代にわたり民主党の管轄下にありました。ところが、どこの政党に管轄が移ろうと、対応は全く変わりません。否、むしろ民主党時代の方が今よりもほんの少しだけ融通が利いたかも??しれません。あくまでも私の主観ですが。

ではなぜ派閥が違っても対応は変わらないのかということですが、これは自民党であれ民主党であれ、その他の政党であれ目指すべき方向性は同じ、「いい国造ろう」です。ただし、枝葉の部分に違いがあり、そこで対立するわけです。民主主義的思想でよくしていくのか、社会主義的思想でよくしていくのか、資本主義的思想でよくしていくのか、共産主義的思想でよくしていくのか。

近年、日本社会がうまく回っていないことは皆様方もご承知のことだと思います。これは政治家の先生方も同じ思いであり、これを解決するにはどうすればいいのか常に模索するのですが、やはり経済の活力が落ちてきており、これをまず最初に改善し、お金ができたところで様々な改革を行っていこうというのがここ10年くらいの政治の基本方針となっております。勿論、これ以外にもいろいろとありますが、一言で表現すればこうなるということです。

そこで登場するのが経済学理論となるのですが、これまでの日本は古典派とよばれる理論を重視し、経済活動を行うように指示してきました。実際に大変な効果があり、日本は大変豊かになりました。ところが、バブル崩壊とともにこの古典派の論理がぐずれたことにより次の世代の理論へ移ろうとしたとき、当然のことながらシュンペーター理論に移ろうとしたのですが、あまりにも急な展開を行ったためにその時は失敗に終わります。この時の政治の混乱の状況は説明するまでもないでしょう。

小泉元首相の政治の手法を経済学を学んだものから見れば、アバナシーのいう生産性のジレンマを克服すべく、破壊的イノベーションを実現するためにとった行動が自民党の解体であり、解体するだけでは意味がなく、その後に新たな効果を上げるためにとった行動を象徴するのが郵政民営化であったわけですが、ここまでは非常に教科書の通りでありながら、民営化が実現したことにより完全にイノベーション経済へ移行できるか大変な関心を集め、さらにその後に安倍さんにバトンを渡したことに私は自民党は本当に変わったのだと大きな期待を寄せたのですが、 なぜかその後はうまくいかずに政権交代へとつながっていくのです。

ところが、その後も脈々と受け継がれていたのはイノベーション経済への移行を実現させる動きで、これは民主党が政権をとっていた時代も変わることはなく、いわば政治とは切り離された部分でポスト古典派が進められていたのでした。理由は簡単で、国主導の経済体制で成熟を迎えたのであれば、民間を主体とするしか方法がないからです。もっと言えば、民間で既にそのような活動を行っている人間に好き放題やらせて、成功事例が増えた段階で仮説の検証に移ろうとしたわけです。

ですからこの時期に景気の動向とは逆に急成長した企業がたくさんあり、現在ではその企業の名前を知らない人はいないくらいの有名な企業になっている企業のほとんどに共通するのがシュンペーター理論を裏付ける行動をとっていたとであり、それゆえに最初は日本では認められず、海外とのやり取りの中で最初に海外で認められ、その後に日本に根付いたというパターンが多いのも特徴です。そんな私も40歳にしてそのパターンの第2段階へと入っております。

以上、簡単ではありますが、日本政府は「何とかしなければならない」という思いから「官から民へ」を進める方法として「イノベーション経済への移行」を進めるためにいろんな活動を行っています。その中の一つに私のバンドもありまして、日本という国もいろいろと考えているということをご理解いただれば幸いです。

では、いろいろある経済理論の中でもなぜシュンペーター理論をおすのか。この点が一番気になるところですが、やはり結果がでているからです。そのイノベーションそのものをうまく説明できているのがウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『天使にラブ・ソングを…』のパート1です。

私がうんちくたれるまえにまずはこの映画を見ていただき、イノベーションについて考えてみるのが早いかと思います。また、イノベーション理論からこの映画をみると、「物語」というものの本質が見えてきて楽しさが倍増します。

次回はこの映画をもとにイノベーション理論の中身について述べていこうと思います。お楽しみに。