もう決して一人じゃない! (夏詩の旅人 1st シーズン) | Tanaka-KOZOのブログ

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1997年4月

夕暮れの東京
港区青山、午後6時

青山通り沿いのオープンテラスに向かい合う、若い男女の姿。

「え?…、どういう事だよ?」
目の前に座るロングヘアーでスーツ姿の女性に向かって、男性が言った。

「だから…、私、会社を辞めて独立起業したいと思ってるの…」

女性は正面の男性にそう言うと、少し困った表情をしながら、右手で耳に掛かるサイドヘアーをかき分けた。

女性の名は、岬不二子26歳。
大手音楽事務所Uに勤める、若手有望株のキャリアウーマンであった。

「だって君は、僕と結婚するんだろ!?」
不二子に向かって男性がムッとした表情で言う。

男性は、不二子の恋人のユウジ。
不二子と同じ、Uで働く同僚であった。

「分かってよユウジ…」
不二子が恋人へ懇願する様に言う。

「分からないね…。君は一体、何を考えているんだか…?」
ふて気味にそう言ったユウジは、組んだ足を組み替えるのであった。

「これからの時代は、女だって自立して働かなければならないの」

ユウジに向かって少し身を乗り出して不二子が言う。
だが彼は彼女にそっぽを向いている。

「僕は、君には結婚したら家庭に入って貰いたいと考えている!、いや、そうでないと困る」
ユウジはきつい口調で、両手を広げて上下させながら不二子に言った。

「どうして?、どうして女は結婚したら働いちゃいけないの?」
彼の顔を覗き込むように、不二子が聞く。

「僕の実家では、母親は専業主婦だった!」
ぶっきらぼうにユウジが言った。

「でも、これからは、そういう時代では無くなっていくわ」

「何故さ!?、いいじゃないか、僕が稼いで楽させてやるんだから、専業主婦で!」
「君は家庭に入り、これから生まれて来る子供の事だけを考えてくれればいい!」
ユウジが不二子に言う。

「子供は勿論欲しいわ。でも、子供は天からの授かりものよ。私がもし、子供を産めなかったらどうするの!?」
彼をなだめる様な口調で、不二子は話す。

「そんなこと心配するなよ不二子。そうしたら家事だけでも、しっかりやってくれたら僕は構わないよ」
しかめっ面のユウジが言った。

「これからの時代は世界中がマーケットとして広がっていくわ。だけどそれと同時に多国の情勢も大きく関わってくるはずよ」
「だからこの先、私たちの生活も国際情勢によっては、何が起きるか分からない」
「あなたのお給料だって、永遠に上り調子で行くなんて安易に考えない方がいいわ」

