失敗するコーチ&セラピストの共通点: 目標設定編 | サイコセラピスト(心理療法士) 棚田克彦 公式ブログ

こんにちは。

サイコセラピストの棚田克彦です。

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私の普段のお仕事は、セラピストとして心の

悩みや問題の解決をお手伝いすることですが、

ときおり、

「コーチングを受けたい」

という方がやって来られます。



そういう場合は、

よほどのことがない限り、

引き受けさせていただきます。



(注:現在はコーチングは受け付けておりません。

   時間が取れないので・・・、すみません。)



というのも、

私個人的には、

セラピーもコーチングも

やることは全く同じだと

思っているからです。



セラピーもコーチングも、

まず、目標を立てて、

次に、実行計画を作り、

それから行動してみて、

「失敗しないか不安だ」

「経験がないから自信がない」

といったように、

感情が邪魔をして

うまく行動ができないときに、

必要があれば、

メンタルブロック(リミッティング・ビリーフ)

を外す。



このプロセスを、

目標達成まで繰り返す。



基本はこれだけです。



以下に、

興味深いセッションの

ケースをご紹介します。



この男性のクライアントは、

「もっと自分に自信が欲しい」

「そのために、仕事でもっと

大きな成果を出して自信を付けたい」

という理由で、

コーチングを受けるために

来られました。



まずは、ケースをお読み下さい。



◆ケーススタディ◆

患者: 40代男性。


主訴: 自分に自信がない


コーチングの目的:

仕事で大きな成果を出して、

自分に自信をつけたい



(クライアント)「37歳のときに起業して、
        今の会社を作りました。それから
        約9年間、死に物狂いでがんばって
        きたおかげで経営も軌道に乗り、
        従業員も50人近くにまで増えて
        全国に支店もできました」


(棚田)「すごいですね。死に物狂いでがんばってきた
    甲斐がありましたね」


(クライアント)「はい。でも、いくらがんばって成果
        を出しても、達成感がないというか、
        『自分はダメ』とか『自分はまだまだ』
        と思ってしまうのです。仕事をしていて
        楽しくないのです。むしろ、苦しいです」


(棚田)「なるほど。成果を出しても達成感がないのですね。
    それから、『自分はダメ』とか『自分はまだまだ』
    と思ってしまうと・・・」


(クライアント)「はい、そうです」


(棚田)「○○さんは小さい頃、たとえば、小学生とか中学生
    のときに、勉強でもスポーツでも何でも結構です。
    ご両親からほめてもらったとか認めてもらったという
    経験はありますか?」


(クライアント)「まったくありません。私は小学生の頃に少年
        野球のチームに入っていたのですが、たとえ
        試合に勝ったときでも父親からはダメ出し
        ばかりされていました。私の父親は元プロ野球
        選手でした。」


(棚田)「お父さまは何てダメ出しをするのですか?」


(クライアント)「『そんなんじゃプロ野球選手にはなれないぞ、
        甲子園にも出れないぞ』といったような意味の
        ことを言われていました」


(棚田)「小さいころの○○君に身を置いたつもりになって下さい。
    (イスを1つ出して、)○○君は、お父さんにほめてもら
    っている気がする?」


(クライアント)「しません。『そんな事くらい、できて当然だ』
        と言っています。できていない事は言われるけど、
        できた所は言われません」


(棚田)「今、目の前のお父さんが、『そんな事くらい、できて
    当然だ』と言っています。どんな感じがする?」


(クライアント)「もっとがんばらないといけない」


(棚田)「○○さん、今のその感じ、『もっとがんばらないといけ
    ない』という感じは、○○さんが仕事をしていて、成果を
    出しているのに達成感が感じられないときの感覚と似て
    いませんか?」


(クライアント)「あ~、はい、同じ感じがします」


(棚田)「○○さんは、小学生の頃から30年以上たった今も、
    『お父さんに認められたい』という欲求を満たそうとして、
    仕事をがんばっているのですよ。○○さんは、お父さんに
    ほめて欲しいですか?」


(クライアント)「はい(涙)」


(棚田)「もう一度、小学生の自分に身を置いたつもりになって、
    ほめてくれるようにお父さんにお願いしてみてください」


(クライアント)「お父さん、ほめてください」


(棚田)「お父さんは、どう反応してる? ほめてくれそう?」


(クライアント)「いいえ」


(棚田)「もっとお願いしたら、ほめてくれそうですか?」


(クライアント)「無理だと思います」


(棚田)「お父さんは、決してあなたをほめてはくれません。
    どれほど仕事で大きな成果を出したとしても、認めて
    くれることもありません」


(クライアント)「悲しいです。私がいつも感じるのは、まさに
        この感覚です」


(途中略)


