消費税の増税は必要ない――「国の借金」の正体に迫る。HRPニュースファイルの補足 | たなべ雄治のブログ 幸福実現党

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11月17日分のHPRニュースファイルを執筆しました。

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消費税の増税は必要ない――「国の借金」の正体に迫る


しかしあれこれ書きすぎて、字数制限のためにずいぶん削ることになってしまいました。
そこで、削った内容を含め、参照情報などを、当ブログで補わせて頂きたいと思います。


 ◆消費税の増税は延期の見込み

各紙朝刊にも出ているとおり、どうやら安倍首相は、2015年秋の消費税10%増税はあきらめたようです。

11月17日発表の7-9月のGDP速報値は、政府の予想を覆し、そして賢明な国民の皆様の予想通りの、悪い数値でした。

これを受けて、消費税の増税は2017年4月に延期されるとの方針が伝えられています。

廃止ではなく延期とする理由は、日本の財政面での国際的な信頼を得るためとしていますが、これは建前でしょう。財務省と結びついた自民党内の増税派をまとめられないからではないでしょうか。

対する民主党などは、消費税増税の3党合意も忘れて、消費税10%増税の白紙撤回を選挙の争点にしたい様子です。

さて、消費増税の延期と廃止、どちらが正しいのでしょうか。

 ◆国の借金ってなんだ?

「日本には国の借金が沢山あって、財政破綻の危機にある」などと言われています。これを理由に消費税を増税すべきという主張もあります。日本は本当に財政破綻の危機にあるのでしょうか。

つい11月10日にも、国債・借入金・政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が9月末時点で1038兆9150億円になった、と財務省が発表しました。そして国民1人当たり約817万円の借金を抱えている、と報道されています。

参考:日経新聞「「国の借金」9月末は1038兆円 国民1人あたり817万円 」

一体いつどこで、私たちは817万円の借金をしたのでしょうか?これって、返さないといけないのでしょうか?

そこで、「国の借金」について調べてみました。

財務省のホームページを見てみると、「国の借金」とは公債残高、つまり国債であると言っています。

参考:財務省「国の借金の残高はどれくらい?」

2014年末の国債残高は780兆円ですから、たしかに国債が「国の借金」の大部分を占めています。

参考:財務省「日本の財政関係資料(平成26年10月)」

つまり「国の借金」とは、国債だということです。

国債とは、政府が発効する債券です。購入して持っていると、利子がもらえます。そして5年や10年といった定められた期限が来ると、額面の価格を受け取ることができます。実際の価格は市場で決まり、額面の価格よりも安く売買されています。数年待てば、購入時以上のお金を受け取ることができます。

購入するのは、主に国民(私企業)です。政府にとってはお金を集める手段であり、国民にとっては資産運用の手段と言えます。実質的に、国債を購入しているのは主に銀行や生命保険会社です。

参考:外務省「資金循環と国債の保有構造」

ところで銀行の本来の役目は、国民の預金で集めたお金を、企業などに投資して利益を得るものです。しかし、長らく続いた不況で企業投資は厳しさを増し、半沢直樹のような銀行マンも現実にはおりません。だから銀行は、企業に投資する代わりに国債を買って、その利子を利益としているのです。

ちなみに、私たちが銀行にお金を預け入れると、スズメの涙のような利子がつきます。これは銀行が得た国債の利子から、さらに上前をはねた残りカスだということです。

 ◆政府が国民から借りているのが「国の借金」

整理すると、「国の借金」と言われているのは国債であり、「政府」が「国民」に借金をしている、ということになります。

日本における国債とは、国民の資産です。国民1人当たり約817万円の借金を抱えている、ということではなく、国民1人当たり約817万円を政府に貸し付けているのです。

財務省は「国の借金」などと曖昧な表現をして、あたかも国民が借金を背負っているかのように見せかけていますが、実際には政府の借金です。そして貸しているのは国民です。

政府は、お金を貸してくれている国民から増税というかたちでお金を巻き上げて、その借金の穴埋めをしようとしているのですから、盗人猛々しいとはこのことです。

もっとも、私たちは政府に対して、お金を貸した覚えはありません。というのも、私たちの預金がどう運用されるかは銀行任せだからです。銀行が、私たちの預金を国債という形で政府に又貸ししているのです。ですから、政府に「817万円を返せ!」と要求することは残念ながらできません。私たちが銀行に預金している金額を引き落とせるに過ぎないのです。

 ◆日本とギリシャの違いは決定的

とは言え、政府が破綻してしまっては、困ることもあるでしょう。ギリシャ危機だって起こりました。果たして日本は財政破綻しないのでしょうか。

ここで、日本とギリシャの違いを見てみましょう。

日本の国債は、日本国民に国債を買ってもらっています。

ギリシャの国債は、ギリシャ国内で買い手がつかず、外国に買ってもらいました。ギリシャ国民が、十分な個人金融資産を持っていなかったためです。

この違いが、決定的なのです。日本の国債は、政府にとっては借金ですが、国民にとっては資産です。ところがギリシャの国債は、政府にとっても国民にとっても借金でしかないのです。借りた外国に対して、返済の義務があるからです。

国債を自国民に買ってもらうか、外国に買ってもらうかの違いは、例えるならば、親に借金するかサラ金に借金するか、という大きな違いに相当します。日本の国債は、親からの借金なのです。

 ◆ついでに財務省の二枚舌も決定的

財務省は、家計に例えて、国家財政の危機を訴えています。

参考:財務省「日本の財政を家計に例えると、借金はいくら?」

家計に例えると、「ローン残高5143万円」なのだそうです。財務省は不安をあおっていますが、ローンというのは大ウソで、「親に借りた5143万円」が正解です。

親(国民)が資産家ということなんですね。ドラ息子(政府)はいつまでたっても親のすねかじりです。とは言え、多くのご家庭において、サラ金のごとく返済を迫る実の親なんてのはそうはいないでしょう。