分かってくれない彼に、懸命に語り掛ける不二子。

「何だって!?、君は僕が出世コースから脱落するっていうのか?」

不二子の言葉に、カチンときたのか?
ユウジは機嫌悪そうに言った。

「そうじゃないわ。私たちだけでは、どうにもならない出来事が起きる事だってあり得ると言ってるの!」
不二子が言う。

「君は、バブルが弾けた事を言ってるのか?、それなら心配ないよ。今は不景気だけど、これからは段々と良くなっていくさ…」
不二子の話をそう言って聞き流すユウジ。

「私、最近よく耳にするの…、銀行や証券会社がヤバイ状況だって…」
少し神妙な顔つきになった不二子が彼に言う。

「は!?、君は銀行や証券会社が倒産するなんて思ってるのかい?」
口を半開きにしたリアクションのユウジ。

「都銀の拓殖銀行や、山一証券が危ないって噂を聞いたわ」

「銀行が潰れるワケないだろ!?、山一だって超大手だぞ!」

「バブルの時、金持ちの男に媚び売っていた女たちは、今、みんな散々な目に会ってるわ」
「これからは、女も自立しなきゃダメなの」

「君が言う日本の経済状況が、今後増々悪くなると予測するのなら、独立なんて、尚更ヤメた方がいいよ」

「独立企業は私の夢だけど、それは同時に、あなたとの生活を守って行く為にも、必要だと言ってるのよ!」

「ふふ…。君は最近、仕事で評価されたから自惚れてるんだよ」
ユウジが急に職場の話を持ち出して来た。

「え!?」
ユウジの言った意味が分からない不二子。

「みんなが知らない若手アーティストを、君がたまたま発掘して、それが売れた事が続いたもんだから、君はいい気になってるのさ」

嫌味が入り混じった笑顔のユウジが言った。

「何それ!?、ひどい!」
ユウジの言葉に不二子は少し傷ついた。

「考えて見ろ…、女の君がこの業界で独立したところで、一体どうやって食っていくつもりなんだよ?」

お前は何も分かってないなという顔つきで、彼は不二子に言う。

「女だってできるわ…!」
ムキになる不二子。

「どうやって?」
からかう表情のユウジ。

「一生懸命頑張る…」
ムッとした不二子が言う。

「はは…、頑張って成功するならみんなするよ!、やめとけ、やめとけ…」

「世の中のトレンドは若い女性が中心に巻き起こしてるのよ。女性がブームを起こす事によって、恋人の男性もそれに乗っかって行く…」

「だから…?」

それがどうした?という感じのユウジ。

「私は、そういう女性ならではの感覚で、この業界に一泡吹かせたいの!」

「俺を取るか、仕事を取るか決めてくれ!」
埒があかない二人の議論に、ユウジはイラついて来た。

「そんな事、言わないでユウジ…」
困り顔の不二子。

「君の話はまったく生産性が無いな…」
彼が横を向いて、ボソッと言った。

「……。」
その言葉に不二子は黙り込む。

「こんなくだらない妄想に、僕の大事な時間を取らせないでくれよ!、僕の時間が、時給換算したら幾らすると思ってんだよ!?」

「意識が高いのね…」
彼のセリフに少しだけ嫌味を込めて不二子が言った。

「保留だな…」

「え?」

「結婚の話は保留だ…。頭をよく冷やしてから、君の考えをもう一度聞かせて貰おう…」

そう言うと、ユウジはテラス席からスクッと立ち上がった。

「私、会社辞めるって、もう部長に話したわ」
ユウジの背中に向かって不二子が言った。

ユウジは、不二子のその言葉に一瞬立ち止まったが、彼女へ振り返ることなく、歩き去って行った。
悔しさと哀しさが入り混じった表情の不二子は、立ち去っていくユウジの背中を、ただ黙って見つめるのであった。



翌日
不二子は都内某所にある、ゼネコン系の協賛スポンサー企業へと挨拶に訪れていた。

T建設社長室

「ほう…、岬くんが独立を…?」
音楽事務所Uのお得意様である、T建設社長の村野が言った。

村野は50代後半で、恰幅の良い男性であった。
オールバックにした毛量は多かったが、白髪と黒髪が混じり合っていた。

「はい…、社長、短い間でしたが、本当にお世話になりました」
不二子は村野にそう言うと、深々と頭を下げるのであった。

「何か困った事があったら、いつでも相談しに来ると良い…」
村野は寛大な振る舞いで、不二子へそう語り掛ける。

「あ…、ありがとうございます…」
その言葉に恐縮する不二子。

「仕事のあてはもう出来たのかな…?」
優しい笑みで、不二子へそう訪ねる村野社長。

「いえ…、恥ずかしながら、無計画だと揶揄されるのを承知で申し上げますが、まだなんです…」
不二子が、おずおずと話す。

「そうか……」
「そうだ君!…、今夜時間はあるかね?」

何か閃いた感じで、村野が不二子へ聞いた。

「え?」
何だろう?と不二子。

「君の新しいビジネスの応援がしたい」
笑顔の村野が正面に座る不二子へそう言った。



「本当ですかッ!?」
嬉しさで驚く不二子。

「うむ…、どうだね今夜、神楽坂の梅庵で会わんかね?、そこでビジネスの話がしたい…」
村野が言った「梅庵」とは、政治家などもよく利用する有名な高級料亭である。

「は…、はい!、ぜひ!」
嬉しさで不二子の身体は震えるのであった。



「それでは、失礼いたします…」
社長室のドアを背にしながら、深く頭を下げる不二子が言う。

「では、今夜…」
村野はそう言うと、ニコリと微笑むのであった。

(やった!)
社長室を出た不二子は、T建設の通路を歩きながら、心の中でガッツポーズをした。

ユウジ、見てらっしゃい!
あたしだって、やれば出来るんだってとこ、見せてあげるからね!

