『俊寛』2013年6月 歌舞伎座こけら落とし | はじめての歌舞伎!byたむお

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通し狂言『平家女護島(へいけにょごしま)』
の第二幕『鬼界が島』の段が『俊寛』の名で上演されます。


今年二月の博多座、片岡仁左衛門さんの俊寛は信念に生きる政治犯の面影参考記事)、

前日にwowowで観た中村勘三郎さんの俊寛は凡夫心を抱える一人の人間

今回の中村吉右衛門さんは仏道に帰依する者としての「俊寛」だったように思えます。

おそらく、吉右衛門さんの中で解釈が変わった部分もあるのだと思います。
以前に観た吉右衛門さんの『俊寛』とは変わっている部分もありました。

松竹歌舞伎界の会報雑誌「ほうおう」7月号のインタビューで、

「赦免船が遠ざかり、ふっと見上げた俊寛の目に救世の船が映る。
天女がその周りを舞いながら迎えに来てくれる。
私の目にも見えています。
死ぬまでに、お客様にもその光景をお見せできたらと思いますが、至難の業でしょう」

と語られています。

みなさん、見えましたか?

ちなみに初代の中村吉右衛門さんの芸談には、
「岩の上で、ただ茫然自失となっている」
と書いてあります。

この本です。

名演名作選 初代 二代目 中村吉右衛門の芸 (小学館DVD BOOK―シリーズ歌舞伎名演名作選)

DVDもついているので嬉しいです。
(DVDでの『俊寛』は当代の吉右衛門さんです。ちなみに千鳥は中村魁春さん)

当代の吉右衛門さんはさらに掘り下げて、今回の舞台になったんでしょうね。

しかし、先に読んでいたからわかりましたが、
読んでなかったら「なんかいつもと違ったな~」くらいで、終わってしまったかもと思うたむおです。


吉右衛門さんの『俊寛』は今回で3回目の観劇です。
昨年の京都南座、一昨年の新橋演舞場で観た中村吉右衛門さんの『俊寛』と比べて、
変わったのではと思う点を挙げていきます。



・ヨロヨロ感がアップ。
島での祝言での踊りのときなど、すぐこける。
立ち上がるとき膝とかに手をあてて辛そう。


・瀬尾を斬りつけられた瞬間
庵の後ろから白い鳥(カモメ?)が二羽飛び立っていく。
(千鳥と丹波少将が都へ行くことの暗示でしょうか? 東屋と俊寛が来世で一緒になるということの暗示でしょうか?)
これは先代の播磨屋さんの型のようです。

・出船するとき
艫綱(ともづな)の端が島に残されて伸びている。
そして、舟が出るにつれて綱が真っすぐに伸びていく。
「未来で~」
の後、思わず綱を引き止めようとする。
捕まえようとして、綱を踏んじゃってこける。


・船が去っていき、岩山に登るとき
ここはいつもよりスピード感アップしてました。


・岩に登ったとき
その先を見ようと松の枝を思いっきりバキッと折る。
折ったときバランスをくずす。
これが今までより大きくバランスをくずす感じで、
岩から落ちそうになる。



・赦免船を見送るシーン

以前
岩に登った時点で正面を見据える。そして視線が正面奥(一階席奥、二階席のほう)へ。
(船は岩のある場所から真っすぐ進んでいるのか?おそらく船が見えなくなるまで、ずうっと船を見送る。)
見ている時間はけっこう長い。


今回
岩に登って視線が上手側、中央から更に視線が下手(揚幕方向)へと移る。
(船は岩のある場所に対して右斜め方向へ進んでいるのか? ある程度の時間、船を見送る。)
見ている時間はそれほど長くない(ひょっとして、まだ視界に船があるかも。)
そこから視線を切って、中央に向き直り、ぼんやりと宙を眺めて、かすかに微笑む。
(救いに降りてきた天女を眺めている。)



それではみていきましょう。

もとよりもこの島は、鬼界が島と聞くなれば、鬼ある所にて、今生よりの冥途なり♫

都に生きた俊寛ですから、都にいれないだけでも死んだも同然。
しかも、島の名前は「鬼界が島」。
島に流されて三年の俊寛は息はしていても、
この先の希望はありません、生き地獄、ここは冥途なのです。

