感情のコントロール ~怒りが抑制できない~ | サイコセラピスト(心理療法士) 棚田克彦 公式ブログ

最近、わたしのもとへ「自分の感情がコントロールできない」という悩みを持った四十代半ばの男性の患者さんが来られました。


話を詳しく聞いてみると、「家庭では奥さんや子どもさん、両親に対して、会社では部下や同僚に対して、話をしているとすぐにキレて大声で怒鳴ってしまう。特に、相手が自分の期待通りに行動してくれないときや、相手に何かを伝えよとしてうまく説明できないときに怒りがこみ上げてきてコントロールができなくなる」とのことでした。


この患者さんの場合、怒りの問題を何とかしようと何年もカウンセリングに通ったり、精神科医が主催するアンガーマネジメントの自助グループにも参加していますが、今までのところ実感できる効果はなしとのことでした。


まず一番最初に、わたしはこの方に対して、


●すべての感情は、良い感情です。悪い感情などといったものはありません


とお伝えしました。


このことはNLPを学んでいる人たちの間でも多くの人が誤解している点です。


NLPトレーナーの中にも、


●わたしはつねに前向きな気持ち(感情)、ポジティブ思考でいなければならない。怒りや悲しみ、恐れ、緊張、不安、落ち込みといったネガティブな感情は取り除かなければならない


と本気で信じている人たちがいます。これは間違いです。


あなたはいかがしょう?


「つねにプラス思考でいなければならない」「人前で緊張してはいけない」「もっと自信をもたなければならない」などと思っていたりはしませんか?


・ 大勢の人の前でスピーチをするときに緊張してはいけないと思うとよけいにあがってしまって頭の中が真っ白になってしまう人


・ 何かで失敗をしたときに落ち込んでしまい落胆して前向きな気持ちになれない自分に対して「こんな自分はダメだ」と余計に落ち込んでいつまでもクヨクヨしてしまう人


・ 「今日は気分がよくないから仕事をしたくない。気分がよくなってからにしよう」などと思ってしまう人


こういったタイプの人たちは、望ましくないと感じる感情を「あってはならないもの」として何としても取り除こうとします。


しかし、不安や怒り、悲しみといったネガティブな感情や、あるいは、緊張したときの赤面や声の震えといった不快な体の症状は、「あってはならないものだ」と封じ込めようとすると、余計に強くなって長く持続します。なぜなら、ネガティブな感情や不快な身体症状は、取り除こうとしてそこに注意を向ければ向けるほどその感覚が敏感になって、より強く感じられるようになってしまうからです。


感情を直接コントロールすることはできません


大事な発表のときに緊張したり、苦手な人に会う前に嫌な気分がするのは当然のことです。


「できないこと」を「できること」にしようとする努力は、必ず悩みや問題を生み出します。


気分や感情は、あなたの潜在意識(心)が作り出す、自然な反応です。


では、なぜ「すべての感情は、良い感情」なのでしょうか?


それは、


●感情は潜在意識(心)からの大切なメッセージ


だからです。


ネガティブであれ、ポジティブであれ、すべての感情には目的があって、あるメッセージを伝えるためにあなたの潜在意識が感情を作り出しているのです。


たとえば、「怒り」の感情がもっているメッセージは、「わたしにとって大切なルールが破られた。その不正を正して欲しい」ということを、あなたの潜在意識があなたに伝えようとしているのです。


ですから、もし、怒りの感情がこみ上げてきたら、それを押さえつけようとするのではなく、自分が大切にしているルールに気づいて、そのルールが守られるような他人への働きかけや行動をすればよいのです。そうすれば、自然と怒りはおさまります。


「怒り」以外のネガティブな感情についても同様です。すべての感情はあなたに何らかの大切なメッセージを伝えようとしています。


ここで、「感情」とそれが伝える「メッセージ」の組み合わせを整理しておきましょう。


(感情)        → (メッセージ)
退屈          → 変化が足りない。挑戦を通してもっと自己成長したい
怒り          → 大切なルールが破られた。不正を正したい
罪悪感        → 他人に対して公平でありたい
悲しみ        → 失った大切なものや人を取り戻したい
孤独感        → 有意義な人間関係を持ちたい
劣等感        → 自己重要感、自己効力感を感じたい
ストレス       → 自分の人生をうまくコントロールしたい
恐れ、不安     → 安全、安心を感じたい
フラストレーション  → 努力して欲求を満たしたい
うつ、落ち込み   → 絶望して希望がない。未来に望みを持ちたい


「感情を直接コントロールすることはできない」といいましたが、感情が必要以上に暴れることを防いで収めることはできます。


そのためには、感情が伝えるメッセージの内容に耳を傾けて、そのアドバイスに従うことです。必要であれば、行動をしましょう。


そうすれば、ネガティブな感情に振り回されたり、圧倒されることはなくなるはずです。


感情はあなたの味方です。


感情は、あなたが何をすべきか、何をすべきでないかを教えてくれます。


喜びや楽しさといったポジティブな感情は、あなたが今やっていることが正しいことを教えてくれています。


怒りや悲しみ、落ち込みなどといったネガティブな感情は、あなたが今やっていることを何か変えないといけないことを教えてくれています。


感情と仲良しになって、より質の高い人生を目指しましょう。