『高時(たかとき)』新歌舞伎十八番 2013年5月 京都南座 | はじめての歌舞伎!byたむお

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新歌舞伎十八番『高時(たかとき)』


京都南座『五月花形歌舞伎』の昼の部です。



北条家の執権の高時さん(市川右近さん)は闘犬マニア。


お気に入りの闘犬は移動するとき籠に入れて、


家来たちに籠を担がせるくらいの溺愛っぷりです。


徳川綱吉さんみたいですね。





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孫とおばあちゃんがやってきて、


「かっこいいいぬ~」


と孫が近づくとその前を野良犬の子犬たちが通過。


すると闘犬が興奮。


(ホントに闘犬か? どっしり構えてるものちゃうんか?)


なぜかおばあちゃんに噛み付いちゃいます。




困ったお犬サマだよ~。


高時さんの家来たちも手が付けられません。


侍が登場(地方から出てきたばかりで、高時さんの犬だとしりません)。


あばあちゃんの息子、孫の父親です。




鉄扇で犬の眉間をバシッと叩くと


急所に入ったのかコロリと死んでしまいます


(ホントに闘犬か? よ、よわい~)。




家来たち


「無礼者!高時様のお犬さまに手を上げるとは!」


といって、(侍に向かうんじゃなくて)


おばあちゃんと孫に刀をつきつけて、


「この者たちの命が惜しかったら、おとなしくお縄にかかれ~」




すんげえセコい。


侍も「なんて世の中だ。まあ、長くはつづくまい。」


と家族を救うため縄目を受けます。




さあ、御裁きはいかに?




裁判の論点は正当防衛か過剰防衛かというところに落ち着くのか?



舞台は変わります。




「活歴(かつれき)もの」というジャンルだそうで、


フィクションではなく、リアルを求めた設定です。


河竹黙阿弥さんが晩年書いたストーリーです。




例えば、主役の北条高時さんの位置ですが、


これまでの歌舞伎だったらVIPな人は舞台中央で


正面を向いてすわっているはず。




ところがリアリティーを追求して、


上座に座り、下座を向いて座っています


(つまり舞台上手から下手を向いて座っています)。




(ということで、主役の表情を見たかったら、舞台中央から下手に座る方がいい演目でした。)




その他、琵琶の演奏とかも珍しい。




さて、その高時さんのところに報告にやってきます。




家来


「突然現われた浪人者が、高時さまが大事にされておられるお犬さまをうち殺しましてございます。」




高時さん


「何を、許さん。そんな奴死刑じゃ。ボケ~」




となりました。高時さんのキャラは癇癪もち、キレやすい性格です。




(ここで「犬がおばあちゃんに噛み付いた」のを言わない家来がおかしいと思うんですが。)










高時さん、よく考えたら、裁判官かつ検察側かつ行政、ある意味無敵ですな~。


捕らえられたお侍さんの証人喚問はなく、欠席裁判かと思ったんですが、


法廷の弁護側にも人が現われました。




(さすがに「死刑」はやりすぎだと思うんですが、事情を知らなかったら高時さんも「ムカつく~」となるのはしょうがない気も。。)




まずは、お家に仕える家臣(市川猿弥さん)が諌めます。


高時さんに真っ向からやめなさいというと、逆ギレするでしょうから、遠回しに。




北条家は代々、仁(おもいやり)の政治をやってきましたから、


民衆にも支持されてきたんですよね~。


でも、人の命より獣の命を大事にあつかった「不仁(ふじん)」の政治とか、


噂をする人も出て来るかもしれませんね~。




そう言われても、自分の意見を引っ込めるのは癪にさわる。


なんで家来の言うことを俺様が聞かなきゃなんないの!




高時さん


「わかった、『不仁(ふじん)』とか言われないように死刑はとりやめよう。」




………


……





家来たち (ホッ。)







高時さん


「次にこういうことがあったら、次からは死刑をやめる。」




家来たち (エッ!?)







高時さん


「今回は今回のこと。死刑決定だ。」




あららら…


困ったお方ですね。






今度はえら~いお坊さん登場(市川寿猿さん)。


今日は北条家の二代目義時さん(北条家を盤石にしたすご~い人、ということ)の命日。


ですから、殺生はお控えなさりなさい。




さすがに二代目さんの名前を出されると、


高時さんも「判決差し戻し」にせざるを得なかったようです。




くやし~い、こうなりゃ酒だ~。




ということで宴会スタートです。




前日の晩、祇園で飲んでいらっしゃった猿弥さんは引っ込み、


右近さんの宴会がスタートです。





ウコンの力ウコンエキスドリンク 100ml×6本





高時さんの趣味は「田楽踊り」の鑑賞。


宴会で少し酔ってきたところに、突然雷が鳴ります。




そして、天狗の軍団が館に乱入してきます。


ところが、酔っぱらっているもんだから、


天狗を「田楽踊り」の踊り手さんと勘違いしてしまいます。


ショッカーみたいな声だしてるんですけどねぇ。




天狗の踊り、かなりヘンテコな踊りですが、


立派な田楽の踊り手がわざわざ都からやってきて


特別に新作を教えてくれる、と都合良く勘違い。




一緒に踊ろう、ということで天狗たちに混じって踊りだします。


ならっている場面なので、天狗たち全員の踊りは揃っていますが、


高時さんだけ横をチラチラ見ながらワンテンポ遅れながらの踊り。


難易度高。




二列縦隊でフォークダンス的に踊るパターンもありました。




さて、お酒を飲んで、踊ったらどうなるか。


グルグルまわってつぶれますよね~。




天狗ですから「天」の「狗(いぬ)」、天の使いです。


調子に乗って横暴な執権の高時さんに


天罰が下すためにやってきたんですね。




踊りのなかのどさくさまぎれに、


天狗タックル、天狗アタック、…


さまざまな攻撃がはじまります。


最後には持ち上げられてグルグルグル。


天狗フルボッコです。




心配になったお坊さんや家臣がやってきます。


そろそろ引き上げ時、天狗たちは空へと帰って行きました。




天狗に化かされていたことに気づいて


くやしがる高時さん。




「われ天狗にたぶらかされしか~」


の声が響きます。


これからは心を改めてくれるんでしょうか?




これにて幕でございます。












北条高時のすべて



北条高時と金沢貞顕―やさしさがもたらした鎌倉幕府滅亡 (日本史リブレット 人)








  ◆ 新歌舞伎十八番の内 高時(たかとき)

 

北条高時右 近
大佛陸奥守猿 弥
秋田入道寿 猿
愛妾衣笠笑 也