不二子は自分の夢が一歩前に進んだ事に、喜びを噛みしめるのであった。



 その日の夜8時
約束の場所である、神楽坂「梅庵」に到着した不二子。

「岬様がお見えになられました…」
不二子を奥の座敷へと案内した仲居が言う。

「失礼します…」
不二子はそう言って襖を開けた。

座敷には社長の村野ともう1人、若い男性社員が座っていた。
その男性は、村野にちょうど日本酒を注いでいた。


「お~、岬くん!、よく来た。さぁ、ここに来たまえ…」
少し赤ら顔で上機嫌の村野が手招きをしながら、不二子に自分の隣へ座る様、呼びかけた。

「はい…」
不二子はそう言うと、村野の横に座るのであった。

「岬くん…、ウチの社員の和田だ。私の運転手をしている」

村野がそう紹介したその男性は、不二子より少しだけ若そうな、入社2年目といった雰囲気の人物であった。

「T建設の和田ヨシオと申します」

短い髪をディップで立たせたメガネの青年がそう言って頭を下げた。
和田はお笑い芸人の、「タカアンドトシ」の坊主頭の方に似た顔をしていた。

「初めまして…」

不二子は和田にそう言って微笑むと、和田が少しだけ頬を赤らめた。
和田はお姉さんタイプの年上好きだったのである。

「よし!、和田、お前はもう帰っていいぞ」

村野が突然、部下の和田にそう言った。

「え?」
和田が言う。

「ここから先は大事なビジネスの話だ。だからお前はもう帰れ」
シッ、シッと、和田を手で追い払う仕草の村野。

「でも社長…、帰りのお車は…?」

「いいからさっさと帰れ!、空気を読め、馬鹿もんッ!」

「は…、はぁ…」

和田は怪訝そうな表情をしながらそう言うと、座敷を後にするのであった。
その様子をあっけに取られて見ていた不二子。

「さて岬くん…」
村野は和田が出て行ったのを確認すると、不二子の方を振り向いてニヤッと笑った。

「君に月50万出そう…、それから君の住んでるマンションの家賃も、こちらで持とうじゃないか…」

そう言って、村野は不二子の方へ、ずいっと近づいた。

「どういう事ですか…?」
状況が読めない不二子が、村野にそう訪ねる。

「君のやりたいコンサートの仕事は、ウチの社内で専用の席を用意してあげるよ」
「だから仕事なんか取れなくっても安心だよ。君次第だけどね…」

そう言って村野は不二子の手を握ると、いやらしい笑みを浮かべるのであった。

「そ…、それって…ッ!?」

「そうだよ…、やっと理解したかね?、私の愛人にならないか?と言っているんだよ」

「い…、嫌です!」

「悪い話じゃないだろう?」
昼間とは打って変わった、いやらしい笑みを浮かべて村野が言う。

「出来ません、そんな事ッ!」
村野の誘いを拒否する不二子。

「何、子供みたいな事、言ってるんだ!」
ムッとして村野が言う。

「私を騙したんですか!?」
不二子が悔しい表情を浮かべながら村野に聞いた。

「騙してなんかいないよ…。君は独立してお金も稼げる。悪かぁないだろう?」

ニタニタと笑って話す村野はそう言うと、不二子の手首を掴んで、自分の方へグイッと引き寄せた。

「はッ、離してくださいッ!」
その手を振り切ろうともがく不二子。

「女はねぇ…、素直に男の言う事だけ聞いてりゃあ良いんだよ。」
「どうせ独立何かしたって、君みたいな小娘に何が出来るっていうんだ?、ふふふ…」

ユウジと同じ様な事を村野は言うのであった。

「ヤメテッ!、嫌ッ!、離してッ…!、離してッ!」
顔を近づけて来る村野から、必死に抵抗する不二子。

「無駄だよ…、私はこの店には相当カネを落としてる。だからこの店も、こういう事は承知済みだ。ふふふ…」

「…ッ!!」
村野のその言葉に愕然とする不二子。

「世の中で1番大切なのはカネだよ岬くん…、カネが無けりゃぁ何にも出来ん。しかしカネさえあれば何だって出来るんだよ?」
「君だってお金儲けしたいから独立するんだろう?、だったらいいじゃないか、手っ取り早く稼げるじゃないか?」

蒼ざめた表情の不二子は無言で、(違う!、違う!)と首を左右に振る。

「ほら、わがまま言うんじゃない…」
そう言うと村野は、不二子に伸し掛かって来た。

「いやぁぁぁッ!」
不二子が泣いて叫んだ。

「ダァーーーーーーーッッ!!」
その時、叫ぶ声と共に、村野を誰かが突き飛ばしたッ!

ドンッ!

