『俊寛』の前 Episode.1 | はじめての歌舞伎!byたむお

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『平家女護島(へいけにょごしま)』 が通し狂言として
行われたのは、なんと初回の1回のみ。

つまり『俊寛』の場面ばかり芝居になっているということなんですね。

でも歌舞伎オンステージや文楽の床本を読んでみると、
それ以外の場面も、なかなか面白い。

傾城反魂香 嫗山姥 国性爺合戦 平家女護島 信州川中島合戦 (歌舞伎オン・ステージ (12))


意外な人物も登場しますよ。


今回の記事は『俊寛』、「鬼界が島」の段より前の話を紹介します。




平清盛さんが絶世の時期にクーデター(鹿ヶ谷の陰謀)を起こそうとして、

バレちゃった俊寛さん達は島流しにされちゃいます。

そして、俊寛の妻の東屋(あずまや)さんも縄をかけられて捕らえられます。


エロジジイ清盛さんは美貌の東屋さんに妾(めかけ)になれ、と

夜の相手をさせようとしますが、東屋さんは断固拒否します。


縄を解こうとしたのはイジワルジジイの瀬尾(せのお)さんですが、

「無礼者め、なんでお前のような卑しい者に手を触れられなければならぬのだ。」

と東屋さんに拒否されちゃいます。

(このあたり、瀬尾が俊寛さんだけに意地悪な伏線になってます。)


清盛さんエロジジイなので、

「わしの言うこと聞いてくれたら、旦那を助けてやってもいいよ~ん。」

みたいなこと言うんですね。

「東屋ちゃんは捕虜じゃなくて、わしの大事なお客様だから、お部屋に案内してあげてね~ん。」

東屋さん、

「捕虜として拷問でもされているほうがまだまし。

夫の俊寛を助けてあげるのをエサに、エロジジイの相手をするまでお客様扱いとは、屈辱的すぎる。」

と思っています。

ちなみに、この部屋で夫のことを思い我が身を嘆くところが、

人形浄瑠璃・歌舞伎『平家女護島』の「六波羅の段」です(「俊寛」の前の段)。


そこに登場するのは、おごる平家の体質に危機感を抱いている平教経(のりつね)さんです。

エロジジイの清盛さん、

「今日こそ東屋ちゃんを連れてきてね~ん。」

は呑気になんて言っててます。


どうしょもないジジイだな、教経さんは、東屋さんのもとを訪れます。

東屋さんも最愛の夫を助けたいという気持ちもあります。

「権力になびかず、貞操を守るのも武士の妻の鑑。その志を貫き通すが良い。」

と説得します。東屋さん懐に短刀を忍ばせてました。

東屋さん、もはやこれまで、と自らの命を断ちます。


教経さん、東屋さんの首を落とし、清盛さんのもとへ行き、

目の前に首をドーン。


「オラ、東屋さん、連れてきてやったぞ。

酒の相手でもさせようか、それとも布団敷かせて一緒に寝るか!」


女性とはいえ、夫を島流しにした清盛に恨みを抱いているはずの東屋さんです、

清盛さんが夜を共にするとなったら、隙をついて命を狙われても仕方がありません。

実際、懐刀をもっていましたしね。


「ええかげんに目を覚ませ、色ボケジジイが!」


清盛さん、シュ~ンとなって、奥の間に引っ込んじゃいました。




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さてさて、建礼門院さんがいよいよ出産なんですが、難産で苦しんでいます。

無事に男の子を産んでくれれば、平家の体制はますます盤石なものに。


そのためには神様にお祈りですが、お賽銭よりもっと効果的なものは、徳を積むことです。

「恩赦」として罪人を許す心の広い姿勢を神仏にアピールすること。


しかし、クーデターのリーダー格の俊寛だけは許したくない。

清盛さんが出したのは、三人の島流しのうちの俊寛以外の二人(成経、康頼)の赦免だけ。


清盛さんの息子である重盛さんは、

「島に一人でも残すようなことがあれば、許しの心とはいえない。全員連れて帰れ。

もし清盛が駄々をこねるようだったら、とりあえず備前くらいまで連れて帰っておいて、

清盛を説得しろ、それこそが平家のためだ。」

と病の床で教経さんに指示を出します。


清盛さんからの許可書である赦免状と、罪人の通行手形を持っているのが、

赤い顔の暑苦しいキャラの瀬尾(せのお)さんと白い顔のさわやかキャラの丹左衛門さんです。

『俊寛』でのちょうちんブルマ的な衣装のお二人です。

教経さんは重盛さんの言葉に従って、

「もう一人の俊寛の赦免状を書いてやるからもっていけ。」

と言って更々ともう一通の赦免状を書きます。


瀬尾は俊寛の奥さんの東屋さんに拒否られてたので、

逆恨みモード、俊寛なんか助けたくないやと思ってますが、

理性的、温情のある丹左衛門さんが受け取ります。


通行手形に「罪人の二人通行許可しますよ」とありますが、

教経さんは俺が責任とるからと、感じの「二」の上に棒を一本足して「三」にしちゃいます。

『俊寛』で通行手形の罪人の数がうんたらかんたらと揉めてるのはこういうことだったんですね。


「勝手なことすんな。そんなんで難産が治るんだったら、世の中に難産で苦しむ人おらんわ。」

と瀬尾さんが毒づいているときに早馬で伝令の者がかけつけます。

「建礼門院さん、無事に出産されました。」


重盛さんの慈悲の心の矢、教経さんの正義の心の矢が瀬尾の心に突き刺さります。


めでたしめでたし。

こうして、赦免の船は鬼が棲むというという鬼界ヶ島へと向かって行くのでした。


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明日は、歌舞伎座こけら落としでの『俊寛』の観劇レポート記事の予定です。
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