しかも国家には、いざとなれば通貨発行権があります。家計に例えること自体ナンセンスすぎます。とゆーか、むしろ我が家にも欲しい!通貨発行権・・・

ここからが財務省のすごい所なのですが、国内に向けては財政破綻の危機をあおりながらも、海外の格付け会社が日本の国債の格付けを下げた時には、「日本の財政破綻は考えられない!」と頼もしく反論をしています。

参考:財務省「外国格付け会社宛意見書要旨」

そしてこれらを両方とも財務省のホームページに堂々と掲載しているのですから、面の皮の厚さにはむしろ清々しささえ感じます。なお、財務省の二枚舌については、三橋貴明氏が繰り返し指摘しておられます。

 ◆財政破綻のプロセス

では、今後何があっても日本は財政破綻しないのか、というと当然そんなことはありません。

事業経営と似たところがあり、お金を借りたならば利息以上の付加価値を生み出さないと、いずれは破綻してしまいます。国民が購入できないほど国債残高が増えてしまうと、日本国内で国債が売れ残り、海外からの買い手に頼ることになります。

さらに事態が悪化すると、日本円の信用も低下して、円建ての国債が売れなくなります。やむなくドル建ての国債でお金を集めることになります。外国通貨建ての国債は、国民にとっての借金になります。親から借りることができず、やむなくサラ金に手を出すわけですね。

そして一たび破綻の危機が真実味を帯びてくると、一気に円安が加速します。するとドル建て国債の利息の支払いの負担も増大し、さらに償還期限がきた国債の返済ができなくなり、財政破綻に到ります。下手をすると、ギリシャの二の舞になる可能性はあるのです。

 ◆日本は財政破綻しないと市場は見ている

実際、日本の財政破綻の危険度はどの程度なのでしょうか。一番客観的に見ているのは、市場です。自分のお金がかかっているわけですから。

その市場において、日本の国債は世界で最も高い値段がついています。少なくとも信用されています。

その理由は、「国の借金」とやらを軽く凌駕する個人金融資産があり、インフラなどの莫大な国富があり、技術力や教育、ソフトやブランド力など、トータルでの日本の国力が非常に大きいこと、等が挙げられるでしょう。

参考:日銀:「資金循環統計(2014年第2四半期速報):参考図表」→個人金融資産は1600兆円

参考:内閣府「平成24年度国民経済計算確報(ストック編)」→国民資産8600兆円、国富3000兆円

 ◆国債が日本国内で購入され続けるもう一つの理由

日本では現在、国債の償還期限が来ると、全額を現金には変えずにそのまま引き続き国債を購入する、ということが頻繁に行われています。国債の借り換え(ロールオーバー)と呼ばれているものです。

最近は、海外の投資家が日本国債を購入する比率が増えてきましたが、それでも90%以上は日本国内で売れています。

参考:外務省「資金循環と国債の保有構造」→海外の保有比率は、4.0%

巨額の個人金融資産があり、国力があり、日本の国債が安全と思われている証拠ではあります。

反面、設備投資が伸びず、銀行が有効な投資先を見出せないまま、国債に流れ込んでいるという負の側面があります。

経済が循環し、設備投資が盛んにされると、景気が回復します。20年の不況を出血多量で心肺停止している人体に例えるなら、インフレターゲットによって十分に輸血をしつつ、財政投資という電気ショックで心臓を動かし始めなければなりません。

 ◆消費税増税は、社会保障目的という主張もあるけれど・・・

消費税の増税が必要という主張のもう一つの柱が、増税による税収分を社会保障の財源に充てるというものです。

確かに、税制と社会保障との一体改革、ということが議論されています。しかしそれとて、税収が増えてこその社会保障の充実であるわけです。

増税すると景気が悪くなるのは必然です。ですから、GDP速報値が悪すぎた今回でも、消費増税を見送っているわけです。

景気が悪くなると、当然税収が減ります。税収減になると、社会保障費の財源を含めて、全ての予算が苦しくなります。税収が減った時に、果たして社会保障費だけに予算を確保するようなことが行われるでしょうか。

こんな時、決まって泣きを見るのが国民です。今の政治が、官僚や政治家の給料を差し置いて、社会保障の充実を守ってくれるというのは、まことに残念ながら甘い幻想と言わざるを得ないのではないでしょうか。

 ◆正しい財政投資で日本は復活する

日本の財政破綻の危険は、世界一小さいのです。政府が不手際で抱えている借金よりも、汗水たらして働いた国民の資産の方が多いのです。国債残高に恐怖する必要はありません。

そして今、長く続いた不況を終わらせられるチャンスが来ています。起こりもしない財政破綻を恐れるあまり、増税によって景気の腰を折ってはなりません。

財政破綻の危険はないとはいえ、無駄に国債残高を増やし続けてはなりません。そのためにも、まずはいち早い景気回復が必要です。景気が回復しない限り、税収は増えないからです。

国債を減らすための消費税の増税は逆効果です。必要なお金は、まだ国債で賄うことができます。2017年四月と言わず、消費税の増税は不要なばかりか有害です。

それよりも重要なのは、国債で集めたお金をどこに投資するかということです。投資が正しければ税収は増え、国債を減らせます。

政府が投資をするのであれば、基幹産業や未来の成長産業に充てるべきです。リニアや航空・宇宙、防衛、ロボットなどの産業への投資や、様々な規制撤廃、法人税の大幅減税など、もっともっと大胆な成長戦略が必要です。

 ◆参考文献
菅原晃『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』
三橋貴明『日本は「国債破綻」しない!』