「虹を探しに行こう。」作者:タナベエエエ

 

設定は男ですが、朗読なので女性が読まれてもいいと思います。

 

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帰り道、虹を見た。夕暮れの雨上がり。くっきりと浮かんだ虹の上にうっすらともう一つ虹が見える。背中に負ぶった小さな妹の重みと殴られた右頬が重く辛かった。普段は気にもとめない僕だが、なぜか足を止めひどく感動したことを覚えている。

 

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「僕と…結婚、してくれないか。」

男の一世一代の告白。人生を決断する告白だと思う。小学生から付き合ったことのない僕は緊張でいっぱいだった。


目の前の35歳を越した女性は涙を浮かべながら頷いた。もう無理だと思っていたと笑顔をこぼす。好きとか愛しいとかそういう気持ちはなくて、ただただ一緒にいたいと思った。そういう女性だった。小さい頃に両親が離婚して、そんな自分が誰かを愛せるなんて、結婚するなんて思いもしなかった。


僕は、1児の父親になった。彼女には7歳の子供がいた。赤いランドセルは僕が買ってあげた。これからは父親の役目も果たさなければならない。女の子だから、あの時の僕の父親のように手をあげることもないだろう。そんな日がこなければいいと思っている。

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僕の地域ではまだ梅雨明け宣言がない。雨、雨、雷雨、曇り、雨。ともう5日間も太陽を拝んでいない。雨が降り続いている。明日は晴れるらしいが、夜には雨が降るらしい。娘の誕生日で夜に食事に行くつもりだが、学校も休みだから昼に変更することになった。


大型ショッピングモールは当然のことながら人が多かった。先に食事をすることになり、30分並んで人気の安い回転寿司を食べた。娘は大好きなイクラを5皿も頼んだ。5皿目を注文した時には、妻と一緒に笑った。何事にも優しく笑顔で受け止めてくれる妻。曲がったことの大っ嫌いなハキハキとした娘。時々、娘から毒舌を吐かれるが可愛いもんだ。


幸せだ。幸福感で満ちていた。

帰る時間になって、店を出ると地面がぬれていた。小雨だったが、雲は少なく夕暮れ空がオレンジと藍色で混ざり合っていた。娘が声をあげた。妻が指差す先には虹があった。車に乗り込んだ娘はまだ虹を見ていた。虹の根本には幸せがある。ふいに妹の言葉を思い出した。


「少し遠回りをして帰ろうか。」


虹が消えるまで、僕らはドライブをした。

 

 

終わり

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それではよい劇を。