震災後のメンタルケア(その1) ~ASD、PTSDを中心に~ | サイコセラピスト(心理療法士) 棚田克彦 公式ブログ

こんにちは。

サイコセラピストの棚田克彦です。

http://www.tanada-katsuhiko.com/index.php?FrontPage



まずはじめに、

このたびの東日本大震災により被害を受けた皆様には、

心よりお見舞い申し上げるとともに、

犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、

深くお悔みを申しあげます。



前置きは抜きにして、

今回から数回に亘って、

東日本大震災後のメンタルケアについて

書くことにします。



ショッキングな出来事を経験したことが元で

心に傷を負うことを、トラウマ(心的外傷)と言います。

典型的なトラウマ体験には、

自然災害、虐待、戦争、犯罪、事故、いじめ、レイプ、DV(ドメスティックバイオレンス)

などがあります。



トラウマ体験をしたことが原因となって、

後に心に異常な症状が引き起こされる事を、

PTSD(心的外傷後ストレス障害)と言います。



典型的なPTSDの症状には、「再体験」「回避、引きこもり」「過覚醒」の3つがあります。



【再体験】
 ・ 辛い体験の場面を繰り返し思い出す。夢に見る(フラッシュバック)
 ・ トラウマ体験を連想させるものに接すると、気持ちや身体が反応する


【回避、ひきこもり】
 ・ トラウマ体験に関係した状況や場所、人物などを避ける
 ・ トラウマ体験にまつわる内容について話したり、考えたり、感じることを避ける
 ・ 喜怒哀楽がなくなり、感覚がマヒする
 ・ 物事に関心がなくなり、興味が涌かなくなる
 ・ 周囲の人から孤立し、ひきこもる


【過覚醒】
 ・ 常に危険を警戒してビクビクしている。驚きやすくなる
 ・ イライラ、ピリピリしている。キレやすくなる
 ・ 集中力や注意力が低下する
 ・ 眠れなくなる。眠ってもすぐに目が覚める


 ※詳しくは、『精神障害の診断と統計の手引き』、
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of
Mental Disorders)を参照して下さい。



順序が逆になりましたが、

トラウマ体験を経験した後に、

PTSDと同様の症状が数時間から1ヶ月未満持続する一過性の障害を、

ASD(Acute Stress Disorders: 急性ストレス障害)と言います。



ASD(急性ストレス障害)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)との違いは、

症状が現れる期間の違いです

すなわち、

症状が1ヶ月以内のものをASDと呼び、

症状が1ヶ月以上経っても消えないものをPTSDと呼びます。



東日本大震災が起きたのが3月11日ですから、

もう少し日数が経って、

1ヶ月以上過ぎても症状が消えない場合は、

PTSDと診断される可能性があるわけです。



今回の地震があった3月11日、

私は大阪で仕事をしていたので

直接的に地震を経験したわけではありませんが、

私自身も、


 ・ 過緊張による全身の痛みや疲れ

 ・ 眠りが浅く、夜中に目が覚める

 ・ 辛い料理やアルコールの摂取量の増加


などの症状を経験しています(いました)。



昨日、友人にトラウマケアのセッションをやってもらって、

ずいぶんと楽になりました。



私は今、千葉の自宅でこのメルマガを書いていますが、

私の周囲にも、

千葉や東京、埼玉等に住んでいるので

直接被災しているわけではないのに、

症状は比較的軽いものの、

ASDの症状を経験されている方が

たくさん(ほとんど?)いらっしゃいます。



具体的には、


 ・ イライラ、不安、

 ・ 普通に生活ができていることや楽しむことへの罪悪感

 ・ 地震がないのに、まだ揺れている感じがする

 ・ エレベーターや電車、タクシーなどの閉鎖空間が恐い

 ・ 眠れない、眠りが浅い、すぐに目が覚める

 ・ アルコールの摂取量が増えた

 ・ 食べる量が減った、増えた。刺激物(脂っこい、辛い、甘い)を多く食べる

 ・ 肩こりや頭痛、全身の疲労感

 ・ 下痢や便秘

 ・ 発熱


といった症状を訴える方が多くなっています。

これらはASD(急性ストレス障害)の反応です。



しかし、

あれだけの大変な災害が起こったわけですから、

直接被災はしなかったにせよ、

普通の健康な心と身体を持った人であれば

心や身体に何らかの症状が出るのは、

当然と言えば、当然のことかもしれません。



健康な心と身体が正常に機能をしているからこそ、

あれだけ異常な出来事に対して、

急性のストレス反応を呈しているわけです。



決して、

「私は変になってしまったのだろうか?」

などとは考えないようにして下さい。

そう考えるのは間違いです。



異常なのは、あなたの心でも身体でもなく、

起こった出来事が異常なのです。



とはいえ、

ASD(急性ストレス障害)を早めにケアをすることによって

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防が

可能になることも事実ですから、

症状が気になる方は、

我慢をし続けるより病院に行かれることをお勧めします。



では、また書きます。



サイコセラピスト 棚田克彦