重要なお知らせ:新型コロナウイルス抗体検査を開始します | 生殖医療専門医・内視鏡手術技術認定医 田中雄大のブログ

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神奈川県藤沢市の不妊治療・産婦人科「メディカルパーク湘南」の院長、田中雄大のブログです。
体外受精や内視鏡手術のことから雑感まで、日々の記録を綴っております。

重要なお知らせです。

 

メディカルパーク湘南では65日(金)より、新型コロナウイルスの抗体検査を開始致します。

 

まず、抗体検査について概略を説明します。新型コロナウイルス(正式名称は「SARS-CoV-2ウイルス」ですが、一般向けの名称を使います。)は、王冠のような膜の中に、遺伝情報を蓄えています。このウイルスは4種類の蛋白質を持っており、このうち、遺伝情報であるRNADNAの仲間だと思っていただければ)に結合しているのが「ヌクレオカプシド蛋白」と呼ばれる蛋白質です。今回、当院で採用する検査はこのヌクレオカプシド蛋白に注目し、この蛋白質に対する抗体の有無を測定するものです。

人間の体は、ウイルスでも、細菌でも、異物が体の中に入り込むと、それに対する抗体が産生され、異物を除去しようとする機能を備えています。これが「免疫」と呼ばれるものです。ワクチンは、特定の病原菌やウイルスに対して、疑似的に感染状態を作って、体内での抗体産生を促すものです。現在、様々な感染症で抗体検査が実施されています。代表例が風疹。不妊治療で通院中の患者さんは必ず測定しているはずです。風疹抗体を持っているという事は、すでに免疫が出来ており、今後、風疹には罹らないことを意味します。クラミジアも広く行われる検査です。クラミジアの抗体が陽性だった場合、過去に少なくとも一度はクラミジアに感染をしたことがあることを示します。

公表されているデータによると、肺炎などの症状を有し、PCR検査で陽性となった69人の患者から採取した204検体を測定したところ、PCR陽性確認後6日目以内では、感度65.5%、7-13日では感度88.1%、そして14日以降の患者検体では、抗体の検出感度100%でした。つまり、新型コロナウイルスに感染した患者では、発症後2週間以内にはほぼ100%中和抗体が産生され、この抗体が、毒性や感染力を減衰あるいは消失させるのです。

抗体検査が陽性だった場合、どのような解釈になるのでしょう?まず、当然ですが、その方は過去に新型コロナウイルスに感染した既往があるという事です。一方で、その人は感染後、すでに2週間程度経過している可能性が高いことも分かります。また、抗体を獲得しているのですから、その人が、将来新型コロナウイルスに再び感染する可能性は、抗体陰性に方に比較して、圧倒的に低いことも言えるでしょう。ただし、どのくらいの期間その免疫力が継続するのかなど、その詳細はまだ明らかにされていません。もう一つ大事な事は、抗体陽性だけでは、その人がまだウイルスを持っているかどうか(つまり、他の人に感染させる可能性があるかどうか)は分かりません。その場合には、初めてPCR検査が力を発揮します。

一つ懸念があります。このブログを読んで、産婦人科とは一切関係縁の無い、ゴホゴホ咳をしまくっているようなお爺さんやお婆さんが外来窓口に殺到されることは避けたいと思います。そのため、まずは不妊治療、分娩など、産婦人科の治療の為にメディカルパーク湘南に通院中の患者さんを優先したいと思います。新規の患者さんで検査をご希望される場合には、入念に問診などを取らせて頂いてから個別に判断します。ご了承下さい。

試薬に限りがありますので、まずは患者さんを優先しますが、1-2週間以内に、全職員に検査を受けさせるつもりです。私も当然受けます。この日を目標に、これまで水面下でずっとずっと準備を進めて参りました。世間体などを気にし過ぎて、遅きに失した感もありますが、この検査が普及すれば、平穏な日常に、初めて一歩近づけるのではないかと期待しています。希望される患者様は診察室や受付でお申し出下さい。(金額は5,000円(保険適応外)です。検査結果が出るまで数日かかります。)