また涙出るぜ | 生殖医療専門医・内視鏡手術技術認定医 田中雄大のブログ

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神奈川県藤沢市の不妊治療・産婦人科「メディカルパーク湘南」の院長、田中雄大のブログです。
体外受精や内視鏡手術のことから雑感まで、日々の記録を綴っております。

埼玉の入間院から治療に通っていたKさん。

 

最初に受診されたのは、もう4年前位に遡ります。


私が、入間院に毎週通っていたころの事です。

 

Kさんは、数か月間、月経が無いということで、内科から紹介されて来ました。紹介元の内科医が、大学の同級生だったので、凄い偶然もあるものだ、と思った事を昨日の事の様に思い出します。


Kさんは、その当時、まだ30代前半。

 

最初は、この年代に良くありがちの、ただの月経不順かと思われました。ところが、色々と検査を進めていくと、ほぼ早発閉経に近い状態であることが判明しました。

 

その当時、Kさんには、お付き合いしていた方はいらっしゃったようですが、まだ独身で、明確な妊娠希望があったわけではありませんでした。


閉経状態であっても、妊娠の希望さえなければ、ピルなどのホルモン療法を行えば、通常の方とほぼ同じホルモンレベルを保つことが出来ます。


一方、不妊治療をする場合には、本当に茨の道が待っています。


例えるなら、大海原で孤独に釣り糸を垂れて、いつ釣れるかも分からない「排卵」という魚をひたすら待ち続けるような。何年経っても、1回も排卵しないかも知れないのです。

 

Kさんには、ピルを使うか、今すぐに、体外受精を始めるかの2択を迫りました。パートナーの方とも良く相談するように伝えました。


お2人が選択したのは、体外受精でした。

 

そして、茨の道が始まりました。

 

案の定、いくら排卵誘発剤を使っても卵巣の反応は大変厳しいものでした。


でも、根気良く続けていると、本当にごく稀に、なのですが、排卵することがあることが分かりました

 

そのうちに、私も入間に行く事が無くなってしまあいました。普通の方なら、そのまま入間院に通いながら、faxで本院の医師とやり取りをしながら不妊治療を進めていくのですが、Kさんの場合は、難治症例であったため、通常のfaxのやり取りでは全く不十分。その為、ほぼ毎回本院まで通って頂きました。


私としては、「取れる所まで、採卵を続けましょう」とお話しはしていましたが、時間が経つにつれ、更に卵巣の機能は悪くなり、最後は、ほぼ完全に閉経状態になってしまいました。


こうなっては、いくら足掻いても採卵は不可能です。そこで、それまでに凍結をしていた胚の移植が始まりました。


そして1回目の移植で幸運にも成功したのでした。


6月に出産され、今日、今後の相談を兼ねて、御夫婦で、わざわざ埼玉から来院されたのでした。


入籍されて、苗字も変わっていたので、入って来るまで、誰なのか全く分からなかった。
 


 記念写真。

ずっしり重かった。


Kさん、本当に良く頑張りました。


精神的にも、時間的にも、金銭的にも、相当キツかったと思います。


おめでとう!