島に流されたのは三人で、俊寛僧都(しゅんかんぞうづ)、平判官康頼(たいらのほうがんやすより)、丹波少将成経(たんばのしょうしょうなりつね)さん。
年齢的には、俊寛(父)、康頼(兄)、成経(弟)くらいです。実際の親子、兄弟ではありません。

時代は平清盛さんが、やりたい放題の世の中です。
「調子にのってんじゃねえぞ」後白河院がこっそり、打倒平氏を画策します。
しかしバレちゃった~、といのがいわゆる「鹿ヶ谷の陰謀」事件。

そのメンバーだった政治犯の俊寛僧都(法皇に遣える僧侶)、平判官康頼(平氏)、丹波少将成経(藤原氏)、
島流しになっちゃいました。

浅葱幕が落ちると海の中の孤島。
砂浜の海岸にはボロボロの庵がたっています。
海からワカメ(たぶん主食)をとって俊寛さん(中村吉右衛門さん)が戻ってきました。

そこにやってきたのは、康頼(兄)さん(中村歌六さん)、成経(弟)さん(中村梅玉さん)。
「わしら三人だいぶ衰えたなぁ。」
という嘆きの言葉がでますが、
「俊寛殿、三人が四人になったのをご存じないか」
と康頼(兄)さんが言います。


俊寛はもう一人誰かが島流しにあったのかと心配します。ドキドキ。

心配ドキドキモード状態から一転、

そうではありません。
成経(弟)さんと島に住む海女さんがいい仲に。
家族といえば未来への希望です。
明るい希望が誕生しました。

そして、千鳥さん(中村芝雀さん)を紹介します。

三人ともボロボロの衣服(実は錦らしい)ですから、すんごく地味な舞台です。
島の海女さんまで、リアル海女の衣装だったらさらに地味になっちゃいます。
そこで、千鳥さんの衣装はいわゆる田舎娘の衣装。
『妹背山』のお三輪ちゃんのような緑色の着物です。

めでたいめでたい、ようし結婚式やっちゃおう。
三三九度の酒も杯もないですが、
酒の代わりに湧き水、杯のかわりに貝殻で結婚式です。

「俊寛が肴つかまつろう」、と祝いの舞いを舞います。
ところがすぐに足がもつれてころんでしまいます。
そんな自分を意識して俊寛さんの心の中には別の感情が。

おめでたいムードから一転

我が子も同然の成経(弟)さんの結婚式なのに、
都にいたらさぞかし立派な結婚式が挙げられるはずなのに、
自分たちに降り掛かった悲運を嘆きます。

悲運を嘆くムードから一転、

大きな船が島にやってきます。
漁師の船ではない。赦免の船にちがいない。
罪を許されて都に帰れる。
結婚&赦免という、幸せ絶頂フィーバーモードです。

船から降りてきた役人のもとに駆け寄ります。

降りてきたのは瀬尾(せのお)さん。
意地の悪そうな赤っ面、白髪オヤジは市川左團次さんが勤めます。
(ちなみに、『助六』でも意地の悪そうな白髪オヤジやってます。)

幸せ絶頂フィーバーモードから一転、

清盛さんからの赦免状を読み上げると、
「康頼(兄)さん、成経(弟)さん、都に帰っていいよん。」
三人一緒じゃないのかよ~。


意地の悪そうなホワイトヘアーデビルに意地悪されたと思って、
「なんで俊寛の名前を読み落とすのだ」
と駆け寄りますが、
「瀬尾ほどの者が読み落とすものか。」
と赦免状を見せます。

自分の名を探しますが、
「ない、ない、な~い。」

絶望のどん底に落とされます。

絶望のどん底モードから一転、

暑苦しい瀬尾さんと比べてみたら月と墨(演目が違う!)、
船から降りてきたのはさわやか丹左衛門さん(片岡仁左衛門さん)です。
「俊寛も赦免で備前の国まで帰ってよし。」
幸せいっぱい夢いっぱいです。
それでは都へ帰ろう。四人は船に乗り込もうとします。

幸せいっぱい夢いっぱいモードから一転、

「連れて帰るのは三人だ。なんで島の女までいれてんだよ。こらぁ!」
といちゃもんをつけるのはホワイトヘアー瀬尾さん。
結婚したんですと言っても、そんなの知るか~いと却下。
千鳥さんはダメ~、三人に乗れと命じます。