「うあッ!」
村野が座敷に転がった。

「社長!、何してるんですかぁッ!」

そこには、先程、帰ったと思われた和田が怒り顔で立っていた。

「うっ…、うう…」
村野の横では、長い髪で顔が隠れている不二子が、肩を震わせて泣いていた。

「和田ッ!、お前何をしたのか分かってるのかぁッ!?」
和田に向かって村野が恫喝する。

「それはこっちのセリフですよ社長ッ!」
怒りで身体を震わせながら立っている和田が、村野にそう言った。

「キサマァ~…、クビだッ!、クビだぁ~ッ!」
座敷に座る村野が、和田を指差しながら叫ぶ。

「結構ですよッ!、こっちからこんな汚い事してる会社なんか、辞めてやりますよぉッ!」
和田も負けじと叫ぶ。

「何ぃ~~ッッ!」
歯をギリギリと噛みしめながら、怒り顔の村野が言った。

「さぁ、岬さん、行きましょう…」
そう言うと和田は、泣いている不二子を支えながら立ち上がらせるのであった。

「むむむ…ッ!、お前たち!、私に恥をかかせた事を後悔するぞッ!」
座敷から出て行こうとする2人に、指を差して言う村野。

「後悔なんかしないわッ!」
和田に支えられながら立っていた不二子が、村野に振り返って言う。

「失礼するわ!」
涙声の不二子はそう言うと、前に向き直して座敷を出ようとした。

「待てッ!」

村野が不二子へ高圧的に言う。
再び振り返る不二子が、村野を無言で睨みつける。

「誰が君を接待すると言った…?」
村野が冷めた表情で、静かに言う。

「……ッ!?」
村野の言った意味が分からない不二子。

「ビジネスの話はご破算だ…。割り勘といこうじゃないか…?」

そう言うと村野は、不二子をいやらしい笑みで見つめた。

「幾らなのッ!?」
怒り顔の不二子が村野に聞いた。

「一人10万だ…」
両手を広げて不二子へ村野は笑い顔で言う。

「あたり前だろ?、高級料亭なんだぞ…」
続けて村野は、金額に驚く不二子へ言う。

目に悔し涙を溜めた不二子は、バッグから財布を出すと、入っていた札を全て机の上にドン!と置いた。

「足りないな…」

机の上に置かれた、5万2000円を見つめる村野が言う。

「これで負けてッ!、残りは迷惑料と口止め料よッ!」

「ずいぶんと高いお触り料だな…?、これだけ出せば、君なんかよりも良いコールガールが買えるよ…」

そう言って侮辱した村野に対し、プィッと背を向けた不二子は、和田と共に座敷を後にするのだった。


「うっ…、ううっ…」
梅庵を出た不二子は、店の前で肩を震わせて悔し泣きをした。

「本当に申し訳ありませんでした…」
泣いている不二子に、頭を下げながら和田が言った。

「あなたが謝る必要なんかないわ!」

「でも…」
不二子の言葉に、そう言う和田。

「それにあなたは、もうあの会社の人間では無いんだから…。だからもう頭を上げて…」

「はい…」
和田はそう言うと、すまなそうに頭を上げた。

「助けてくれてありがとう…。でも、私の方こそ、あなたにとんでもない迷惑をかけてしまったわ…」
申し訳ないという表情の不二子が、和田に言う。

「良いんですよ…」
苦笑いの和田。

「良くないわ!」

「岬さん…」
和田が言う。

「はい?」と不二子。

「どうか独立の話…、諦めないで頑張って下さい」

どうやら和田は、襖の外で不二子の独立起業の話を立ち聞きしていた様だ。
彼は村野のオンナ癖の悪さを普段から知っていて、それが心配ですぐには帰らなかったのだと、不二子は理解するのだった。

「あ…、ありがとう…。それより、あなたはこれからどうするの?」
会社をクビになった和田を、心配する不二子が聞いた。

「さぁ、明日の朝起きてから考えますよ」
苦笑いで和田が言う。

「本当にごめんなさい…」
不二子は和田にそう言って頭を下げると、また涙が込み上げて来るのであった。

「やめてくださいよ。僕の事は大丈夫ですから…」
不二子の行為を手で制して和田が言った。



「じゃあ岬さん、お気をつけて!」
和田はそう言うと、駅へ向かってトボトボと歩き出すのであった。

一方、不二子は、所持金が小銭しか無い事に気が付くのだった。
不二子は近くのコンビニでキャッシングをすると、そのお金で電車に乗って、家路へ戻るのだった。




 2日後、音楽事務所Uのオフィス

「岬くん…、T建設が来月の武道館ライブの協賛スポンサーを、辞めると言って来ているぞ!」
少しイラつき気味に、部長の柳下が不二子へそう言った。

「え!?」
不二子が驚いて言う。

「君!、何かT建設とトラブったのかッ!?」

「トラブルというか…、その…」
柳下部長の問いに戸惑う不二子。

「何があったんだッ!?」
不二子を睨んで柳下が聞いた。

「それは…、言えません…」

「どういう事だ?」

「言えないんです…。申し訳ありません…」
そう言って柳下へ頭を下げる不二子。

「分かった…。だけどな…、これは我が社にとって大問題だぞ!、始末書と減給は覚悟しておく様にッ!」

そう言うと部長の柳下は、不二子を残してミーティングルームから出て行ってしまった。

村野社長…、なんて卑劣なやつなのッ!?