(棚田)「残念ながら、あなたがどれだけがんばったとしても、
    お父さんは、認めてくれたり、ほめてくれたりすること
    はありません。これからも決して報われることのない
    努力を続けたいですか?」


(クライアント)「いいえ。私はもう十分にがんばってきました。
        人並み以上の成果を残してきたと思います」


(棚田)「目の前のお父さんに直接言うつもりで、『もう、
    あなたには期待しません。ほめてくれないお父さんは
    必要ありません』と断言してから、お父さんのイスを
    倒しなさい。それから、『私は自分で自分を認めます』
    と断言しなさい」


(クライアント)「もう、あなたには期待しません。ほめて
        くれないお父さんは必要ありません(バタンッ
        とイスを倒す)。私は自分で自分を認めます!」


(棚田)「今、どんな気分ですか?」


(クライアント)「スッキリとして、まるで霧が晴れたような
        気分です」


(棚田)「(イスを1つ出して、)目の前に子どもの○○君が
    座っています。お父さんにほめてもらえなくて悲しんで
    います。あなたがこの子の理想の父親になって、抱きしめ
    ながら、思いっきりほめてあげてください」


(クライアント)「(抱きしめながら、)○○、よくやった。
        偉かった、偉かった・・・(涙を流す)」




この男性クライアントの場合は、

上記の1回目のセッションを終えてから

すぐに2回目のセッションを行わずに

1ヶ月ほど間をおいて様子を見てもらい

ました。



すると、

「もっとがんばらなければならない」

「今の自分はまだまだ」

という焦りの気持ちが消えて、

仕事をしていても充実感や

達成感を感じられるように

なってきたとのことでした。



また、

「仕事で新しい事に

挑戦する際に感じていた

『自分に自信がない』

という不安が気にならなく

なり、自信のアリ、ナシに

対するこだわりがなくなった」

とも話しておられました。



というわけで、

2回目以降のセッションは

行ないませんでした。



ところで、

この男性クライアントのコメントにもある

「自信のアリ、ナシに対するこだわりがなくなった」

という点は、非常に重要です。



この男性クライアントは、

「自分に自信が持てるようになった」

とはひとことも言っていません。



自信がない人というのは、

とかく「自分に自信を付けたい」

と思ってコーチングやセラピーを受けたり

セミナーに参加したりしますが、



●目標 = 自信を付けること



という方向で努力をすると、

その試みは100%失敗します。



コーチを雇って目標を達成すると、

一時的には自信がつきます。



しかし、

これは反転脚本の中にいる状態です。



早かれ遅かれ、

再び必ず自信をなくすとき

がやってきます。



あるいは、

不安や自信のなさを

感じないようにするために、

永遠に目標達成を続け

なければならないという、

エンドレス・ループに

はまってしまいます。



また、

心理系のセミナーに参加して

一時的にテンションがアップして

ヤル気を出せたとしても、

数週間もすれば元に戻ります。

この現象は多くの方が経験済み

だと思います。



その結果、

精神的な高揚感を維持して不安や

自信のなさを感じないようにするために、

コーチやセラピストを雇い続けて

永遠に目標達成をしなくては

ならなくなります。



高額なセミナーに通い続けなければ

ならなくなります。



しかしながら、

本当にすぐれたコーチやセラピスト、

セミナーの役割は、

クライアントが自分一人の力で

行動して成長できるように、

クライアントの自立を助けることで

あるはずです。



そのように考えると、

クライアントからの

「自分に自信をつけたい」

という訴えに対して、

「だったら大きな目標を達成して、

自信を付けましょう」

という目標設定は絶対にしては

いけないことなのです。



コーチング(セラピー)中毒、

セミナー中毒のクライアント

を作り出さないためにです。



また、

クライアントに自信を付けさせるために

目標達成に向かって努力をさせることは、



●「何かができる自分には価値があるけれども、

 ありのままの自分には価値がない」



というリミッティング・ビリーフ

を強化することにもなります。



だから、

「自信がない」というクライアントに対して、

目標を達成させて自信を付けさせようとする努力は、

長い目で見ると必ず失敗するのです。



正しい努力目標は、


●目標 = 自信のアリ、ナシで一喜一憂しなくなる状態、
        自信のアリ、ナシへのこだわりがなくなる状態


となります。



前述のケーススタディーの男性の場合も、

自分で現状の自分を認められるようになったことで、

自信のアリ、ナシへのこだわりがなくなりました。



その結果、

自分に自信を付けるためにわざわざ

無理をして仕事をがんばらなくとも、

充実感や達成感を感じながら、

以前よりもラクに成果を出せるよう