丹左衛門さんがフォローにまわります。
「何日か島に留まって、彼らが千鳥さんを説得するのを待とう。」
と言うと、頭の固い瀬尾さん、
「武士(さむらい)は上司の命令にきっちり従うだけでいいんだ。
勝手にあれこれ判断して変更とかするんじゃねぇ。」
と言い返します。

俊寛さんたちは、
「一人だけ残すなんてできるもんか。」
四人は手を取って輪になって団結をアピール。
このときの四人、「貝」の形になっているらしいですよ。

団結したのに一転、

憎たらしいレッドフェイス瀬尾さん、
俊寛の最愛の妻の東屋さんは、エロジジイ清盛さんの言いなりにならなかったから、
首を討たれたぞ(本当は俊寛さんへの操を守って自ら死を選んだんですが)、と言います。
四人のうちひとりだけ、がっかりです。

千鳥さんの痛切な叫び、
「武士(もののふ)は、ものの哀れ知るといふは偽りよ、虚言(そらごと)よ。鬼界が島に鬼はなく鬼は都にありけるぞや。」

にくたらしい瀬尾さんは、千鳥をドンと突き飛ばします。
船に乗らないといってた俊寛さんも最愛の妻を失った知らせにヨロヨロ。
役人達に引っ張られ、船の中へ。
残りの二人も続いて引っ張られていき、千鳥は島に残されます。

成田離婚どころか、結婚式披露宴直後離婚モードで絶望の千鳥さん。
自殺を覚悟しますが、海に飛び込んでも泳げてしまう海女ちゃんなので、
岩に向かって全力ダッシュで激突して死のうとします。

そこに船から降りてきたのは俊寛さんです。
「私を島に残して千鳥さんが船に乗ってくれ。関所の通行が三人ということだから、数も合う。
聞いた通り私は最愛の妻をなくした。私を仏にすると思って、船に乗ってくれ。」
と提案します。
「どうぞこの女を私の代わりに乗せてください。」
と船のほうに千鳥さんの手を引いていこうとすると、
降りてきたのは意地悪じいさんの瀬尾さん、

「そんなに勝手に替えられるなら、赦免の文も船も必要ないわい、ボケェ~」
と、あくまで千鳥さんの乗船もダメ、俊寛さんに船に戻れと言います。

自分が辛い目に遭うだけなら我慢できる、しかし千鳥さんの不幸までは我慢がならない。

これまで、いじめられっぱなしの俊寛さんが一転、

瀬尾の腰の刀を稲妻の速さで手にして、肩口からバッサリと斬りつけます。
あまりの非情な態度、もう我慢できない。

ここで、二羽の白い鳥(鸚鵡かな)がバサバサと飛び立っていきます。

刀で片手にもち体を支えて、あご髭に手をあてる形の見得
『関羽見得』です。

長いあご髭と言えば、三国志の関羽ですが、その関羽さんに似てるのが
今月第三部の『助六』の意休さん(市川左團次さん)です。
そしてその意休さんの舎弟、関羽の「関(くぁん)」の字をもらって、
くぁんべらの門兵衛さん(中村吉右衛門さん)。
夜はこの二人、味方同士になるのか。

「やりやがったな、何さらすんじゃ、このダボが~。」
瀬尾さんは、船に向かって応援要請します。

出てきたのは丹左衛門さん、
「いや、我々の仕事は赦免の者を連れて帰ることだけ。
だから勝手な判断で、決闘の手助けとかはしないことにする。皆の者、手助け無用だ。」

さっき自分が言ったイヤミな台詞をそっくり返されます。
こうなったら一人で戦うしかありません。

手負いの瀬尾さん vs ヨロヨロの俊寛さん、
砂浜で足を取られながらの戦いで、
お互い思うようにいきません。

千鳥さんも自分の義父のような俊寛さんの手助けをしようとします。
しかし、お役人に手を上げたとなれば許されない罪、都へは帰れません。
俊寛さんに止められますが、砂をかけたりして瀬尾さんの邪魔をします。