不二子はT建設の村野に対して、怒りをあらわにするのであった。


「不二子、なんかヘマしたらしいな…?」
社内にあるラウンジスペースで、自販機の缶コーヒーを飲んでいる不二子へ、恋人のユウジが声を掛けて来た。

「私はヘマなんかしてないわ!」
少しムッとした表情で、ユウジに言う不二子。

「ヘマしたんだろ?、だから減給された…」

ユウジの言葉に、不二子は言い返せなかった。

「だから女は、出しゃばり過ぎるなと言ってるんだ」

「あなたの思う様になって、嬉しそうじゃない?」

ユウジを睨みながら、缶コーヒーを手にした不二子が言う。

「女は家の中にいるのが1番良いんだよ。女なんかが社会に出てたらロクなことないよ」

「ロクな事ない?」
ユウジの、その言葉の意味を尋ねる不二子。

「そうさ、家の事は何もせずに不倫に走ったり、金を散財したりとロクな事しないよ」

「それって、あなたの固定概念でしょ!?」
ユウジのセリフに、ムッとした不二子が言う。

「いやいや…、実際そういう話はよく聞くよ」
「なあ不二子、くだらない夢なんか捨てて家庭に入れよ。カネなら俺が稼いで来るからさ」

不二子の話など、聞く耳を持たないユウジが言う。

「あなたもお金の話をするの…?、お金なんかよりも、夢の方が大事なんじゃないの!?」

ユウジのその言葉に、ガッカリする不二子が言った。

「ええ!?、君、それホンキで言ってるのかい?」
ところがユウジは、驚いて言う。

「え?」
なんで?と思う不二子。

「だってお金があれば何でも出来るんだぜ。好きなことだってやれる、良いものだって買える!」
ユウジがそう言う。

「あなたはこの仕事が、好きだからやってるんじゃないって事?」

「あたり前だろ!、仕事なんて誰が好きになるもんか!、僕のモチベーションは、この会社での年俸額だけだよ!」

「あなた変わったわね…」
ユウジの言葉に落胆する不二子が、ポツリと言った。

「あん!?」
ユウジが言う。

「きっとお金が、あなたを変えたのね…?」

「何を言ってるんだ不二子…?」



「私たち、もうムリみたいね…」

「あ!、不二子…」

不二子はユウジにそう言うと、その場から離れるのであった。



 6月
減給でボーナスも全額カットされた不二子は、夏の賞与が支給される日を待つことなく、音楽事務所Uを退職したのであった。

独立起業するにあたって、何から始めて良いのか分からないまま、不二子の新しい人生はスタートした。
当時はインターネットが普及して間もない頃であり、SNSどころかブログさえも、世に出回っていなかった時代であった。

不二子は取り合えず、イベント企画会社でステージ設営などをやる、登録制の日雇いバイトを繋ぎで始めてみる事にした。


「あれ!?、岬さんじゃないですか?」

イベント会場設営バイトの初日。
会場に集合したスタッフの中の一人が、不二子にそう声を掛けた。

「え!?、あなたは確か…?」
声を掛けて来た人物に驚く不二子。

「和田ですよ…」
笑顔で和田が言う。

「あなた、なんでこんなところに?」

「岬さんこそ、どうしてここにいるんです?」

「私は、独立起業するにも何から始めていいのか分からないから…、取り合えずここで現場の事を学ぼうと思ってアルバイトする事にしたの…」

「そうなんですか…?、そりゃあ良い考えですね!」

「和田くんはどうして?」

「僕は転職活動の合間に、このイベント会社に登録して働いてます」

「そうなの…?、あなたなら、他でもすぐに決まりそうな感じだけど…」

「社長を怒らせた事で、T建設が他のゼネコン企業に圧力をかけたみたいで、僕は業界から追放されてるようです…」
和田が苦笑いで不二子に言う。

「本当に!?…、まったく…、あの村野って男は、どこまで卑劣なのかしら!」

「でも良いんです。この仕事やってみて感じたんですけど、なんか面白いですね?、この業界って…!」
和田は笑顔で、不二子にそう言うのであった。


「岬さん、そこ!、そのポール押さえといて下さい」
そう言って、不二子に指示をする和田。

「は…、はい」
不二子がそう言うと、和田はポールにロープを巻き付ける。

「慣れたものね…?」

「こんなの岬さんだって、すぐ出来ますよ!」

「そうなの?」

「そうですよ!…、ねぇ岬さん」

「何?」

「ここの現場の仕事は、ライブ前のリハに訪れるミュージシャンと、顔を合わす事もありますよ」

「ふぅん…」

「仕事を続けていれば、そのうちミュージシャンとも話す機会が出て来るという事です」
そう言うと和田は、よっこらしょッという感じで、設営テントを張った。

「そうか!、この仕事を続けていれば、コネクションが出来るという事ね!?」
和田の言葉に閃いた不二子。

「ええ…、でも有名アーティストは無理でしょうね、バックに大きな事務所が付いてますから…」
「だけど役所の公共イベントや、学園祭などに出るアマチュアミュージシャンなら話は別です!」
ロープを引っ張って作業しながら、和田は不二子へ語り掛ける。

「それは良いアイデアだわ和田くん!」
ポールを抑えながら不二子が応えた。

「岬さんは、そういう人たちの中から、有望なアーティストを見つけるのが得意なんでしょ?」
和田は不二子へ振り向き笑顔で言う。

「得意かどうかは自分では分からないわ…。でも私、人を見る目は今までの社会人経験を通して養って来たつもりよ」

「ならイケますね?、この作戦は」

「ええ、きっとうまくいくわ!」
不二子はそう言うと、手の甲で額の汗をぬぐうのだった。

「岬さん、秋になったら六大学が学園祭をやりますよ。その時に、有望なミュージシャンを見つけてみたらどうです?」
「特にW大の軽音サークルは多くのプロを輩出していますよ。プロ顔負けの歌唱力や、英語力、ビジュアルが良い人や、一風変わったタレント性のある人物がたくさんいますよ」

