僕の父が亡くなる迄と亡くなった後の話(実話怪談) | Tanaka-KOZOのブログ

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 僕の父は、僕が33歳の時に癌になり、60代で亡くなりました。
不思議なもので、あの時の事は余り覚えていません。

僕は上に姉が2人いて、末っ子なのですが長男だったので、僕が喪主を務める事になりました。

父の見舞いに訪れた方たちへ、最寄り駅までの送迎や、父が亡くなってから、葬儀の手配、喪主の勤め、そして遺産の相続の手続き等々…。

とにかくバタバタ慌ただしく、葬式では涙を流す暇など無いくらい忙しかったのを思い出します。

そんな中、僕が当時体験した不思議な出来事だけは、今でもはっきりと覚えています。
今回は、その時の起こった不思議な体験を書かせて頂きます。

父が亡くなる3日前、僕が当時勤めていた会社に母から電話が入ました。
母は泣きながら、父の命が後、数日だろうと余命宣告をされたと、僕に伝えました。

その翌日から、僕は父の病床へ泊まる事となりました。
入院患者の死期が近づくと、家族は折り畳み式のベットを病院から用意してもらい、夜泊まって過ごす様になるのです。

母は日々の家事を済ませてから、父の病室へ見舞いに訪れるので、泊まり込みで同乗するのは、僕の役目となりました。(※姉2人は既に結婚しており、他県に嫁いでいたので)

あの頃には、父は癌の痛みを和らげる為、その時はモルヒネを投与されていました。
モルヒネを投与すると、幻覚症状が起こり、父が起きている時は目の視点が定まらず、会話する事が出来なくなります。

また、ほとんど眠っている状態になり、僕や母が病室に居ても父はずっと眠りについている状態でした。

それでも、たまに幻覚が消えて、正常な状態で普通に会話ができる時とかもありました。

僕が一緒に泊まる様になってから、ある日の夜中の事です。(※深夜2時頃だったでしょうか?)
父が病室の壁に向かって、明るく元気に話し出します。

「ええ…、息子なんです…(笑)」
父がそう言って、壁に向かって僕を紹介するするのです。

僕は、父がモルヒネの幻覚症状が出ているのだと思い、「お父さん、幻覚だよ!、幻覚!」と言います。

僕が何回か、そう言っても父は壁に向かって話し続けます。
やがて僕の言葉が伝わった父は、がっくりとうなだれながら、「そうか…、幻覚か…」とつぶやきながら、ベッドに横たわり眠りにつくのでした。

僕はあの当時、父はモルヒネの幻覚を見ていたのだと思っていましたが、よくよく考えてみると、幻覚症状が起きてる人が、僕の言う言葉を理解できるのだろうか!?と気が付きます。

例えば、自分が寝ぼけている時とか、金縛りにあった時とかに、外から聞こえて来る言葉は、正確に頭の中に入って来るのだろうか?という疑問です。

人間は、その様な状態の場合は、耳に入って来る会話は幻覚によって、正確には頭の中に入って来ないのではないのかと気が付きます。

人間は死期が近づくと、死神や亡霊が見える様になるという話を聞いた事があります。
もしかしたら、あの時の父は、あの病院で亡くなった人と、会話していたのではないのか?と、今は思うのです。

何故、そう思うのかと言うと、父が亡くなる数日前、父が母にこう言ったそうです。
「お母さんがそこで(病室の扉)、喪服を着て立っている姿を見たよ」と…。

死神は迎えに来るとき、死期が近づいている人を安心させる為に、亡くなる人のよく知っている人物の姿になって現れると聞いた事があります。

そういえば、母の父親も、亡くなる前には、親戚の女性が自分の寝ている寝室に現れたと聞かせれた事があったと言っていました。

母の父親、僕にとっては祖父に当たる人は、戦争が終わると戦地から帰国しましたが、その後、結核にかかってしまい、若くして亡くなったそうです。

自宅療養していた祖父が亡くなる数日前に、親戚の女性(※丁度、ひと月前に亡くなった方)が、寝ている祖父の前に、牛に乗って現れたそうです。

何で牛なのかよく分かりませんが、お盆の時など、亡くなった方が牛に乗って冥界へ還るという言い伝えがありますので、それと関係あるのでしょうか?

そういう事も考えて、余命僅かな父は、この世の者でない方を見たのかも知れません。

そして父が数日後、亡くなり葬儀も済みました。
僕は母と姉たちと実家の応接間で、夜に何か話をしていた時の事です。

父の位牌を見た時、仏壇業者が父の命日を間違えて彫り込んでいる事に気が付きました。
その瞬間です。
僕の後ろのあった、壁の額縁が突然、ガタンと落っこちたのです!

「きゃぁッ!」
母や姉たちが悲鳴を上げます。

「お父さんが、怒ってるんだよ!」(※日付を間違えていた事を)
姉たちがビビリながら、そう言います。

あのタイミングで、壁の額縁が落ちるなんて、あの時は僕も、父がまだ僕らの傍に居て、怒っているのだと本気で信じてしまいました。

さて、話は変わりますが、人は夢を見る時、直近で気になる出来事や人物が夢に出て来る事が多いと思います。

ですが、あれほど大きな、父の死という出来事があったのにも関わらず、その後、父や葬儀の出来事は夢の中で一切出て来なかったのが不思議です。

それは僕だけでなく、母も同じでした。
あんなに父の事を考えていた毎日だったのに、父が夢の中で一切出て来ないのです。

父を含め、嫁ぐ前の姉たちと家族団らんだった頃の夢を見る様になったのは、随分時間が経ってからでした。(※数年後、だったと思います)

みんなの気持ちも落ち着いて、父の死を皆がようやく受け入れられる様になってからの事でした。

父の死後、間もない頃に父が夢に出てくれば、僕たちは父の死をきっと受け入れられなかったと思います。

そうなると、父も成仏するのをためらってしまうかも知れません。
そういう事から、あの時の父は僕らの夢の中に、敢えて現れない様にしていたのだろうか?と、考えてしまうこの頃なのでした。