ナスのヘタに含まれる天然化合物、子宮頸がん細胞に抗腫瘍効果 名大
1/5(金) 16:35配信
Science Portal
ナスのヘタに含まれる天然化合物に、子宮頸がん細胞への抗腫瘍効果があることが名古屋大学の研究チームの実験で明らかになった。同じウイルス性疾患の尖圭コンジローマで効果が見られたことから、ヒトの子宮頸がん細胞に応用し投与した結果、細胞死を誘導することが確認されたという。「作用が強すぎない抗がん剤などの創薬が期待できそうだ」としている。
子宮頸がんと尖圭コンジローマは型の異なるヒトパピローマウイルス(HPV)から発症する性感染症だ。
ナスのヘタはHPVによってできる尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)という手足のいぼを取る民間療法薬として使用していた経緯がある。名大医学部付属病院の吉原雅人助教(婦人科腫瘍学)らの研究チームは、ヘタの抗腫瘍効果の可能性に着目し、先行して尖圭コンジローマへの作用に関する研究を実施。ヘタをエタノールに漬け、その液体を投与すると、尖圭コンジローマを抑制することを確認していた。
先行研究での実績を基に今回、子宮頸がんへの抗腫瘍効果の応用研究に取り組んだ。尖圭コンジローマでの研究でナスのヘタから抽出された天然化合物「9-oxo-ODAs(ナイン オキソ オーディーエース)」を化学メーカーから取り寄せ、マウス体内や検体として摘出したヒトの子宮頸がん細胞に作用させたところ、アポトーシス(細胞死)が認められた。ナイン オキソ オーディーエースの濃度を上げるほど、細胞死が進むことも分かり、抗腫瘍効果が認められたという。
子宮頸がん細胞は細胞の正常の周期と異なり、乱れた周期になるため、異物と認識されて排除されることなく増殖する。近年のゲノム解析により、子宮頸がんの発現・進行に関与するがん遺伝子であるE6とE7というタンパク質が出てこないようにすれば、子宮頸がんは完治が望めることが分かっている。
研究チームの茂木一将医師(婦人科腫瘍学)は「ナイン オキソ オーディーエースが子宮頸がん細胞の周期の乱れを整えることで異物として認識させることや、E6、E7の発現を抑えるよう働きかけることでアポトーシスに誘導できているのではないか」との仮説を立てている。
子宮頸がんは幅広い年齢に発症するがんだが、前がん病変の異形成を検診で見つけることができる。だが近年、妊婦健診で進行しているがんが見つかり、妊娠を継続するかどうか患者が厳しい選択を迫られる症例もみられるという。治療には主に投薬と手術があり、妊婦に使える抗がん剤はあるものの、胎児への影響を気にする母親もいる。
今後は実験データの蓄積を行い、産学連携などで治療薬に結びつけられるように研究を続けるという。子宮頸がんにはワクチンや自治体検診といった防御の機会があるが、「前がん病変の段階で、例えば塗り薬で治療できるとなれば、HPV疾患への有効な治療法になる」と吉原助教は話している。
成果は英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」2023年11月6日付け電子版に掲載され、名古屋大学が同16日に発表した。