次の設営場所へ移動しながら、和田が不二子へ言う。

「そうなんだぁ?、ありがとう和田くん、勉強になるわ…」
一緒に歩く不二子が、明るい笑顔で和田に言った。

「それから岬さん、“ざ・マール”って雑誌、知ってます?」

「“ざ・マール”?」

「ええ…、“ざ・マール”です」

「知らないわ」

「求人誌を作ってるR社が発行してる雑誌です。それには全紙面において、読者投稿の募集記事で構成されています」
「恋人募集中のページもあれば、フリーランスの芸能人や岬さんの様な個人企業主の人たちとかも仕事の募集を出すページがあるんです」

「そうか!、そういうのに私も載せたり、仕事の募集をしてるミュージシャンに応募してみるって事ね!?」

「そうです。あとは音楽雑誌の中にも、そういったコーナーがありますよね?」

「メンバー募集とかの…?」

「そうです。そこにオーディション開催の参加者を募集するんですよ」

「すごいわ和田くん!、あなた優秀ね!」

「お褒めにあずかり光栄です」
和田は照れ臭そうにそう言った。

「ああ…、あなたみたいな頼りになるパートナーが会社にいてくれたらなぁ…」
青空を仰ぎながら不二子が独り言を言う。

「入れてくれますか?、岬さんのイベント会社!?」
笑顔の和田が不二子へ言った。

「え!、本当!?」
「ああ…、でもダメよ…。私の今の状況じゃあ、人なんてとても雇えないわ…」
一瞬喜ぶ不二子であったが、現実はそうはいかない。

「じゃあ、いつか会社が大きく出来たら、その時は僕を呼んでください」
すると和田が不二子へそう言った。

「勿論よ!、必ず和田くんに声を掛けさせていただくわ!」
その時、不二子は心の底からそう思うのだった。

「ダァーーーーーーーーーーーッ!」

その言葉に喜ぶ和田は、プロレスラーのアントニオ猪木の様な雄叫びを上げた。
この叫び方は、どうやら彼の口癖らしい様だ。

「ふふふ…」
和田のその叫び声に笑う不二子。

「へへへ…」
和田も不二子に向いて笑うのであった。



 8月
不二子は27歳の誕生日を迎えた。
その頃になると彼女は、和田のアドバイスを元に、“ざ・マール”や音楽雑誌などに投稿を開始していた。

そして不二子はその月に、イベント会社“Unseen Light”を立ち上げた。
不二子一人だけのスタートとなった“Unseen Light”は、(まだ見ぬ光)という意味である。
彼女がまだ出会っていない素晴らしい、原石となるアーティストや、自分の会社がこれから輝いていける様、という願いから付けた社名である。


9月
不二子は、雑誌に載せて反響のあった人たちとコンタクトを取り始めた。
そして、2ヶ月連続で投稿した彼女のユニークな募集内容は、“ざ・マール”の編集者の目も留まる。

それが縁で、彼女は“ざ・マール”と同じ発行元のR社から連絡が入り、今度は“アンドレ”という雑誌の取材を受ける事となった。

“アンドレ”は、若手ベンチャー企業の経営者を紹介する雑誌であった。

ビジュアル的に映える不二子は、その雑誌の巻頭2ページに渡り、大きく取り上げられた。
彼女はその雑誌の記事で、“Unseen Light”初となるイベント企画を発表した。

その内容は、12月に新宿中央公園内で、野外ライブイベントを行うというものであった。
不二子は既に新宿の都庁舎へ、イベント開催の許可を取り付ける事に成功していたのであった。

彼女が始めた小さな行動が少しづつ大きくなっていく。
この頃には、音楽業界やプロを目指す若手ミュージシャンたちとも、人脈が構築されて行くのであった。


10月
不二子は和田とW大の学園祭に訪れていた。
その学園祭の野外ステージで、面白そうなバンドを2つ見つける。

1つは女性がボーカルのジャズバンドであった。
赤いドレスに身をまとった可愛らしいボーカル女性は、ネイティブばりの英語力と、素晴らしい歌唱力を備えていた。

2つ目は、FUNKを演奏するビッグバンドであった。
的確なリズムは、東京スカパラダイスオーケストラを彷彿させる様な見事なチームワークで成り立つバンドだ。
そのビックバンドは、サックス、トランペット、トロンボーンを演奏するメンバーが、それぞれ個性的なファッションで面白いと不二子は思った。

サックスはエレガントでセクシーな女性が、スリットがきわどく入るチャイナドレスを着ていた。
トランペットの男性は、黒のダークスーツをバシッとキメていた。

そしてトロンボーンの男性は、スキンヘッドの細マッチョ(笑)
上半身裸でトロンボーンを激しく吹く男性であった。

不二子は早速、その2バンドの連中と接触するのであった。

「分かりました!、ぜひ参加します!」
ビックバンドのリーダーのベーシストが不二子に笑顔で言う。

「他の大学の連中にも声かけてみますね!」
ジャズバンドのボーカル女性が言う。

彼らは大学が違えど、お互いの学祭や、ライブハウスなどでのブッキングで横のつながりが強いらしいとの事であった。
こうして2バンドは快く、12月に行われる予定の、新宿中央公園野外ライブへの参加を引き受けてくれるのであった。