瀬尾さんが転んだときに這いながらも近づき、
馬乗りになってとどめを刺そうとします。

船から見守る丹左衛門さん、
「決着がついたのは見届けた。しかし、とどめを刺したら罪が重なる。それでは俊寛どのを船に乗せられなくなる。」
と言いますが、
「ならば罪を重ねましょう。そして、この罪のために島に残りましょう。」
と言って、俊寛さんはとどめを刺します。

「われこの島に止まれば、五穀に離れし餓鬼道に、今現在の修羅道、硫黄の燃ゆるは地獄道、
三悪道をこの世で果たし、後生を助けてくれぬか。
俊寛が乗るは弘誓(ぐぜい)の船、浮世の船には望みなし。
さあ、乗つてくれ、はよう乗れ。」

もはや、仏道に身を置いたものとしては落ちるところまで落ちた。
弘誓(ぐぜい)の船とは阿弥陀如来の救いの船のこと。

駆けつけた康頼さん(兄)、成経さん(弟)も泣いています。言葉になりません。
俊寛さんの心を汲み取って丹左衛門さんは千鳥さんを船に乗せます。

そして、岩に結びつけられた艫綱(ともづな)がほどかれて、
船が島から去っていきます。

振りしぼった俊寛さんの最後の言葉は、
「未来で~」
です。
(未来といっても何年後とかの意味ではなく、輪廻転生の後、来世以降でという意味です。)

「思ひ切つても凡夫心」という義太夫の言葉、
もう未練はないと思い切っても、やはり悟りきれない凡夫の心で、
船が遠ざかっていけば自分も少しでも近くに行きたい、声をかけたい俊寛さん。

「お~い。お~い。」

船からも
「お~い。お~い。」
と答えます。
しかし、船からの声はどんどん小さくなっていきます。

「お~い。お~い。」

「お~い。お~い。」


上手側から去っていった船ですが、
だんだんと舞台の後方下手側へと移動していきます。

俊寛さんも船のほうへ、舞台の花道のほうへ移動しますが、
花道には波が押し寄せます。
波布(なみぬの)という、波が描かれている布が迫ってきます。

膝くらいまで海に入った俊寛さんですが、波に阻まれ、
いったんは島に戻ります。

近くにあった岩山、足下もおぼつかない俊寛さんは生えている蔦(つた)を
ひっぱって登っていきます。

ここで舞台が廻り、岩山が舞台正面に移ります。

千年も万年も栄える象徴の松が生えていますが、
その松の枝を自らバキッと折って俊寛さんは、
断崖にやってきます。

「お~い。」

こうして、この世の希望の四人を乗せた赦免船を見送りました。

そして、正面に向き直る俊寛さんです。
ふっと目線を上げます。

俊寛さんの目に映るものは?


「赦免船が遠ざかり、ふっと見上げた俊寛の目に救世の船が映る。
天女がその周りを舞いながら迎えに来てくれる。
私の目にも見えています。
死ぬまでに、お客様にもその光景をお見せできたらと思いますが、至難の業でしょう」


こうして、『平家女護島(へいけにょごしま)』の「鬼界が島」の段「俊寛」は幕を閉じました。


見えました?

たむおとしては説明を読んでいって、頭で解釈して、天女がいるってことだな、
というくらいで、見えたとまでは言えないっす。
まだまだ観劇経験値が足りないのか、雑念が入ったのか。

吉右衛門さん、次こそは見てみたいです。
よろしくお願いします。


二代目 聞き書き 中村吉右衛門

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(「とり含む」って、つば九郎は有名人、芸能人のどちらにふくまれるのか?)

芸能人、歌舞伎はまさに古典「芸能」です。
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そして巳之助さんから、『助六』の通人の手に渡って、花道で「ちょっとツブヤイておこう」なんて言いながら取り出して、












な~んてサプライズはありませんでした。
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中村吉右衛門の歌舞伎ワールド (小学館フォトカルチャー)




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明日の記事は、この続き。

次回予告
「都に戻っていった赦免船が遭遇したのは、いったい?」
歌舞伎ではおなじみのあの人も登場します。
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『俊寛』の前に~ Episode.1
『俊寛』2013年6月 歌舞伎座こけら落とし 観劇レポート
『俊寛』の後は~ Episode.2
『俊寛』2013年2月博多座 観劇レポート

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