何を「差別」とするかなんて、時代で変わる | 生殖医療専門医・内視鏡手術技術認定医 田中雄大のブログ

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神奈川県藤沢市の不妊治療・産婦人科「メディカルパーク湘南」の院長、田中雄大のブログです。
体外受精や内視鏡手術のことから雑感まで、日々の記録を綴っております。

虎に翼。

毎日、食い入るように見ています。

ドラマはテンポよく進んで、今週は昭和20年に。

3月10日の東京大空襲もサラっと流されて、そして7月。

日本が全面降伏する僅か1か月前に、寅子の兄が戦死します。

その場で泣き崩れるお嫁さんの演技は圧巻でした。

寅子の旦那さんの優三さんは、戦争に行ったきり、行方が分かりません。

このまま、2人とも戦死してしまうのか、それとも帰って来るのか、心配が募ります。

 

戦争中盤の昭和18年には、兵士の絶対数が足りなくなり、早稲田大学や慶應大学の文系学生を徴用することが認められます。「学徒出陣」ってやつですが、これをイベントとして盛り上げるために、神宮外苑で大々的に壮行会が開催されます。神宮外苑は、私の大学の線路を挟んで隣だったので、しょっちゅう行っていましたが、お洒落な銀杏並木は、大人のカップルの定番散歩スポットです。その場所で、過去にそんなイベントが開催されたことを彷彿される痕跡は全く残っていませんが、妻の祖母は、その壮行会に観客として参加させられたらしく、10月の寒い雨の中で、ぬかるみでぐちゃぐちゃになりながら、学生さんが行進してきて、東条英機首相が演説していたのを良く覚えている、と語っていました。

 

この時代、男たちは赤紙一枚で強制的に戦争に行かされたわけです。

 

そこで、ふと思いました。

「ん?男?そういえば、徴兵は男だけじゃん・・」

 

このドラマは、女性蔑視、女性差別と闘う一人の女性の物語です。

このパターンは今までも沢山あったので、やや食傷気味かと思ったのですが、見ていると、確かに酷い。まず、司法試験の受験資格が男子だけ。だから、女子は、そもそも受験資格がない。まず、それを撤廃しなければならない。それで数年かかって法律が変わって、漸く受験出来て、合格したけど、自分の志望は裁判官になるのが夢なのだが、女性は合格しても裁判官にはなれない。だから、仕方なく弁護士をやるしかない。それで弁護士として働き出すけども、依頼者は女性弁護士というだけで信用してくれずに、いつまで経っても独り立ち出来ない。

 

こんな不平等な事が、本当にあったのか?と思ってしまいます。

女性っていうだけで、受験資格が無いなんて信じられない。

今の時代なら、不適切にも程がある!っていうどころのレベルでは無いでしょう。

 

でもね。


今日、初めて気づいたのですが、徴兵は男だけ。

女性が戦争に行くなんて誰も考えもしなかったわけです。

これは不平等ではないのでしょうか?

 

こういう事を言うと、「だったら体力も体格も違う女性も徴兵されるべきだっというのか?それこそ差別だ!」と、ストローマン論法で批判する人もあるでしょうが、そんなことを言っているつもりはありません。

 

私は今日、この日まで、兵役の義務が男性限定だったことに、一度も疑問を抱いたことはありませんでした。このドラマが女性の理不尽な不平等を描いていなかったら、多分、一生そのままだったでしょう。

 

これは、権利と義務は必ず抱き合わせになるといういい例だと思います。

例え、司法試験の受験資格がなくても、選挙権が無くても、その代わりに戦争に行く義務はない。

だから、戦前の女性もそれなりに幸せだったのだと思います。

 

要は、価値観なんて、時代ごとでいくらでも変わるということです。

 

今の価値観で、過去の時代を一元的に断ずるのは浅はかだ、って気付かされた15分間でした。