子宮卵管造影検査について(油性か水性か) | 生殖医療専門医・内視鏡手術技術認定医 田中雄大のブログ

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神奈川県藤沢市の不妊治療・産婦人科「メディカルパーク湘南」の院長、田中雄大のブログです。
体外受精や内視鏡手術のことから雑感まで、日々の記録を綴っております。

メディカルパーク湘南では、3月1日より、卵管造影に用いる造影剤を、水性から油性に切り替えました。その最も大きなきっかけは、2017年にオランダで行われた「H2Oil」と名付けられた大規模調査の結果でした。これによれば、油性造影剤を用いた方が、水性造影剤を用いた場合よりも、検査後の妊娠率が約1.3倍高いことが分かったのです。

 

この論文は、ニューイングランドジャーナルオブメディスン(通称NEJM)という最も権威ある医学雑誌に掲載されていて、誰でもアクセス出来ます。NEJMに掲載されるほどですから、どこから見ても抜け穴のない調査だと思います。ただ、ちょっと首をかしげるところもあるのです。まず、妊娠率。卵管造影検査後、6か月後の累計妊娠率が、油性造影剤で39.7%、水性造影剤で29.1%となっているのですが、これはちょっと高すぎやしないか??人工授精の1回あたりの妊娠率が10%弱であることは世界共通のはずなのに。しかも、良く見ると、妊娠群の中には、体外受精で妊娠した人もカウントされている。(数%だけなんですけども) それから、検査後に腹腔鏡の手術を行った人までカウントされている。そして、最も問題なのは、この調査で使われた水性造影剤は極めて古いタイプで、現在市場に出回っているものとは組成が大分異なってしまっているらしいこと。そうすると、H2Oil調査の結果を果たして額面通りに受け入れて良いのだろうか、という疑問が湧いてしまうのです。

 

油性の造影剤を使用した場合、2日に分けてレントゲンを撮らなければならないなどの患者さんへの負担が増える側面もあります。このまま油性造影剤で行くのか、それとも水性に戻すのか、非常に悩ましいところです。

 

そんなことを考えていたら、この時間になってしまいました。

ギリギリの時間帯にアップします!