 こうして参加バンドは6組になる事が決まった。
いよいよ彼女の夢が現実に動き出す。

不二子は音響機材のレンタルを、いままで貯えてきた軍資金から支払う事にした。
会場の設営は、和田を含んだイベントや雑誌で知り合った仲間たちが数名、ボランティアで手伝ってくれる事となった。

当日のライブは、観客は無料で開放する事にした。
だがライブ出演してくれるバンドには、不二子の貯金から少ないながらもギャラを払う事にした。
大赤字間違いなしのイベントであったが、それでも不二子は構わないと感じていた。

このイベントが盛り上がれば、大きな話題となる!
そうすれば、それは“Unseen Light”にとって、今は赤字でも、大きな意味を持った最高のスタートとなる!

そんな事を願いつつ、ついに新宿中央公園の野外ライブは1週間後と迫るのであった。


12月
ライブイベントの3日前

「岬さん、大変ですッ!」
会場の設営準備に追われていた不二子の元へ、和田が大慌てでやって来た。



「どうしたの和田くん?」

「ほら、これッ!」
そういうと和田は1枚のフライヤーを不二子に渡した。
それを手にした不二子が驚いた!

「これ!、山手線沿線のターミナル駅を中心に駅前で大々的に配られてましたぁッ!」
和田の言葉が耳に入って来ないくらい動揺した不二子はフライヤーを見つめる。


12月〇日/時間16:00~21:00
代々木野外音楽堂にて、インディーアーティスト参加者を大募集!

飛び入り歓迎!プロ志向は大歓迎!
当日はその場でギャラも支払います。

さらに当日は、大手音楽レーベルの関係者が多数来場!
★明日のスターは君たちだ!!

主催:株式会社T建設



「何これッ!?」
フライヤーの内容を見た不二子が驚いた。

「村野の嫌がらせですよ…、岬さんのイベントを潰す為に、同日の同時間帯にぶつけて来ました」
「しかも場所はすぐ隣の代々木ですよ…。まずいですよ…」
和田が悔しそうな表情を浮かべながら不二子へそう言った。

「村野…、どこまでも私の邪魔をするつもりね…」
不二子は村野に対して怒りが沸々と沸いて来た。

「今夜、フジTVで、このイベントの事を大々的にバラエティー番組内で紹介するって書いてありますよ…」
「不味いなぁ…、こっちにお客さん来てくれるかなぁ…、それよりも参加者たちが、みんなあっちに行っちゃったらどうしましょうッ!?」
不安げな表情の和田が言う。

「あの子たちは必ず来てくれるわッ!」
だが不二子は、不安な和田を一蹴する。

「でも、岬さんが声かけた参加者たちは、みんなプロ志向だったじゃないですかぁ…。自分たちの夢を実現させるのならば、村野の方を選びませんかぁ?」

「和田くんッ!、私は人を見る目は、養って来たって言ったはずよッ!」
不二子が和田に力強く言った。

「はぁ…」
それでも和田は、不安を隠せないのであった。



 12月某日
ついに、不二子の“Unseen Light”、初のイベント当日となった。

イベント開始から数時間が経過した。
時刻は夜の7時を回ったところであった。
辺りは暗くなり空には月が出ていた。


「やっぱバンドの連中、誰も来ませんね…。お客さんも…」
和田が、誰もいないステージを見つめる不二子の横で、弱々しく呟いた。

「ほら見た事か…、だから言わんこっちゃない…」
その時、不二子の背後から男性の声がした。
振り返る不二子。

「ユウジ!?」
驚く不二子。

「だから女なんかには無理だって言ったんだ」
そう言ったユウジの言葉に、何も返せない不二子。

「まだ続けるつもりか?、こんな馬鹿げた事…」
ユウジがそう言うと、2人の後ろから声が聞えた。

「すいませ~ん…!、遅くなりましたぁ~…」

そう言って小走りで近づいて来る人影は、不二子が最初に声を掛けた、あの2バンドの連中たちであった。

「あなたたちッ!?」
不二子が嬉しい叫び声を出す。

「ありがとう…、来てくれたのね…」
不二子はバンド連中にそう言うと、うつむいて肩を震わせて泣いた。

「すいません遅れちゃって、ほら代々木で今イベントやってるじゃないですかぁ、おかげで大渋滞に巻き込まれちゃって、おまけに駐車場がどこも空いてなくて大変でしたよ~♪」
笑顔のバンドメンバーたちが不二子へ言った。