になったのです。



そして、

現在ではテレビをつけると毎日コマーシャル

が流れている誰もが知っている健康食品会社

の社長さんとして大活躍をしています。



先ほど少し触れましたが、

「目標達成することで自分に自信を付けたい」と思っている人、

もっとわかりやすくいうと、

コーチングやNLPが大好きで目標達成に興味がある人は、

多くの場合、



●「何か(仕事)ができる自分には価値があるけれども、

 (何もできない)ありのままの自分には価値がない」



というリミッティング・ビリーフを持っています。



ですから、

仕事ができたり、人生がうまく行っているときは、

自分にとても価値があるように感じられます。



ところが、

ちょっとしたことで人生につまづいたときに、

それまでは影に隠れていたリミッティング・ビリーフ

が表に顔を出します。



つまり、

なんらかの挫折を経験したときに、

「○○ができない私はダメな人間だ」

と感じて落ち込みます。


話を元に戻すと、



「もっと自分に自信を付けたい」

と訴えているクライアントが

本当に改善すべき症状は、

「自分に自信がないこと」

ではありません。



本当に改善すべきなのは、

「自信のアリ、ナシにこだわっている」

ことです。



新しいことに挑戦したり、

知らない人に初めて会うときは

誰でも不安を感じるし、

自信もありません。



それは正常な心を持っている人ならば、

誰にでも起こる心の動きです。



その誰もが共通して感じる不安や「自信のなさ」

といった当たり前の感情を、

あたかも自分だけに起こる特別なものと考えて、

本来であれば自信のアリ、ナシにかかわらずに

実行しなくてはならないことまで

「自信がないので出来ません」と言い訳して

やらないことが本当の問題なのです。




だから、

自分に自信がないクライアントのセッションでは、


●目標 = 自信のアリ、ナシで一喜一憂しなくなる状態
        自信のアリ、ナシが気にならなく状態


というのが正しい目標の立て方になるのです。



決して、


●目標 = 自信がある状態


ではありません。



今まで長々と述べてきたことは、

「あがり症」や「吃音症」「対人恐怖症」などにも

そのまま当てはまります。



すなわち、

「あがり症」や「吃音症」「対人恐怖症」が

病院でもなかなか治らないのは、

間違った目標を立てて治療を行なうからです。



たとえば、

「あがり症」で病院に行くと、

緊張しないようなお薬をくれます。



「あがり症」でコーチングや

セラピー(カウンセリング)を受けると、

感情をコントロールして、

人前で緊張しなくなる方法を教えてくれます。



これらはすべて、


●目標 = 対人緊張(不安)をなくすこと


という取り組みです。



この取り組みが間違っているのは、

この目標が誰でも経験する当たり前の

対人緊張をあってはならないものとして

取り扱っているからです。

このことが「あがり症」の人には理解

できません。



人前で緊張しないように感情を

コントロールする努力は、

あがり症で悩んだことがある人なら

誰もがやることだと思います。



でも、

そのやり方で対人緊張をなくすことに成功した人は

世界中に誰一人いないのです。

なぜなら、正常な心を持った人は誰でも、

緊張をするからです。

もし対人緊張を完全になくすことができたとしたら、

その人の心は壊れています。




では、

正しい治療目標の立て方はというと、


●目標 = 自分が緊張しているかどうかを気にしなくなること


が正解です。



程度の差はあるにせよ、

人前に出たときは誰でも緊張します。

相手が偉い人だったり、美女(美男)ならなおさらです。



にもかかわらず、

誰にでもあるごくごく当たり前の対人緊張を

「絶対にあってはならないもの」として

必死で取り除こうとするから、

普通の人以上に緊張してしまうのです。



これが「あがり症」の正体です。



さらに、

「あがり症」の人は自分が「あがり症」で

あることを悟られまいと努力するので、

このこともさらに対人緊張を強める結果となります。




「あがり症」は、

自分が人前であがることへの受け入れ、許可ができると、

回復を始めます。



そして、

「人前であがったからといって、たいした問題ではない」

「別にあがってもいい」と

「人前であがる自分」を受け入れられるようになると、

不思議なことに人前であがらなくなるのです。



次回、3月22日(祝)開催の

「第5回サイコセラピー体験講座」のテーマは、

『目標設定 これだけはやってはいけない!』

です。



今回のブログの内容の続きをお話します。



我流で目標を立てて努力をしているのに

結果が出なくて困っている方は、

ご参加ください。



お役に立てると思います。




詳細とお申込みはこちらから

http://www.tanada-katsuhiko.com/index.php?PsychoTherapySeminar





では、今回はこの辺で。




サイコセラピスト 棚田克彦