震災後のメンタルケア(その2) ~子どもの症状とケア~ | サイコセラピスト(心理療法士) 棚田克彦 公式ブログ

こんにちは。

サイコセラピストの棚田克彦です。

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このたびの東日本大震災により被害を受けた皆様には、

心よりお見舞い申し上げるとともに、

犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、

深くお悔みを申しあげます。



前回に引き続き、

東日本大震災後のメンタルケア

について書きます。



今回は、

子どもの症状とケア

について書きます。



基本的な理解は

大人の場合と同じです。



つまり、

身の安全を脅かされるような

トラウマ体験をすると、

大人も子どもも

心理的な問題や

不適応を起こします。



ただし、

子どもが大人の場合と違うのは、

子どもは大人のようには

状況を理性的には理解できないし、

自分の考えや気持ちを

言葉に表現して伝えることができないので、

そこは周囲の大人が子どもの変化に

気付いてあげる必要があります。



「周りの大人が子どもの変化に気づいてあげる」

というのが最も重要な点です。



私には3歳の娘がいますが、

震災以降、いくらか変化が現れています。



震災を経験する前、

私の娘は工事現場で

クレーンやブルドーザーなどの工事車両

を見るのが大好きだったのですが、

震災のニュース番組で

東北地方がガレキの山になっている様子を

繰り返し見てからは、

工事現場や火事の後の壊れた建物の近くを通るのを

嫌がるようになりました。



それ以来、

娘には震災のテレビ番組を

見せないようにしています。



娘はまだ3歳なので、

震災のニュース番組を見ても

内容は理解できていないとは思いますが、

ニュースキャスターの声の調子や顔の表情、

番組全体が醸し出す雰囲気などから

ただならぬ緊迫感を感じ取って

不安になっていたものと想像できます。



また、

親の心理状態(不安、緊張、混乱など)も

子どもの心理状態に強く影響を与えます。



私自身も震災のニュース番組を見ているときや

地震速報の情報に聞き入っているときに、

ふと気がつくと息を止めていることがあります。

「息を止める」ということは、

自分でも気づかないうちに、

不安(恐怖)を我慢しているということです。



子どもに見られるASD(急性ストレス障害)や

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状としては、


 ・ トラウマ体験を遊びの中や夢の中で再現する(地震ごっこ)
 ・ トラウマ体験(地震)について繰り返し話す
 ・ トラウマ体験(地震)に関係する話を非常に嫌がる
 ・ 登園、登校を嫌がり、親にまとわり付く(分離不安)
 ・ 赤ちゃん返りをする(指しゃぶり、爪噛み)
 ・ 自分一人でできることでも親に甘えてやってもらいたがる
 ・ おねしょをする  
 ・ ひとりでトイレに行けなくなる 
 ・ ひとりで寝れなくなる 
 ・ 夜泣きをする  
 ・ 暗所を恐がる 
 ・ 集中力がなくなり、注意力が散漫になる
 ・ 小さな物音にも驚きやすくなる
 ・ 興奮しやすくなる
 ・ イライラする
 ・ 不安、落ち着かない
 ・ 下痢/便秘をする 
 ・ 不眠
 ・ 無気力になる
 ・ 食欲がなくなる  
 ・ 食べ過ぎる  
 ・ どもったり、目をパチパチする(チック症状)
 ・ 目や皮膚のかゆみを訴える
 ・ ゼーゼーする


等があります。



こうした症状は、

数日から数週間程度で

消失することが多いようですが、

ときには1ヶ月以上続いたり、

あるいは、数ヶ月以上経ってから現れたりと、

長期にわたる場合もあります。



周囲の大人に心がけて欲しいことは、

子どもに現れた上記のような症状を

異常なものとは捉えずに、

むしろ、

子どもが非常に辛い(恐い)体験を

した後に示す当然の反応として、

子どもの状態や気持ちを

しっかりと受け入れてあげることです。



 ・ できるだけ子どもと一緒に過ごす

 ・ 子どもの考えや気持ちを聞いて受け入れる

 ・ 子どもをハグする(スキンシップ)


といった関わりを通して、

子どもに安心感を与えてあげて下さい。



子どもが地震のときの出来事について

話しをしたときには、

「恐かったね。もう大丈夫だよ」と言って、

しばらくの時間、子どもを両手で抱きしめて

あげて下さい(抱っこギューッ)



子どもは自分の気持ちが

周りの大人(親)に受け入れられると、

辛かった出来事を過去の記憶として

心的にも身体的にも処理をすることが

可能になります。



お母さんの「抱っこギューッ」で

子どものPTSD(ASD)を防げるのです。



ただし注意点として、

トラウマ体験について、

子どもに無理に話させようとすることは

絶対に避けてください



無理に話させようとするのではなく、

子どもが恐かったときの出来事や

そのときに経験した気持ちについて

話しをしやすい環境を整えてあげることが重要です。



サイコセラピスト 棚田克彦