「あなたたち、あっちに参加すればプロになれるかも知れないのに、どうして私の方に来てくれたの?」
涙目の不二子が彼らに聞いた。

「あたり前ッしょッ!、約束したじゃないですかぁ~」
スキンヘッドのトロンボーンが言った。

「私なんかに付き合っても、アーティストとして成功なんて出来ないかも知れないわよ?」
「向こうに行けば、あなたたちの実力があれば、すぐに有名になって稼げるわよ?」

「お金に変えられないものもある…(笑)」
スーツのトランぺッターがキメ顔で言った。

「お前それ、カード会社のCMかよッ!?」
スキンヘッドが、スーツ君にすかさずツッコみを入れる。

わははははは…。

バンド連中がみんな笑い出した。
涙目の不二子の顔は、泣き笑いの笑顔に変わる。



「じゃあ俺たちからはじめっかな?」
スキンヘッドが明るく言う。

「ずる~い!、こっちが先でしょ~!」
ジャズボーカルの彼女が言った。

互いのバンドは、そう言いながらステージの方へと向かうのであった。

「ふん…」
その光景を黙って見ていたユウジが鼻で笑った。

「あなたには見えないの?、あの子たちの、あの輝きが…?」
ユウジに振り向いた不二子が彼に言った。

「あんなシロート連中がここに来たところで、何が出来る?」

「お金目的だけで仕事してる、あなたには見えないのね…」
寂しい目でユウジを見つめながら不二子は言うのだった。

「考えは変わらないか…?、不二子は…」
ユウジはため息交じりに、呆れた調子で言う。

「変わらないわ!」

「たった一人で、これからどうする気だ?」

「私はもう一人じゃないわ!」

「ん!?」

「私には、私を支えてくれる仲間たちがいる!」

ステージで準備する学生たちや和田の事を不二子は言った。
和田は不二子から少し離れた位置で、それを黙って聞いていた。

「そうか…、もう会う事もないな、不二子…」
諦めた表情のユウジが言う。

「ええ…。さようならユウジ…」
穏やかな表情の不二子が、静かな口調でユウジに別れを告げる。

「ふんッ!」
そう鼻息をしたユウジは、イベント会場に背を向けて歩き出すのであった。
するとステージから演奏が始まり出した。

おや!?っと振り返るユウジ。
ステージでは、赤いドレスの女性が、ジャズナンバーを歌い始める。
観客席には、不二子一人だけが、その演奏を嬉しそうに眺めている姿がユウジには見えた。

ユウジはその光景を数秒見つめると振り向き直し、この場から去ろうとした。

するとユウジの目の前には、立ち止まってステージを見つめる若いカップルがいた。

そして周りもよく見ると、散歩中の老人や、ジョギング中の男性、他の公園にいた者たちが、みんなステージを見つめて、立ち止まっている光景が見えた。

やがてその連中は、観客席の方へとゾロゾロと移動し始めるのであった。
不二子は座席から立ち上がると、笑顔で観客たちを手招きで「どうぞこちらへ」と誘導するのであった。

こうして、岬不二子の初めてのライブイベントは行われた。




その後、この岬不二子の“Unseen Light”が、大きく羽ばたいて、彼女が成功を収める事になるとは、この時にはまだ誰も想像できないのであった。

fin.


今回の勝手にエンディングテーマ





次回予告
 リョウ(野中涼子)は、学生時代の親友を災害事故で亡くします。
3年経っても災害復興が一向に進まない政府の対応に、リョウは苛立ちを感じていました。

そんな彼女の元へ、毎朝新聞編集員を名乗る男から、ジャーナリストにならないかという誘いを受ける事になりました。

新聞社へ入社したリョウは、その男から日々、勉強会と称して日本の政治の腐敗を知る事となりました。

同じ頃、爆弾テロ犯を追っていた警視庁公安部の刑事平松は、あと一歩のところで犯人を取り逃がしてしまいます。

 月日が立ち、大学の学園祭ライブに出る事になった主人公とその仲間たち。
学園祭当日、突如大学の講堂を占拠するテロリストグループが現れます。
そのテログループは、平松刑事が追っていた犯人たちでした。

人質に取られた主人公の仲間と一般人たち。
校舎内で次々と起こる爆破。
崩れ落ちる校舎。
逃げ惑う人たち。

テロ組織の要求は、「日本で現在稼働している原子力発電所を全て停止しろ」
「その要求を呑まなければ、1時間ごとに人質を1人ずつ殺す」と言うものでした。

次々と爆破が起こる校舎の中へ、警察は突入する事ができません。
主人公は、怪我を負った平松刑事の代わりに仲間を助けに向かうと言い出します。

犯人が立てこもる講堂の中には、銃器で武装したグループ。
そして講堂の周りには、反原発を支持するデモ隊およそ100名が集まり出し、テロ組織を支援します。

「やめて!、行ったら殺されるわッ!」
主人公を止める、イベント会社社長の不二子。

人質が殺されるタイムリミットまで残り僅か…。

果たして一体、どんな結末がッ!!